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♡♀ 最終章 シたい彼女と寝てたい彼女 ♀♡
35話
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祠から出る三人。歩きながらシホはメリランダに話しかける。
「ところで私達が危ないってどうしてわかったの?それに転送魔法みたいな便利なものは無いって言ってなかった?」
「ええ、あれは一人用です。それに転送魔法ではないのですよ。魔窟創造の副産物と言いますか」
「副産物?」
「大カタコンベ生まれの魔物の様子が把握できる機能と、いつでもその彼らの元に移動できる手段を追加していたのですが、外に出たはずのシホさん達にも適応されていたらしく、それで駆けつけちゃいました」
「様子を把握ってどの程度分かるの?」
メリランダはシホとは反対側に視線を逸らす。
「え、ええとですね、どこに居るかとか安否くらいですかねー・・・・」
「へぇー、でも助かったよ」
「私に素敵なダンジョン生活を与えてくれたお二人の為ならお安い御用ですよ」
シホの家へと向かっていると村の家々の戸が開き、ちらほらと村人達が出てくる。その中からシホには懐かしい声が響いた。
「シホ?シホだよね⁉」
「ミュカ!無事で良かった。具合はどう?」
「うん、家族のみんなも急に良くなったんだ。それよりシホ、死んだって聞いたから・・・・。何かの間違いだったんだ、良かった。お役目の旅からもう戻ったの?それに何だか雰囲気変わった?」
「ちょっと色々あってね。ああ、二人とも、この子は私の親友のミュカ」
「その子たちは?」
「旅で出会った大切な仲間なんだ。こっちはメリランダ」
ペコリと頭を下げるメリランダ。
「シホさんとは素晴らしい体験を・・・・、いえ、冒険をさせて頂きました」
そして、シホはエルテを少し照れ臭そうに紹介する。
「それからこの子はエルテ。えと、ミュカには話しておくね・・・・。私の大事な恋人だよ」
ミュカはシホの表情を見ると嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「そっか、そかそか。ちゃんと出会えたんだね。シホが幸せで何よりだよ」
そんな話をしていると村長カトマとシホの両親が家から出てくる。それに気づいたシホは声を掛ける。
「あ、みんな!もう邪神の心配は要らないよ。私達が倒したから」
そんなシホ達を見たカトマは険しい顔を浮かべた。
ミュカの後ろからカトマが語気を強めて声を発する。
「ミュカよ!その者達から離れよ!」
「カトマ婆ちゃん、何言ってるの?シホだよ。生きてたんだよ⁉」
「ミュカ、お前には分からんか。そこの者達はもはや人ではない」
「え?どう見たってシホじゃない。ちょっと血の気が悪いけど」
ミュカが振り返ると、苦笑いを浮かべるシホ。
「いや、何て言うか、カトマ婆の言ってる事は合ってるよ」
「え?」
シホの両親も近寄って来ると、父がシホにどういう事か詰め寄る。
「さっきは意識が朦朧としていて分からなかったが、お前その格好はなんだ?剣なんか持って。しかもさっき邪神を倒したとか言わなかったか?本当にシホなのか?」
「私は私だけど、どこから話せばいいかな・・・・」
◆私はトラブルに巻き込まれ死に、その後の大カタコンベでの出来事や、エルテとメリランダの事などを話した。両親の手前、色恋沙汰についてはまだ伏せてだけど。
