11 / 16
鴨緑江の危機/北朝鮮の崩壊
しおりを挟む
八 六カ国協議
市ヶ谷・『海神』・作戦会議室。
初夏言って良い季節になり、『海神』の中庭には芝生で寛ぐ家族連れの姿があった。
無論、『海神』の中に居住する家族の姿に他ならない。
会議室には例のごとく、首相を含めた幹部五人が集まっていた。
石葉はこのところ頻繁に、『海神』に顔を出すようになっている。
自身の政策にも、大町たちの意見を求めるケースが増えていた。
「来週六カ国協議がソウルで開催される。なにか北朝鮮を動かす思案はないか?
バカバカしい交渉は止めにして拉致問題をなんとしても、私の政権で解決したいのだ」
前の政権で実現しなかった、被害者救出は石葉の悲願とも言えるものだった。
拉致被害者が存命の内になんとしても解決したい、そのことに腐心していた。
大町の想いも、石葉と変わることはない。
「拉致被害者の殆どが生存していることは、以前報告した通りです。
お話ししたように、海外派兵出来ない状況では、実力での救出は困難です。
今のところ、それに対応できる部隊も装備もない現状ですので。
金王朝が崩壊しない限り、難しいと思います。代替わりした時が一番のチャンス
でしたが、なにも変わりませんでした」
世代交代の時期になんらかの変化を期待したが、状況が変わることはなかった。
日朝ピョンヤン宣言の建前に縛られ、逆に解決が遅れると言う皮肉な結果を招いて
しまったのだ。
石葉は、我が身のことのように焦っていた。
「今からでも出来る、もっと具体的な案はないのか」
石葉の問いに、大町は躊躇する。
「でも私のような軍人が、国の政策に口を出してもよいのでしょうか?
私はその立場にはない、そう思っています」
大町は、軍人が政治に口出すことはあってはならないと、自身のタブーとして
守り続けてきた。過去、軍が政治に口を出して起きたことに、何一つ良いことは
なかったからだ。
ある意味軍人の組織は官僚の縦割り組織より酷いものだ。
陸軍は陸軍、海軍は海軍で、己の領分を守ることを妄信していた。
酷いケースでは国益ではなく、組織の利益が優先される事さえ当たり前だった。
「この際だ、かまわん」
首相の許しを得て、大町は持論を展開する。
「北朝鮮を中国に売るんですね。それが一番の近道です。
同盟国のアメリカは嫌がるでしょうが」
そこに居た全員が唖然とする。
「え、どう言うことだ?」
石葉には、大町の真意がわからない。
「北の核は既に脅威と言って良いレベルになっています」
「それはそうだろう。で、どうすれば良い?」
石葉が頷いて、話を促す。
「どうしてもということであれば、私達の手で核の無力化はできます。
残るのは拉致問題です。日本以外に、このことに尽力しようとする国はないでしょう」
大町が話す前置きの長さに、石葉はイラついてくる。
「だから、それで?」
「ですから、中国に金王朝を排除してもらうのです。好みではありませんが、
命令されれば私達がやってもかまいません。原発事件で判明した通り、李上将の
提案だったとは言え、原発の破壊工作をされた経緯もありますし。禍根は断って
おくべき、そう思います。北朝鮮の復興には、日本の賠償金を使います。
中国式改革開放の手段で、中国に北朝鮮への戦後賠償金を使ってもらえばいいのです」
大町は、キム一族の所在を常に掴んでいた。
大町たちがやろうと思えば、どんなことでも出来る状況を保持していたのだ。
首相は思いもかけない提案に、目を丸くする。
「なんかとんでもないことを言い出すやつだな」
大町はあくまでも冷静だ。
「中国が一番嫌うのは、北朝鮮が韓国に吸収され、アメリカの軍事プレゼンスが国境に
及ぶことです。拉致被害者救出のためならお土産に私たちの軍事技術の一部を、
中国に供与しても構わんと思うのですが。ミサイル発射のツケも残ってしますしね」
「う~ん、微妙な話だな。閣内で検討してみよう」
大町は更に、石葉に追い打ちをかかる。
