シたい彼女と寝てたい彼女

とちのとき

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♡♀ 第十三章 触れたい彼女とお姉ちゃんな彼女 ♀♡

31話

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 日も暮れた頃、ミジール村に着くと二人は不可視化スキルを使い、エルテの家の前に立ち様子を窺う。家の前には弔問客が置いて行ったと思われる萎れた花束がいくつか置かれたままだった。
 すると玄関の扉が開き、エルテの母が出てくる。王都へ向かう道の方を見ては肩を落とし、すぐに家の中へと戻った。
 シホはエルテの母に現状をどう伝えるべきか考える。
 「やっぱり魔物になって帰って来たら驚かせちゃうよね・・・・。手紙でも置いてく?」
 「それがいいのかも」
 「あ、また出てきた。もしかしてずっとああしてるのかな」
 「・・・・やっぱり私お母さんに会う。ずっとあんな事してたら心が壊れる」
 「じゃあ私も事情を話すの手伝うよ」
 「うん、ありがとシホ」

 不可視化を解き扉の前に立つと、エルテは一瞬躊躇したが扉を叩く。扉が中から開くと数秒沈黙が生まれた。やつれ気味の顔をしたエルテの母は、口元を手で押さえ弱々しい声を絞り出す。
 「エルテなのかい?本当に・・・・、本当に、帰ってきてくれたんだね」
 「お母さん、私・・・・」
 言葉の途中で彼女はエルテを抱き寄せた。エルテはそっと抱き返すと小さな声で話しかけた。
 「体、冷たいでしょ?あのね、一度死んで魔物になったの」
 「どんな姿でもいい。おかえり、私の大事なエルテ」
 「ただいま・・・・。色々話ある」
 「沢山聞かせておくれ。さぁ、シホちゃんも中へお入り」

 二人は家の中に入ると、これまでの経緯を時間をかけ伝えた。そしてシホはエルテの母に頭を下げる。
 「私が王都に一人で行っていればエルテは死なずに済みました・・・・」
 「いいや、こうなったのは私がエルテを産んだ事を一度でも悔やんだ罰なのかもね・・・・。だからシホちゃんは気に病まないでおくれ。それにエルテがこうして帰れたのはシホちゃんのお陰なんだから」
 「それでも人間としての幸せを奪ってしまった様な気がして・・・・」
 シホの罪悪感を知ったエルテは首を横に振る。
 「私は人間として生きてた時より幸せ。お母さんが私の事どれだけ愛してくれてたかよく分かったし、友達も出来た。それにシホがいる。お母さん、私シホと生きていこうと思う。初めて好きになったのが女の子だった。これって変?」
 「変じゃないよ。自分の心に従うんだ。エルテがシホちゃんを選んだから、もう一度こうして会うことも出来たんだ。きっとそこに間違いは無いさ」
 「うん・・・・」
 シホのアホ毛がピンと立つ。

◆エルテから初めて好きって言われた・・・・!それに生きてた時より幸せ?ふふん、エルテの幸せは私の幸せだよぅ。

 表情をとろけさせているシホの横でエルテは会話を続ける。
 「でもこれからどうしようか迷ってる。私達は魔物だから村の人達きっと怖がる」
 「この村で暮らすなら説得くらいしてやるさ。シホちゃんはどうするつもりだい?」
 シホは故郷を思い出した。
 「私の村は閉鎖的って言うか、昔の習慣が強く根付いてるので、私が魔物ってだけで両親からも拒否されるかもしれません。せめて両親にはエルテのこと紹介したいですけど、私達が人間のままであったとしても、女の子同士なんて認めてくれないと思います。だからあまり会いたくなくて」
 「それでも大事なものを失えば、もっと大事なものが分かる事だってあるだろう。一度帰ってみたらどうだい?」
 「気は進みませんが、死んだ事にもなってるでしょうし、様子が気にならない事も無いですね」
 「エルテ、シホちゃんを支えてやるんだよ?」
 そう言われた彼女は頷き返事をする。エルテの母は椅子から立ち上がるとキッチンに向かおうとする。
 「さて、二人とも食事が不要になったってだけで、食べられない訳じゃないんだろう?」
 シホ達はそうだと答えると、彼女はこちらに背を向けたまま話す。
 「また会えたお祝いに一緒に食べておくれよ。シホちゃんも今日は泊っていくだろう?」
 「はい。ではお言葉に甘えて」
 「そんなにかしこまらないでおくれ。これからは家族になるんだからさ」
 その言葉に自然と口角が上がるシホ。

◆家族かぁ。うちの両親は何て言うかな。エルテが傷つく様な事言わないだろうか?心配になってきた。あと何か忘れてるなー。

 「あ、お役目」
 シホは首から下げた集魂の器を見ると、瓶の中で白い粒が沢山浮遊している。その様子をエルテが窺う。
 「シホどうかした?」
 「いや、お役目で預かったこれだけ届けて、すぐに村を出てもいいかなって」
 「そんな事言わず、帰ったらちゃんと話した方が良い。シホの事心配してる人いるはず」
 「うーん、やっぱり気が進まなくてさ」
 「大丈夫。一個づつ一緒に話す」
 「うん、ありがとエルテ」

 二人が話を続けているとそこに料理が運ばれてくる。
 エルテの母は娘の顔を見ながら、実に美味しそうに、そして嬉しそうに食事を頬張った。娘を失ったショックから、数日はまともに食事をしていなかったのだろう。食事を終える頃には少し血色の良さをその顔に取り戻した様に見えた。

 夜も深まり、エルテの部屋の同じベッドで二人は肩を並べて横になっている。エルテの知るシホならモジモジとしている頃だろうが、あまり元気が無かった。エルテはその事を気に掛ける。
 「シホ、やっぱり帰るの嫌?」
 「んー、それもそうなんだけど、私の居場所ってどこなのかなって。あの村には無かったからさ」
 「シホは時々物事を難しく考えて一人で貯め込む。あまり良い癖と思わない」
 そう言ってエルテは布団の中でシホの手を握ると話を続ける。
 「私の居場所はここ。シホの隣。メリランダがそう気づかせてくれた。だから私の事は気にせず、帰ったら自分の気持ち、ちゃんと伝えてきた方がいい」

◆エルテの手。小さくて華奢だけど、何か大きなもので包み込んでくれる。とても愛おしくて、とても癒される。

 「うん、そうだね。エルテお姉ちゃん」
 「もう、その呼び方禁止って言った」
 「ごめんごめん、エルテの包容力でつい」
 「シホはやっぱり甘えん坊」
 シホはエルテの手をギュッと握り返すと、睡眠も不要になった身体にも拘わらず、その癒しに包まれいつの間にか寝息を立てていた。


 翌朝、日も明けきらぬ頃、人目を避ける様にシホ達はゾンビ馬を呼び出し出発の準備をする。見送りに起きたエルテの母はその様子を見ていた。
 「おや、便利なもんだね。まぁ、見た目は慣れるのに時間がかかりそうだけど・・・・」
 シホが少し自慢げに話す。
 「普通の馬と違って疲れもしないですし、私達も疲れないので魔物になったのも悪くないかなって」
 「この年になると何やっても疲れるから、ちょっと羨ましい話だねぇ」
 「それじゃあ、行ってきます。不眠不休でも戻るまで数日はかかると思います」
 「ゆっくり出来るならゆっくりしておいで。エルテ、シホちゃんのご両親によろしく伝えておくれ」
 エルテは笑顔で頷くと、手を振ってシホと共に駆けて行った。
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