その話を聞いたシホの両親は明らかに怪訝そうな表情を見せながら戸惑っていた。傍らで話を聞いていたカトマは、先程から表情を変えずにシホに問う。
「魔の者となった以上、邪な存在でないと皆に示せるか?シホよ」
「示すも何も、たった今みんなの為に祠の邪神倒したって。具合良くなったでしょ?」
「人の姿で我々を欺いているだけかもしれぬ。村の流行病もお前が撒いたものではあるまいな?」
「待ってよ!仮にそうだとして、そんな事して私に何の得になるっていうの⁉」
騒ぎを聞きつけ村の人々が集まってくる。皆、カトマからシホ達の存在が語られると、ざわざわと不安そうな声が上がった。
すると、シホの母は村の皆に向かって何度も申し訳なさそうに頭を下げる。それを横目にシホの父は娘に言う。
「お前が人外になってしまったら、うちはどう村の皆に顔向けしたらいいんだ。せっかくのお見合い相手にも何て言ったら・・・・」
シホは我慢の限界だった。
「もうそんな事ばっか!なんでそんな風にしか言えないの!お母さんもお父さんも、私より村のしきたりや体裁の方が大事なんでしょ⁉」
「魔物が村に入れば皆が怖がるのは当たり前だ」
「私は私なのに・・・・?それじゃ、体裁が悪くなったついでに伝えておくよ。私この子と結婚するから!私がずっと女の子が好きだったのも知らないでしょ!」
「何をふざけたことを」
「ふざけてなんかない!もういい、私はやる事はやったからもうこの村を出る。さよなら」
そう感情を露にしたシホはエルテの手をぎゅっと握ると、村人を掻き分ける様に村の出口へと歩き出した。すると去っていく後ろでミュカの大きな声が聞こえる。
「信じらんないよ!みんな!シホがいなかったら私達、苦しんでそのまま死んでいたかもしれないんだよ⁉シホの居場所、帰ってくる場所を無くすなんて・・・・」
村から出たところで三人は立ち止まる。エルテは少し俯いていた。
「ごめんシホ、何も力になれなくて」
「気にしないで、たぶん誰が言っても理解してくれないと思うから。それに私の居場所はエルテの隣だよ。だから寂しくなんてない」
メリランダもシホを気遣う。
「良いのですか?せっかくご両親が健在なのに、喧嘩別れだなんて」
「うん、親子でも一人の人同士。理解し合えない事だってあるよ」
「そういうものですかね。まぁ、シホさんが納得しているならそれでいいですけど」
少し重い空気の三人の元にミュカが一人で現れる。
「シホ、良かったまだ居た。帰って来たばかりなのにほんとにもう行っちゃうの?」
「うん、私達は人間には戻れないし、長居してもみんな怖がるのは確かだし。・・・・さっきは私の代わりに怒ってくれてありがとう」
「親友があんな扱いされたら当たり前だよ」
「ごめんね、再会できたのに。私達はもう行くね。ミュカには手紙出すから」
杖をくるりと回したメリランダは三人を見る。
「では、私は先に大カタコンベに戻りますね。ああ、それとミュカさんでしたか?あなたも安全に、私の庭に入れるようにしておきますよ。いつでも皆さんで遊びに来てください。それではまたお会いしましょう」
そう言って一礼すると、彼女は蝿の群れに姿を変え消えて行った。
シホもゾンビ馬を呼び出しそれに跨る。すると何故かエルテは自分で馬を呼び出す事は無く、どこかミュカに見せつける様にシホの後ろへと乗り、体を密着させた。
◆ん?エルテどうした?