「これは例えばの話ですが。私たちがキム一族を排除し、改革派を支援することで、
北朝鮮国内に、流動的状態を作り出すことは可能です。ですが、そこでどんなことが
起きるのかは、保障できません。拉致被害者の安全を考慮すれば、そんな危険は
冒せないのです。とにもかくにも総書記を排除し、あとは中国にまかせる、そう言う
ことです」
「確かにそうかも知れんな」
「実は例の母国に送り返して解放した工作員とも連絡がとれています。
彼らは不承不承命令に従いましたが、現在改革派として動いています。利用できますよ」
大町の想いも石葉同様、なんとしても被害者を救出したい、そのことにあった。
◆
数週間後。
中国・大連・大連国際ホテル。
渤海湾に面した大連市。
歴史的には、日露戦争の昔から続く繋がりがあり、日中の恩讐を超えた親日的都市と
言っても過言ではない。
初夏と言っても日本のそれとは違い、乾燥し涼やかな大陸性の気候に包まれた季節と
言って良かった。
大町は大連駅前にある、国際ホテルに宿泊していた。
大町の訪中の目的は、石破首相の名代として、毛主席に親書を手渡すことにある。
窓口になったのは馬辰、中央軍事委員会の軍事代表として、いまや人民解放軍を
掌握する存在に上り詰めていた。
これまでの経緯から大町とは、連絡がとれる関係にあった。
ホテルの一室で、二人は会していた。
雰囲気は友好的で、笑顔の馬が手を差し伸べ握手を求めてきた。
「初めまして大町さん。何度かお話をしましたが、漸くお会いすることが
できましたね。歓迎します」
大町は、強く手を握り返して
「こちらこそ、お会いできて光栄です。人民解放軍のトップにこうして
お会いできるのは、めったに無いチャンスです」
二人とも笑顔で挨拶を交わす。
「あなたが仰る、『お互いを知る』それが安全保障の一番の近道だ、と言うご意見に
賛同します。知らないことは疑心暗鬼を招く、その通りだと思います。
いろいろご迷惑をお掛けした件も含め、どうかこれからも宜しくお願いします」
馬が笑顔で話す。
「そんな風に仰って頂き、こちらこそ恐縮です。お互い難しい立場にはありますが、
今後とも互いの協力関係を、極力進めていきたいと願っております」
馬が顔色を改めて、
「今回おいで頂いた趣旨を伺いたいと思います。なにがご希望なのでしょう?
具体的な話を聞かせて下さい」
大町も顔を引き締め、
「率直に言わせてもらいます。これまでお国されて来た数々の暴挙により、我が国には
多大な危機的状況が生じています」
「ご迷惑をお掛けしたことは、率直にお詫びします。ただ、全ての事案に関し当方は
手痛い反撃を受け、完膚なきまで叩きのめされたわけですが……」
「李上将の暴走ということは理解していますが、あくまでもお国がなされた暴挙と
言うしかありません。その貸を返していただきたい。今回の訪問の目的はそれです」
「貸ですか……。確かに返すべき借りがある、それは認めます」
「ただ返せと言うわけではありません。お土産も用意してあります」
大町は今回の訪中の目的を正直に話し、馬辰の手配により、その後毛主席との面会を
果たした。
◆
三ヶ月後・深夜、北朝鮮の首都平城の一角。
「どうだ、第一書記はどうなっている」
ビル群の一角に集合した一団の中に、機関銃を携えたキム・ガァンチョルの姿があった。
周囲には完全武装した、百名余りの兵士たちがいる。
「はい、招待所に隠れていた所を見つけ、現在拘束しています。
とうとうやりましたね。一族の殆ども拘束出来ています」
パク・テファンが応じる。
「『海神』の情報は笑えるくらい、正確だったな。判っているな、予定通り実行しろ、
完全に『闇に葬れ』。絶対、痕跡は残すな。その後、親衛隊はどうなった?」
「はい、やはり親衛隊は抵抗を止めませんでしたので、殲滅してやりました。
軍や保安部に主だった抵抗はありません」
「根回しが効いたと言うことだ。各地にいる日本人の警備に抜かりないな?
