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薔薇の香りと剣舞曲

24 アンダー ザ メテオン

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 水の街アクエリアの南側の陽の光が遮られた……

ガチャーンッ、ドサッ、バタバタ、ガチャン、ガチャン、ガチャン

 ガタガタと空気が震えて、街の商店の棚の上から物が次々と落ちていく。手を止めて、何事かと空を見上げる街の人々、それは芋畑のプレイヤーも同じだった。

ズゴォォォォォォォォォォオオッ

 そいつは空から降って来た。

(隕石? 巨大な溶岩? デカすぎる、やべぇんじゃねぇ?)

 ルミワームクエストをこなしていた誰もが思った。巨大な何かが作る影の下に、虫けらのような人々の群れが居る。

ドゥオーーーーーーーーンッッッ

 一瞬その巨大な何かは空で静止した。そして次の瞬間一気に地上に落下した。

 地面に触れると同時に、重低音の震動波が大気を震わし、地面が上下に激しく揺れる。

ズバ、ババババ、ズサッ、ババッ、グラァガラガラドゥババガラグラァガチャバラ……

 芋畑の方から巻き上げられた土が激しい勢いで舞い上がる。小石がまるで弾丸のように飛び散って遠巻きにしていた人々を襲った。

バチバチバチバチバチバチバチ
(なんだこれーー! !)

「うわっ」、「きゃあ」、「ヒャアッ」

 地面から突き上げられた。

ドタンッ、バタンッドタン

「うわっうわっわっ」

 モフモフうさぎと、白刃のロビー、そしてラヴィアンローズは何度も地面の上で跳ねあげられ、体操音痴のトランポリンのように3人は無様に折り重なり合い、地面に叩きつけられた。

「あいたたた」
(痛くないけど、雰囲気的には痛そうな気がした)

「大丈夫? 本当だったら骨が折れてるよ」

 服をハタキながらロビーちゃんが言った。

「ヤッベェよっ、街までぶっ崩れてる。何のイベントだよ、今の隕石? が落ちた方って、リスポーンゲートがある所だよな。あの近くの芋畑にいた奴ら全員死亡だろ」

「そうだよね、危なかったぁ。芋掘りしてたら "初 "岩の下敷きの恐怖をというものを味わうとこだったよ。心臓弱い人やばくね? このゲーム」

「いや、ラヴィちゃん、もう既に俺の心臓バクバク状態。ロビーちゃんのパンチラも見えたし、やってくれるわー、これシナリオ通りなのか?」

(えーーー! 今どさくさに紛れてなんか言ってなかったか?)

 ロビーちゃんからツッコミが来るかと思って見たら、彼女は両手を胸の前で組んで祈りのポーズをしてた。

「愛の女神の息吹ハーヴェ」

 スッと息を吸い込んだ彼女が呪文を唱えると、俺たち3人を取り囲むように光を放つ触手のような蔓が地面から伸びて、金色の百合に似た花を咲かせていった。

 どこからか厳かな女性の声のハーモニーが流れてきて、俺たちは金色のオーラに包まれ傷が治されていく。

「これってヒール?」

「やたっ、出来たー! えっとねヒールとか書いてないよ。ハーヴェって魔法みたい。待ってね、傷を治すのと同時にHPの回復を行うって書いてある。みんなさっきの後、HP見た? わた、じゃなくて僕はやばかったよ。HPの残り15で手と胸とか肋骨の辺りが骨折判定されていたもん」

「ロビーちゃん、頼むから女の子に戻っておくれよぉ」

(だから、ダークエルフがお願いポーズしても似合わないって!)

「ありがとうロビーちゃん、もう俺のホーリーの効果は消えてるみたいだ。つーかさ、さっき落ちたのって何?」

「あの街の外壁に倒れこんでる巨大な岩のこと?」

「うんあれ。あそこに居たら俺たちも潰されていたよな。たまたまGMと遊んでいたから助かったけど、もちっと南だったらやばかったよね」

「なんか凄いねー、あっあのね、さっきGMさんから聞いたんだけど、最初のPKってあれもシナリオ上の演出だって言ってたよ」

「まじ? ロビーちゃん」

「あのクソ電波、あれ運営? つー事かっ、モフモフさんっ、さっき俺たちが倒した奴らって」

「あいつらだ、あの2人が電波やってたんだよ、間違いないっ!  相当に口が悪かったしな」

「GMなんだよな、なんか何でも有りってのが凄いっていうか、俺達が話せる様になったのもGMのおかげって事だし」


(んっ、ロビーちゃん黙っている間が長いよ、どしたっ?)


「そうなの、なんかラヴィちゃんにお詫びするって言いに来たらしいんだけど、私が勘違いしたせいでなかなか話が出来ないから、話しやすくする為に会話機能の解除を行ったって言ってた」

「いいっ、やっぱりロビーちゃんはそのままの方がいい。おかえりー! 」

 声を元に戻したロビーちゃんに、モフモフさんが歓喜している。

「恥ずかしいけどなー、ラヴィちゃんは戻さないの?」

「戻した方が良いかな?」

「キモいから戻せっ!」

「わかった戻すよ、どうせバレてるし……」

「GMさんも気にしてたよ、ネカマのラヴィちゃんに悪いことをしたって」

(ずこぉぉぉ運営にネカマ認定される俺って……音声をエフェクト無しに戻してと)

「戻したよ。しかしさ、あの隕石? あれも最初から仕組まれていたとしたら俺達って相当死んでねーか?」

「だよなぁ、あそこに集まる様に仕込んだ上での隕石だろっ。運がいい奴しか生き残れないじゃないかっ」

「街の中に居るGMさんに話を聞きに行ってみる?」

 ロビーちゃんが街の中を指差しながら言った。俺とモフモフさんがつられて街を見る。

「あっ、街が回ってねぇ。あの岩が街にめり込んで動かなくなったんだ」

「あっ本当や、もう吊り橋を追いかけんで良くなったわ、ラッキー!」

「これ本当にシナリオか?」

「おやおやおやおや、生きてたのか? ネカマ諸君」

(誰だ? どっから声がした?)

「地上を這いつくばる蛆虫どもよ、我にひれ伏せっ」

 声の主は頭上、はるか上の方からかけられていた。

「お前ら誰だー? 電波野郎だろー! 」

「おい、なんでバレてるんだ?」

 カニバリズマーは小さな声で言った。

「お前が下手くそだからあいつらが生きているんだよっ。だいたいネカマ諸君って言ったら、あいつらのことを知ってるって言ってる様なもんじゃないか。もっと頭使えよ、あんたは魔導士、私は魔女、もう電波じゃないんだからうまく立ち回るんだよっ、わかった?」

「おーい、何ゴニョゴニョ話してんだよ。お前らじゃないのか? 街をボコボコにした奴は? 」

「あら、あれ、マズイか?」

 カニバリズマーが街の南側の外壁にめり込む巨岩を見て言った。

「お前がやったんだからなっ。いきなり最強魔法メテオンをぶっ放すとか……しかも外してるし」

「うるせぇ全部あのカマがわりいんだよ。もういい、どうせ怒られるんなら、とことんやってやるぜっ」

「黒い月よ世界を照らせっ! メ・テ・オ・ン」

「やめろって、ああもう。色んな意味でやばいって気づけよっ」
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