シホとエルテはミュカに手を振り別れを告げると、ミジール村へ向け馬を飛ばす。馬上でシホは装備越しに伝わるエルテの柔らかさを堪能していた。
「えっと、エルテ?」
「ちょっと嫉妬。シホが好きになったのもわかる」
「ミュカの事?今は親友だからね⁉それ以上それ以下でもないよ」
「分かってる。いい友達だと思う。いつかあの子みたいに村の人達も理解してくれるといいね」
「うん。でも私はそこまで欲張らないよ。こうしてエルテがいてくれるんだもん」
小一時間ほど進んだ時、人気のない草原で雲の隙間から強い光が差した。突如ゾンビ馬が何かに怯える様に進まなくなってしまう。
光の中から人型に見えなくもない、白く大きな何かがシホ達の目の前に降りてくる。それが幾重にも折り重なった白い翼を広げると、中から無数の目の付いた身体が見えた。
頭部には口は無く、雄々しい声がシホ達の頭の中に直接響く。
「我は神に仕え、愛されし者。そして神の代弁者でもある」
「ところで私達が危ないってどうしてわかったの?それに転送魔法みたいな便利なものは無いって言ってなかった?」
「ええ、あれは一人用です。それに転送魔法ではないのですよ。魔窟創造の副産物と言いますか」
「副産物?」
「大カタコンベ生まれの魔物の様子が把握できる機能と、いつでもその彼らの元に移動できる手段を追加していたのですが、外に出たはずのシホさん達にも適応されていたらしく、それで駆けつけちゃいました」
「様子を把握ってどの程度分かるの?」
メリランダはシホとは反対側に視線を逸らす。
「え、ええとですね、どこに居るかとか安否くらいですかねー・・・・」
「へぇー、でも助かったよ」
「私に素敵なダンジョン生活を与えてくれたお二人の為ならお安い御用ですよ」
シホの家へと向かっていると村の家々の戸が開き、ちらほらと村人達が出てくる。その中からシホには懐かしい声が響いた。
「シホ?シホだよね⁉」
「ミュカ!無事で良かった。具合はどう?」
「うん、家族のみんなも急に良くなったんだ。それよりシホ、死んだって聞いたから・・・・。何かの間違いだったんだ、良かった。お役目の旅からもう戻ったの?それに何だか雰囲気変わった?」
「ちょっと色々あってね。ああ、二人とも、この子は私の親友のミュカ」
「その子たちは?」
「旅で出会った大切な仲間なんだ。こっちはメリランダ」
ペコリと頭を下げるメリランダ。
「シホさんとは素晴らしい体験を・・・・、いえ、冒険をさせて頂きました」
そして、シホはエルテを少し照れ臭そうに紹介する。
「それからこの子はエルテ。えと、ミュカには話しておくね・・・・。私の大事な恋人だよ」
ミュカはシホの表情を見ると嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「そっか、そかそか。ちゃんと出会えたんだね。シホが幸せで何よりだよ」
そんな話をしていると村長カトマとシホの両親が家から出てくる。それに気づいたシホは声を掛ける。
「あ、みんな!もう邪神の心配は要らないよ。私達が倒したから」
そんなシホ達を見たカトマは険しい顔を浮かべた。
ミュカの後ろからカトマが語気を強めて声を発する。
「ミュカよ!その者達から離れよ!」
「カトマ婆ちゃん、何言ってるの?シホだよ。生きてたんだよ⁉」
「ミュカ、お前には分からんか。そこの者達はもはや人ではない」
「え?どう見たってシホじゃない。ちょっと血の気が悪いけど」
ミュカが振り返ると、苦笑いを浮かべるシホ。
「いや、何て言うか、カトマ婆の言ってる事は合ってるよ」
「え?」
シホの両親も近寄って来ると、父がシホにどういう事か詰め寄る。
「さっきは意識が朦朧としていて分からなかったが、お前その格好はなんだ?剣なんか持って。しかもさっき邪神を倒したとか言わなかったか?本当にシホなのか?」
「私は私だけど、どこから話せばいいかな・・・・」
◆私はトラブルに巻き込まれ死に、その後の大カタコンベでの出来事や、エルテとメリランダの事などを話した。両親の手前、色恋沙汰についてはまだ伏せてだけど。
その話を聞いたシホの両親は明らかに怪訝そうな表情を見せながら戸惑っていた。傍らで話を聞いていたカトマは、先程から表情を変えずにシホに問う。