救出の手柄は、中国に渡すことになっている」
「全て計画通りです。気持ち悪いくらい、順調に進んでいます」
◆
同・未明、霧に包まれた鴨緑江(おうりょくこう)。
北朝鮮の対岸にある中国領の河岸にそって、川岸を埋めつくすように、
黒々とした塊が霧の中に沈んでいた。
一帯は緊張に包まれ、静まり返っている。
微かに霧が薄れ、黒々とした塊が一斉に唸りだした。
「ゴォー・ゴォー!!」
一帯ではディーゼルエンジンの割れんばかりの轟音が、辺りを覆い尽くすように
響き渡った。
「前進!」
戦車の上部から半身を乗り出した司令官が、ヘッドセットに向かって叫ぶ。
「グォゴォー・-!」
中国、人民解放軍の戦車部隊が濃霧を突き、一斉に対岸の北朝鮮に向け進撃を始めた。
戦車部隊は国境の川に向かって下っていく。
人民解放軍の渡河作戦は、日本海側の豆満江(とまんこう)側からも、
同時に開始されていた。
無人の荒野を進むごとく侵攻する、戦車部隊を遮るものはない。
同時刻。
北朝鮮の主要な港の港外には、中国海軍の艦船が展開していた。
夜明けを待って事実上、朝鮮の全ての港湾が封鎖されていた。
まるで打ち合わせがあったごとく、朝鮮の全ての艦船に動きは見られない。
朝鮮の全ての港がその動きを止めていた。
中国艦船の砲塔は、内陸部に向けられ、その威容を示している。
北朝鮮海軍で抵抗を示すものは皆無で、港湾は異様な静けさに包まれていた。
北朝鮮の東西の海岸線に沿って、多数の中国公船が遊弋し、外海に出ようとする
朝鮮の船は、一切見当たらない。
海岸線を守る、北朝鮮の軍隊にも動きはない。
緊張の中の調和、そんな異様な空気が国中を支配している。
北朝鮮の国境が、海岸線が、中国人民解放軍によって包囲され、完全に封鎖されていた。
一時間後。
首都、平壌では人民解放軍の空挺部隊が、落下傘降下を開始していた。
深い蒼色の空に明かりがさし込み、空は明るい青に変わる。
レシプロ機のエンジン音が空に響き渡り、落下傘の花が空を埋めるように開いていく。
明るくなった平壌の上空に朝日を浴び、無数とも思える落下傘がキラキラ光りを
反射しながら拡散していく。
徐々に降下してくる落下傘に、空を見上げる北朝鮮の人々は、歓声を上げ、
狂ったように手を振っていた。
(これで漸く救われる)
北朝鮮人民の、正直な思いだろう。
広場に続々と集結する人々の顔には、歓喜の色が溢れている。
大同江の西岸にある、金日成広場に集結する朝鮮人民軍の兵士たちは、武器を捨て
兵装を解いている。
兵士たちの顔にも歓喜の色があった。
開城(ケソン)、元山(ウォンサン)、清津(チョンジン)、南浦(ナムポ)等、
北朝鮮の主要都市でも、同様の光景が展開されていた。各都市においても組織的抵抗は
一切なく、人民解放軍は殆ど血を流すことなく、朝鮮侵攻を果たすことが出来た。
平城では親衛隊と思われる、少数の部隊による抵抗はあったものの、大きな混乱に
至ることはなかった。
時間の推移からすれば半日も必要とせず、ほんの一瞬と言って良いほど鮮やかに、
朝鮮は平定されることになった。
侵攻した人民解放軍が最初に行ったのは、日本の情報に基づく『拉致被害者』の
救出だった。
◆
同日・中国外務省・プレスルーム。
報道官が上がる壇上の前には、多数の外国人プレスが待機していた。
会場は人いきれで、むせ返るような暑さだ。
「いつものこったが、あいつら待たせすぎだよな。俺たちを何だと思ってるんだ?
ったくぅ、頭に来るぜ」
「そんなこと言っても、なにも変わらんぞ。ここは中国だ。慣れるしかない。
お、来たぞあいつが」
「ああ、始まったな」
アメリカのTVクルーの泣き言が聞こえてくる。
女性報道官の華春華が、例の甲高い調子でステートメントを発表している。
「本日未明、人民解放軍が朝鮮労働党の求めに応じ、朝鮮に進軍しました。
現在、各地の治安維持に当たっています。
これは『中朝友好協力相互援助条約』に基づくもので、中国政府としては、
今後朝鮮労働党との協議の上、これからの行動を決めて行くとの事です。
ご覧頂いているのは、朝鮮中央テレビの映像です。現在朝鮮で起きている事態を、
最もよく表していると思います」
報道官の後ろに配置された、大型のモニターに映し出された光景は異様なものだった。
落下傘で降下した大部隊が兵装を替え、人民解放軍の軍装で金日成広場を行進している
様子が、大写しにされていた。
整然と進む行進を取り囲む民間人や兵士たちの手には五星紅旗の小旗が握られている。
「マンセー(万歳)! マンセー!」
人々が行進する人民解放軍兵士に向け、声の限り叫んでいる。
周到に用意された演出とは言え、現地で混乱が起きていないこと、朝鮮人民に
中国軍が歓迎されていることを示すには、十分なインパクトがあった。
(なんだよこれって……。ヤラセの極み、そんなところか)
呆然と映像に見入る報道陣の顔には、苦笑いが浮かんでいる。
頃合いをみて、報道官のステートメントが続く
