僕がこうなった理由

新生活

チヨヤ

　「ねぇ、僕ってもしかしてチート能力じゃないかな？」

ふと、トーリにそんなことを聞いてみた。

「よくわかったね、ほんとそんな感じだよ。」

「なんで僕なんかが・・・。」

　正直僕は、嬉しさよりも驚きの方が大きかった。なぜなら、現実世界ではイジメを受け、さらに家族には見捨てられる、そんな人間だったからだ。

「いや、能力はランダムだから、運が良かったんだよ。しかもその使い慣れ度はセンスみたいなもんだしね。」

「そうなんだ・・・、じ、じゃあさ、少しお金集めるために冒険してみるよ！」

そう言うと、トーリに行ってらっしゃいと言ってもらったので、外に出る。



　　　　　　　　　　　★*ﾟ


　ぼちぼち歩くと、人の声のようなものが聞こえた。あ、ヒトって言っちゃいけないんだっけ・・・

「た、け、て。」

そんなふうに聞こえる声。なんて言っているのだろう、耳を澄ます。

「助けて！」

誰かが助けを求めてる。僕は迷うことなく声がする方へ行く。すると、

「や、やっと助けが来てくれた！キミ、おいらを助けて！」

一人称を、「おいら」と呼ぶ男の子が言う。

「わかった。」

　今「おいら」と呼ぶ男の子は崖の端にいて両手で精一杯捕まっているような状況だ。

「い、いくよ。」

　せっかくだから僕は、想像能力を使いたいと思う。そう、崖にぶら下がって落ちそうな、彼の足元に頑丈な鉄の塊を出せばいいのだ。イメージする。集中する。そして。

ぽんっ！

でた。よしっ！と思った時だった。イメージでは宙に浮くことができるが、その鉄の塊は重力に逆らう事はなく、地面に落ちていってしまった。

「何なんだよ・・・」

　一人称を、「おいら」と呼ぶ男の子は、崖から手を離してしまった・・・。

フワフワ・・・

「あ、あれ？」

彼が戸惑っている。なぜかって？それは、彼が落ちた瞬間に、僕はパラシュートをイメージした。そう、彼にパラシュートを付けたのだ。

コトン・・・。

彼が僕と同じ高さのところへやってくると、降りた。そして、

「ほんっとにありがとう！おいら死ぬところだったのに助けてくれるなんて！ありがとう！」

今までの人生で、こんなにお礼を言われたことはあったのだろうか・・・。

「い、いや大丈夫だよ、それより君は誰？」

照れ隠しで、クールな感じを装わないと顔は赤くなりそうだし、少しでも気を緩めたら涙が出そうだったのだ。

「ああ、おいらはチヨヤ！」

「僕はユウだよ。」

「そうなんだ！よろしくね！」

「ちなみにおいら、想像能力者なんだ！」

　あ、同じじゃん。

僕はそう思った。