「魔の者となった以上、邪な存在でないと皆に示せるか?シホよ」
「示すも何も、たった今みんなの為に祠の邪神倒したって。具合良くなったでしょ?」
「人の姿で我々を欺いているだけかもしれぬ。村の流行病もお前が撒いたものではあるまいな?」
「待ってよ!仮にそうだとして、そんな事して私に何の得になるっていうの⁉」
騒ぎを聞きつけ村の人々が集まってくる。皆、カトマからシホ達の存在が語られると、ざわざわと不安そうな声が上がった。
すると、シホの母は村の皆に向かって何度も申し訳なさそうに頭を下げる。それを横目にシホの父は娘に言う。
「お前が人外になってしまったら、うちはどう村の皆に顔向けしたらいいんだ。せっかくのお見合い相手にも何て言ったら・・・・」
シホは我慢の限界だった。
「もうそんな事ばっか!なんでそんな風にしか言えないの!お母さんもお父さんも、私より村のしきたりや体裁の方が大事なんでしょ⁉」
「魔物が村に入れば皆が怖がるのは当たり前だ」
「私は私なのに・・・・?それじゃ、体裁が悪くなったついでに伝えておくよ。私この子と結婚するから!私がずっと女の子が好きだったのも知らないでしょ!」
「何をふざけたことを」
「ふざけてなんかない!もういい、私はやる事はやったからもうこの村を出る。さよなら」
そう感情を露にしたシホはエルテの手をぎゅっと握ると、村人を掻き分ける様に村の出口へと歩き出した。すると去っていく後ろでミュカの大きな声が聞こえる。
「信じらんないよ!みんな!シホがいなかったら私達、苦しんでそのまま死んでいたかもしれないんだよ⁉シホの居場所、帰ってくる場所を無くすなんて・・・・」
村から出たところで三人は立ち止まる。エルテは少し俯いていた。
「ごめんシホ、何も力になれなくて」
「気にしないで、たぶん誰が言っても理解してくれないと思うから。それに私の居場所はエルテの隣だよ。だから寂しくなんてない」
メリランダもシホを気遣う。
「良いのですか?せっかくご両親が健在なのに、喧嘩別れだなんて」
「うん、親子でも一人の人同士。理解し合えない事だってあるよ」
「そういうものですかね。まぁ、シホさんが納得しているならそれでいいですけど」
少し重い空気の三人の元にミュカが一人で現れる。
「シホ、良かったまだ居た。帰って来たばかりなのにほんとにもう行っちゃうの?」
「うん、私達は人間には戻れないし、長居してもみんな怖がるのは確かだし。・・・・さっきは私の代わりに怒ってくれてありがとう」
「親友があんな扱いされたら当たり前だよ」
「ごめんね、再会できたのに。私達はもう行くね。ミュカには手紙出すから」
杖をくるりと回したメリランダは三人を見る。
「では、私は先に大カタコンベに戻りますね。ああ、それとミュカさんでしたか?あなたも安全に、私の庭に入れるようにしておきますよ。いつでも皆さんで遊びに来てください。それではまたお会いしましょう」
そう言って一礼すると、彼女は蝿の群れに姿を変え消えて行った。
シホもゾンビ馬を呼び出しそれに跨る。すると何故かエルテは自分で馬を呼び出す事は無く、どこかミュカに見せつける様にシホの後ろへと乗り、体を密着させた。
◆ん?エルテどうした?
シホとエルテはミュカに手を振り別れを告げると、ミジール村へ向け馬を飛ばす。馬上でシホは装備越しに伝わるエルテの柔らかさを堪能していた。
「えっと、エルテ?」
「ちょっと嫉妬。シホが好きになったのもわかる」
「ミュカの事?今は親友だからね⁉それ以上それ以下でもないよ」
「分かってる。いい友達だと思う。いつかあの子みたいに村の人達も理解してくれるといいね」
「うん。でも私はそこまで欲張らないよ。こうしてエルテがいてくれるんだもん」
小一時間ほど進んだ時、人気のない草原で雲の隙間から強い光が差した。突如ゾンビ馬が何かに怯える様に進まなくなってしまう。
光の中から人型に見えなくもない、白く大きな何かがシホ達の目の前に降りてくる。それが幾重にも折り重なった白い翼を広げると、中から無数の目の付いた身体が見えた。
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