「朝鮮では反革命勢力の一部軍人がクーデターを計画し、政権の転覆を
狙った模様です。クーデターは朝鮮労働党の要請により進軍した我が人民解放軍の
介入により、失敗に終わったとの事です。
平壌では昨日深夜に反乱軍と朝鮮人民軍との間で、大規模な戦闘があった模様です。
現在、反乱軍は人民解放軍に降伏しており、朝鮮の治安は平静に保たれています。
なお、金正恩第一書記の安否は不明であり、人民解放軍が安否確認を急いでいるとの
ことです。
詳しい情報が入り次第、発表する予定でいます」
報道官は発表し終わると、報道陣の質問に答えず、会見場を後にする。
複数の外国メディアが追いかけて質問しようとしたが、かなわなかった。
まだ状況が確定していない、そういうことなのだろう。
◆
同日・午前、日本・TVニュース。
「臨時ニュースを申し上げます。本日未明、中国の人民解放軍が、北朝鮮に侵攻した
模様です。消息筋の話によると、昨夜北朝鮮では政権転覆を狙ったクーデターが
発生し、中国は朝鮮労働党の求めに応じ、中朝の条約に基づいた軍事行動を
とっているとのことです。
詳しい情報が入り次第、続報をお伝えします。
あ、お待ちください。ただいま、政府の記者会見が始まった模様ですので、
カメラをそちらに切り替えます」
首相官邸のプレスルームの壇上には、石葉が立っていた。
「昨日深夜、北朝鮮でクーデターが発生したことが確認できました。
北朝鮮内部の詳しい状況は不明ですが、現在中国軍が介入し主要都市をおさえ、
治安維持に努めている模様です。
ご存知のように現在、中国とは話し合いが出来ない環境にありますが、
危急の場合でもあり、急ぎ毛主席との会談を申し込んでおります。
既に外務省を通じ中国政府に対し、邦人保護と拉致被害者の救出を要請しています。
この機会を逃すことなく、政府としては万全の対処を考えております。この後の会見は
官房長官に引き継ぎますので、宜しくお願いします」
石葉首相は、官房長官に後を託し、急ぎその場を退場した。
◆
同日。
市ヶ谷・『海神』作戦会議室。
大町をはじめとする幹部四人と、石葉が北朝鮮の地図を前に、額を寄せ集めていた。
大町が六か所の赤マルがついた、地図を指し示し、
「総理、この六地点で約束通り、中国軍が拉致被害者の救出に成功しています。
当初の目的は成ったわけですが、あいつらとんでもない奴らです」
「え、あいつらって、朝鮮労働党のことか?」
石葉が、得心が行かない顔で問い返す
「違いますよ。人民解放軍、毛主席のことです。
我々の進言に反して、改革派のクーデターを潰してしまいました。
どうやらジョンウンの息子を押し立てて、今後の朝鮮経営を考えているようです。
さんざん世襲を批判しておきながら、この始末です。
改革派の連中には、気の毒なことをしました。残念です」
北朝鮮の改革派は、大町達の情報と資金援助でクーデターを起こしたのだ。
参加した軍人の安否は知れなかった。
石葉が呆れた様子で話し出す。
「キム・ジョンウンの息子って、まだ幼子じゃなかったか? 社会主義の国の主が
四代目ってことか。
いったい何時代の話なのか、まったく呆れたな……」
「意表を突かれた、そう言うことですな」
大町たちの目論みは改革派と中国が一体となり、北朝鮮の改革開放を進めることに
あった。
侵攻した人民解放軍に改革派との連絡方法、キム・ジョンウンの居場所を教えたのも、
大町たちだった。
石葉は苦笑いをしている。
「中国としては、へたな改革開放勢力を前面に出すより、ジョンウンの息子の方が
扱い易い、そう考えたんだろうな。喰えないやつらだ。いずれにしても、
今より良くなることは間違いない。交渉相手が誰になるかは判らんが、約束通り
戦後賠償には、早急に応じることにする。今後とも中国の動向には注意してくれ」
大町も苦笑していた。
「中国人の腹の内までは判らない、と言うことですな。情報収集が甘かったようです。
朝鮮の改革派の連中には、気の毒な結果になりましたが……。
約束通り、『キンチョー』の技術は渡してやりました。
お手並み拝見といったところです」
「難民問題は、考えなくてはいかんのかな?」
「それは大丈夫かと思われます。南北の国境も東西の海岸線も、中国が厳重に封鎖して
おりますので、当面はないかと」
中国との裏取引は実現したものの、日本の思惑通りにはならなかった。
一筋縄ではいかない中国の対応に、大町を気を引き締める思いだった。
市ヶ谷・『海神』・作戦会議室。
初夏言って良い季節になり、『海神』の中庭には芝生で寛ぐ家族連れの姿があった。
無論、『海神』の中に居住する家族の姿に他ならない。
会議室には例のごとく、首相を含めた幹部五人が集まっていた。
石葉はこのところ頻繁に、『海神』に顔を出すようになっている。
自身の政策にも、大町たちの意見を求めるケースが増えていた。
「来週六カ国協議がソウルで開催される。なにか北朝鮮を動かす思案はないか?
バカバカしい交渉は止めにして拉致問題をなんとしても、私の政権で解決したいのだ」
前の政権で実現しなかった、被害者救出は石葉の悲願とも言えるものだった。
拉致被害者が存命の内になんとしても解決したい、そのことに腐心していた。
大町の想いも、石葉と変わることはない。
「拉致被害者の殆どが生存していることは、以前報告した通りです。
お話ししたように、海外派兵出来ない状況では、実力での救出は困難です。
今のところ、それに対応できる部隊も装備もない現状ですので。
金王朝が崩壊しない限り、難しいと思います。代替わりした時が一番のチャンス
でしたが、なにも変わりませんでした」
世代交代の時期になんらかの変化を期待したが、状況が変わることはなかった。
日朝ピョンヤン宣言の建前に縛られ、逆に解決が遅れると言う皮肉な結果を招いて
しまったのだ。
石葉は、我が身のことのように焦っていた。
「今からでも出来る、もっと具体的な案はないのか」
石葉の問いに、大町は躊躇する。
「でも私のような軍人が、国の政策に口を出してもよいのでしょうか?
私はその立場にはない、そう思っています」
大町は、軍人が政治に口出すことはあってはならないと、自身のタブーとして
守り続けてきた。過去、軍が政治に口を出して起きたことに、何一つ良いことは
なかったからだ。
ある意味軍人の組織は官僚の縦割り組織より酷いものだ。
陸軍は陸軍、海軍は海軍で、己の領分を守ることを妄信していた。
酷いケースでは国益ではなく、組織の利益が優先される事さえ当たり前だった。
「この際だ、かまわん」
首相の許しを得て、大町は持論を展開する。
「北朝鮮を中国に売るんですね。それが一番の近道です。
同盟国のアメリカは嫌がるでしょうが」
そこに居た全員が唖然とする。
「え、どう言うことだ?」
石葉には、大町の真意がわからない。
「北の核は既に脅威と言って良いレベルになっています」
「それはそうだろう。で、どうすれば良い?」
石葉が頷いて、話を促す。
「どうしてもということであれば、私達の手で核の無力化はできます。
残るのは拉致問題です。日本以外に、このことに尽力しようとする国はないでしょう」
大町が話す前置きの長さに、石葉はイラついてくる。
「だから、それで?」
「ですから、中国に金王朝を排除してもらうのです。好みではありませんが、
命令されれば私達がやってもかまいません。原発事件で判明した通り、李上将の
提案だったとは言え、原発の破壊工作をされた経緯もありますし。禍根は断って
おくべき、そう思います。北朝鮮の復興には、日本の賠償金を使います。
中国式改革開放の手段で、中国に北朝鮮への戦後賠償金を使ってもらえばいいのです」
大町は、キム一族の所在を常に掴んでいた。
大町たちがやろうと思えば、どんなことでも出来る状況を保持していたのだ。
首相は思いもかけない提案に、目を丸くする。
「なんかとんでもないことを言い出すやつだな」
大町はあくまでも冷静だ。
「中国が一番嫌うのは、北朝鮮が韓国に吸収され、アメリカの軍事プレゼンスが国境に
及ぶことです。拉致被害者救出のためならお土産に私たちの軍事技術の一部を、
中国に供与しても構わんと思うのですが。ミサイル発射のツケも残ってしますしね」
「う~ん、微妙な話だな。閣内で検討してみよう」
大町は更に、石葉に追い打ちをかかる。
「これは例えばの話ですが。私たちがキム一族を排除し、改革派を支援することで、
北朝鮮国内に、流動的状態を作り出すことは可能です。ですが、そこでどんなことが
起きるのかは、保障できません。拉致被害者の安全を考慮すれば、そんな危険は
冒せないのです。とにもかくにも総書記を排除し、あとは中国にまかせる、そう言う
ことです」
「確かにそうかも知れんな」
「実は例の母国に送り返して解放した工作員とも連絡がとれています。
彼らは不承不承命令に従いましたが、現在改革派として動いています。利用できますよ」
大町の想いも石葉同様、なんとしても被害者を救出したい、そのことにあった。
◆
数週間後。
中国・大連・大連国際ホテル。
渤海湾に面した大連市。
歴史的には、日露戦争の昔から続く繋がりがあり、日中の恩讐を超えた親日的都市と
言っても過言ではない。
初夏と言っても日本のそれとは違い、乾燥し涼やかな大陸性の気候に包まれた季節と
言って良かった。
大町は大連駅前にある、国際ホテルに宿泊していた。
大町の訪中の目的は、石破首相の名代として、毛主席に親書を手渡すことにある。
窓口になったのは馬辰、中央軍事委員会の軍事代表として、いまや人民解放軍を
掌握する存在に上り詰めていた。
これまでの経緯から大町とは、連絡がとれる関係にあった。
ホテルの一室で、二人は会していた。
雰囲気は友好的で、笑顔の馬が手を差し伸べ握手を求めてきた。
「初めまして大町さん。何度かお話をしましたが、漸くお会いすることが
できましたね。歓迎します」
大町は、強く手を握り返して
「こちらこそ、お会いできて光栄です。人民解放軍のトップにこうして
お会いできるのは、めったに無いチャンスです」
二人とも笑顔で挨拶を交わす。
「あなたが仰る、『お互いを知る』それが安全保障の一番の近道だ、と言うご意見に
賛同します。知らないことは疑心暗鬼を招く、その通りだと思います。
いろいろご迷惑をお掛けした件も含め、どうかこれからも宜しくお願いします」
馬が笑顔で話す。
「そんな風に仰って頂き、こちらこそ恐縮です。お互い難しい立場にはありますが、
今後とも互いの協力関係を、極力進めていきたいと願っております」
馬が顔色を改めて、
「今回おいで頂いた趣旨を伺いたいと思います。なにがご希望なのでしょう?
具体的な話を聞かせて下さい」
大町も顔を引き締め、
「率直に言わせてもらいます。これまでお国されて来た数々の暴挙により、我が国には
多大な危機的状況が生じています」
「ご迷惑をお掛けしたことは、率直にお詫びします。ただ、全ての事案に関し当方は
手痛い反撃を受け、完膚なきまで叩きのめされたわけですが……」
「李上将の暴走ということは理解していますが、あくまでもお国がなされた暴挙と
言うしかありません。その貸を返していただきたい。今回の訪問の目的はそれです」
「貸ですか……。確かに返すべき借りがある、それは認めます」
「ただ返せと言うわけではありません。お土産も用意してあります」
大町は今回の訪中の目的を正直に話し、馬辰の手配により、その後毛主席との面会を
果たした。
◆
三ヶ月後・深夜、北朝鮮の首都平城の一角。
「どうだ、第一書記はどうなっている」
ビル群の一角に集合した一団の中に、機関銃を携えたキム・ガァンチョルの姿があった。
周囲には完全武装した、百名余りの兵士たちがいる。
「はい、招待所に隠れていた所を見つけ、現在拘束しています。
とうとうやりましたね。一族の殆ども拘束出来ています」
パク・テファンが応じる。
「『海神』の情報は笑えるくらい、正確だったな。判っているな、予定通り実行しろ、
完全に『闇に葬れ』。絶対、痕跡は残すな。その後、親衛隊はどうなった?」
「はい、やはり親衛隊は抵抗を止めませんでしたので、殲滅してやりました。
軍や保安部に主だった抵抗はありません」
「根回しが効いたと言うことだ。各地にいる日本人の警備に抜かりないな?
救出の手柄は、中国に渡すことになっている」
「全て計画通りです。気持ち悪いくらい、順調に進んでいます」
◆
同・未明、霧に包まれた鴨緑江(おうりょくこう)。
北朝鮮の対岸にある中国領の河岸にそって、川岸を埋めつくすように、
黒々とした塊が霧の中に沈んでいた。
一帯は緊張に包まれ、静まり返っている。
微かに霧が薄れ、黒々とした塊が一斉に唸りだした。
「ゴォー・ゴォー!!」
一帯ではディーゼルエンジンの割れんばかりの轟音が、辺りを覆い尽くすように
響き渡った。
「前進!」
戦車の上部から半身を乗り出した司令官が、ヘッドセットに向かって叫ぶ。
「グォゴォー・-!」
中国、人民解放軍の戦車部隊が濃霧を突き、一斉に対岸の北朝鮮に向け進撃を始めた。
戦車部隊は国境の川に向かって下っていく。
人民解放軍の渡河作戦は、日本海側の豆満江(とまんこう)側からも、
同時に開始されていた。
無人の荒野を進むごとく侵攻する、戦車部隊を遮るものはない。
同時刻。
北朝鮮の主要な港の港外には、中国海軍の艦船が展開していた。
夜明けを待って事実上、朝鮮の全ての港湾が封鎖されていた。
まるで打ち合わせがあったごとく、朝鮮の全ての艦船に動きは見られない。
朝鮮の全ての港がその動きを止めていた。
中国艦船の砲塔は、内陸部に向けられ、その威容を示している。
北朝鮮海軍で抵抗を示すものは皆無で、港湾は異様な静けさに包まれていた。
北朝鮮の東西の海岸線に沿って、多数の中国公船が遊弋し、外海に出ようとする
朝鮮の船は、一切見当たらない。
海岸線を守る、北朝鮮の軍隊にも動きはない。
緊張の中の調和、そんな異様な空気が国中を支配している。
北朝鮮の国境が、海岸線が、中国人民解放軍によって包囲され、完全に封鎖されていた。
一時間後。
首都、平壌では人民解放軍の空挺部隊が、落下傘降下を開始していた。
深い蒼色の空に明かりがさし込み、空は明るい青に変わる。
レシプロ機のエンジン音が空に響き渡り、落下傘の花が空を埋めるように開いていく。
明るくなった平壌の上空に朝日を浴び、無数とも思える落下傘がキラキラ光りを
反射しながら拡散していく。
徐々に降下してくる落下傘に、空を見上げる北朝鮮の人々は、歓声を上げ、
狂ったように手を振っていた。
(これで漸く救われる)
北朝鮮人民の、正直な思いだろう。
広場に続々と集結する人々の顔には、歓喜の色が溢れている。
大同江の西岸にある、金日成広場に集結する朝鮮人民軍の兵士たちは、武器を捨て
兵装を解いている。
兵士たちの顔にも歓喜の色があった。
開城(ケソン)、元山(ウォンサン)、清津(チョンジン)、南浦(ナムポ)等、
北朝鮮の主要都市でも、同様の光景が展開されていた。各都市においても組織的抵抗は
一切なく、人民解放軍は殆ど血を流すことなく、朝鮮侵攻を果たすことが出来た。
平城では親衛隊と思われる、少数の部隊による抵抗はあったものの、大きな混乱に
至ることはなかった。
時間の推移からすれば半日も必要とせず、ほんの一瞬と言って良いほど鮮やかに、
朝鮮は平定されることになった。
侵攻した人民解放軍が最初に行ったのは、日本の情報に基づく『拉致被害者』の
救出だった。
◆
同日・中国外務省・プレスルーム。
報道官が上がる壇上の前には、多数の外国人プレスが待機していた。
会場は人いきれで、むせ返るような暑さだ。
「いつものこったが、あいつら待たせすぎだよな。俺たちを何だと思ってるんだ?
ったくぅ、頭に来るぜ」
「そんなこと言っても、なにも変わらんぞ。ここは中国だ。慣れるしかない。
お、来たぞあいつが」
「ああ、始まったな」
アメリカのTVクルーの泣き言が聞こえてくる。
女性報道官の華春華が、例の甲高い調子でステートメントを発表している。
「本日未明、人民解放軍が朝鮮労働党の求めに応じ、朝鮮に進軍しました。
現在、各地の治安維持に当たっています。
これは『中朝友好協力相互援助条約』に基づくもので、中国政府としては、
今後朝鮮労働党との協議の上、これからの行動を決めて行くとの事です。
ご覧頂いているのは、朝鮮中央テレビの映像です。現在朝鮮で起きている事態を、
最もよく表していると思います」
報道官の後ろに配置された、大型のモニターに映し出された光景は異様なものだった。
落下傘で降下した大部隊が兵装を替え、人民解放軍の軍装で金日成広場を行進している
様子が、大写しにされていた。
整然と進む行進を取り囲む民間人や兵士たちの手には五星紅旗の小旗が握られている。
「マンセー(万歳)! マンセー!」
人々が行進する人民解放軍兵士に向け、声の限り叫んでいる。
周到に用意された演出とは言え、現地で混乱が起きていないこと、朝鮮人民に
中国軍が歓迎されていることを示すには、十分なインパクトがあった。
(なんだよこれって……。ヤラセの極み、そんなところか)
呆然と映像に見入る報道陣の顔には、苦笑いが浮かんでいる。
頃合いをみて、報道官のステートメントが続く
「朝鮮では反革命勢力の一部軍人がクーデターを計画し、政権の転覆を
狙った模様です。クーデターは朝鮮労働党の要請により進軍した我が人民解放軍の
介入により、失敗に終わったとの事です。
平壌では昨日深夜に反乱軍と朝鮮人民軍との間で、大規模な戦闘があった模様です。
現在、反乱軍は人民解放軍に降伏しており、朝鮮の治安は平静に保たれています。
なお、金正恩第一書記の安否は不明であり、人民解放軍が安否確認を急いでいるとの
ことです。
詳しい情報が入り次第、発表する予定でいます」
報道官は発表し終わると、報道陣の質問に答えず、会見場を後にする。
複数の外国メディアが追いかけて質問しようとしたが、かなわなかった。
まだ状況が確定していない、そういうことなのだろう。
◆
同日・午前、日本・TVニュース。
「臨時ニュースを申し上げます。本日未明、中国の人民解放軍が、北朝鮮に侵攻した
模様です。消息筋の話によると、昨夜北朝鮮では政権転覆を狙ったクーデターが
発生し、中国は朝鮮労働党の求めに応じ、中朝の条約に基づいた軍事行動を
とっているとのことです。
詳しい情報が入り次第、続報をお伝えします。
あ、お待ちください。ただいま、政府の記者会見が始まった模様ですので、
カメラをそちらに切り替えます」
首相官邸のプレスルームの壇上には、石葉が立っていた。
「昨日深夜、北朝鮮でクーデターが発生したことが確認できました。
北朝鮮内部の詳しい状況は不明ですが、現在中国軍が介入し主要都市をおさえ、
治安維持に努めている模様です。
ご存知のように現在、中国とは話し合いが出来ない環境にありますが、
危急の場合でもあり、急ぎ毛主席との会談を申し込んでおります。
既に外務省を通じ中国政府に対し、邦人保護と拉致被害者の救出を要請しています。
この機会を逃すことなく、政府としては万全の対処を考えております。この後の会見は
官房長官に引き継ぎますので、宜しくお願いします」
石葉首相は、官房長官に後を託し、急ぎその場を退場した。
◆
同日。
市ヶ谷・『海神』作戦会議室。
大町をはじめとする幹部四人と、石葉が北朝鮮の地図を前に、額を寄せ集めていた。
大町が六か所の赤マルがついた、地図を指し示し、
「総理、この六地点で約束通り、中国軍が拉致被害者の救出に成功しています。
当初の目的は成ったわけですが、あいつらとんでもない奴らです」
「え、あいつらって、朝鮮労働党のことか?」
石葉が、得心が行かない顔で問い返す
「違いますよ。人民解放軍、毛主席のことです。
我々の進言に反して、改革派のクーデターを潰してしまいました。
どうやらジョンウンの息子を押し立てて、今後の朝鮮経営を考えているようです。
さんざん世襲を批判しておきながら、この始末です。
改革派の連中には、気の毒なことをしました。残念です」
北朝鮮の改革派は、大町達の情報と資金援助でクーデターを起こしたのだ。
参加した軍人の安否は知れなかった。
石葉が呆れた様子で話し出す。
「キム・ジョンウンの息子って、まだ幼子じゃなかったか? 社会主義の国の主が
四代目ってことか。
いったい何時代の話なのか、まったく呆れたな……」
「意表を突かれた、そう言うことですな」
大町たちの目論みは改革派と中国が一体となり、北朝鮮の改革開放を進めることに
あった。
侵攻した人民解放軍に改革派との連絡方法、キム・ジョンウンの居場所を教えたのも、
大町たちだった。
石葉は苦笑いをしている。
「中国としては、へたな改革開放勢力を前面に出すより、ジョンウンの息子の方が
扱い易い、そう考えたんだろうな。喰えないやつらだ。いずれにしても、
今より良くなることは間違いない。交渉相手が誰になるかは判らんが、約束通り
戦後賠償には、早急に応じることにする。今後とも中国の動向には注意してくれ」
大町も苦笑していた。
「中国人の腹の内までは判らない、と言うことですな。情報収集が甘かったようです。
朝鮮の改革派の連中には、気の毒な結果になりましたが……。
約束通り、『キンチョー』の技術は渡してやりました。
お手並み拝見といったところです」
「難民問題は、考えなくてはいかんのかな?」
「それは大丈夫かと思われます。南北の国境も東西の海岸線も、中国が厳重に封鎖して
おりますので、当面はないかと」
中国との裏取引は実現したものの、日本の思惑通りにはならなかった。
一筋縄ではいかない中国の対応に、大町を気を引き締める思いだった。
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる