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第一章 幸せ
第一話 トマトのスープ
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『ノア、幸せってどうやって手に入れると思う?』
『ノア、幸せはね、自分の声が、誰かに届いて、返ってくる。その「響き」の中に、あるんだよ。』
ーーーーーーーー
「はぁ~?! だったら作りなおしなさいよ!」
私、ノアは遺物回収班「ゴースト」(通称:星屑拾い)の調査任務の過程でトマトスープを作っていた。
調理の経験は初めてだったため、塩と砂糖を間違えたスープを作ってしまい、隊員「サキ」に怒られている。
彼女の瞳には私に対する苛立ちや軽蔑、何より、焦燥が感じられた。
「間違えたのは仕方ないけど、よりによって砂糖と塩を間違える?
せっかくカンナにもらったトマトだったのに、無駄にしちゃって。
もうお腹もペコペコだわ!」
「すまない、すぐに作りなおす。」
そういって鍋のスープを捨てようとしたとき、副隊長のジンが飄々と制した。
「まあまあ、落ち着けって。ん….なるほど。確かに甘いわ。
でも、別にスープは作りなおさなくても、作り変えてもいいんじゃないか?」
「あまいトマトのスープを飲めってこと?」
「まあ、そういうスープも悪くないかもしれないだろ?
俺も早く食べたいし。」
「...あまいスープなんて、おいしいとは思えないんだけど。」
ジンのアドバイスもあり、スープを捨てるのは辞めた。
この世界で新鮮な野菜は貴重だ、廃棄するのは最適ではない。
普段はエグザスによって生み出された万能保存食という粉を食べることが多いだけに、やはり野菜や温かいスープを食べることは人間にとって満足度が高いらしい。
とはいえ、このままではただの甘いスープでしかない。何かアレンジを考える必要がある。
ふと、今回の調査での戦利品を思い出した。
「アキラ、すまないが今回の戦利品を見せてくれないか?」
「おお、いいけど。ゴコクジは墓ばっかりで大したものはないぜ?」
そういって見せてくれた中にいちじくと酢を見つけた。
トマト…クエン酸による、疲労回復効果。イチジク…豊富なミネラルによる、電解質の補給。そして、酢…酢酸による、血糖値スパイクの抑制。いや、これはスパイスだ。甘いスープに輪郭を作り味を際立たせる。
…これなら。サキが感じていた「焦燥」…つまり、空腹によるパフォーマンス低下を、解決できるはずだ。
「みんな、いちじくと酢をもらうぞ!」
「え、あとで食べようと思っていたのに。それ、私が見つけたのよ!」
「すまない、うまいスープにして必ず返す。」
「はぁ、失敗したらまた見つけてきてよね。」
サキに断わりを入れ、スープの改良に取り掛かる。
いちじくをちぎり、鍋に投入する。煮立たせた後に少量の酢も投入する。
「最悪な見た目してるけど、大丈夫?」
「ああ、きっと最高のスープになるはずだ!」
サキの問に自信をもって答えた。
体に染みる栄養素は必ずうまい。
うなぎや桃がそうであるように、トマトといちじくを混ぜたこのスープもうまいはずだ。
料理経験はないが、栄養素が味覚にもたらす効果は十分知っている。
あとは、味のバランスだが、それも酢によって整うはずだ。
「できたぞ!」
そういって皆にスープをふるまった。
「最初に食べるのはちょっと勇気がいるわね。」
「そう言わず、冷めないうちに食べてみてくれ。」
内心ドキドキしていた。
甘いトマトのスープは本当にうまいのか?
私にはわからないだけに、緊張が走る。
「ん、案外おいしいかも!鉄屑にしてはやるじゃない。」
「確かにうまいな、甘いスープを飲むのは初めてだが、悪くない。」
「おう、うまいぞノア。これはなんて名前のスープなんだ?」
皆の感想に喜びを感じた。報酬系回路が活性化しているのを感じる。
初めての料理だったが上出来なようだ。自信がわいたあたりで、勢いづいて命名してしまう。
「ノア・スープだ!」
「名前がダサすぎるわ、前言撤回。まだまだかもね。」
「でも確かに、ノアにしか作れないスープだな!」
その後も意見は様々だったが、おおむね「おいしいスープ」を作れたとしっかり認識できた。
喜んでもらえてよかった、スープは得意料理にしよう。
野営の際も手軽に作れ、やはり満足度が高そうだ。
温かいスープは体温を高めることで、リラックス効果もあるらしい。
もっと改良を重ねなければ。
「ふう。ごちそうさま。
じゃあ、とりあえず食事はこのくらいにして、そろそろ行こうか。目的地へ。」
ジンはスープを飲みほし、そう言って立ち上がる。
各自、支度を始めた。
その手は手早いが、不安を感じていることがわかる。
どうやら今回の調査は簡単ではないらしい。
「気が重いわ。
今回の調査は、ちょっと嫌な予感がする。」
そう言うサキの目線の先には超高層の建物が、墓標のように佇んでいた。
『ノア、幸せってどうやって手に入れると思う?』
『ノア、幸せはね、自分の声が、誰かに届いて、返ってくる。その「響き」の中に、あるんだよ。』
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「はぁ~?! だったら作りなおしなさいよ!」
私、ノアは遺物回収班「ゴースト」(通称:星屑拾い)の調査任務の過程でトマトスープを作っていた。
調理の経験は初めてだったため、塩と砂糖を間違えたスープを作ってしまい、隊員「サキ」に怒られている。
彼女の瞳には私に対する苛立ちや軽蔑、何より、焦燥が感じられた。
「間違えたのは仕方ないけど、よりによって砂糖と塩を間違える?
せっかくカンナにもらったトマトだったのに、無駄にしちゃって。
もうお腹もペコペコだわ!」
「すまない、すぐに作りなおす。」
そういって鍋のスープを捨てようとしたとき、副隊長のジンが飄々と制した。
「まあまあ、落ち着けって。ん….なるほど。確かに甘いわ。
でも、別にスープは作りなおさなくても、作り変えてもいいんじゃないか?」
「あまいトマトのスープを飲めってこと?」
「まあ、そういうスープも悪くないかもしれないだろ?
俺も早く食べたいし。」
「...あまいスープなんて、おいしいとは思えないんだけど。」
ジンのアドバイスもあり、スープを捨てるのは辞めた。
この世界で新鮮な野菜は貴重だ、廃棄するのは最適ではない。
普段はエグザスによって生み出された万能保存食という粉を食べることが多いだけに、やはり野菜や温かいスープを食べることは人間にとって満足度が高いらしい。
とはいえ、このままではただの甘いスープでしかない。何かアレンジを考える必要がある。
ふと、今回の調査での戦利品を思い出した。
「アキラ、すまないが今回の戦利品を見せてくれないか?」
「おお、いいけど。ゴコクジは墓ばっかりで大したものはないぜ?」
そういって見せてくれた中にいちじくと酢を見つけた。
トマト…クエン酸による、疲労回復効果。イチジク…豊富なミネラルによる、電解質の補給。そして、酢…酢酸による、血糖値スパイクの抑制。いや、これはスパイスだ。甘いスープに輪郭を作り味を際立たせる。
…これなら。サキが感じていた「焦燥」…つまり、空腹によるパフォーマンス低下を、解決できるはずだ。
「みんな、いちじくと酢をもらうぞ!」
「え、あとで食べようと思っていたのに。それ、私が見つけたのよ!」
「すまない、うまいスープにして必ず返す。」
「はぁ、失敗したらまた見つけてきてよね。」
サキに断わりを入れ、スープの改良に取り掛かる。
いちじくをちぎり、鍋に投入する。煮立たせた後に少量の酢も投入する。
「最悪な見た目してるけど、大丈夫?」
「ああ、きっと最高のスープになるはずだ!」
サキの問に自信をもって答えた。
体に染みる栄養素は必ずうまい。
うなぎや桃がそうであるように、トマトといちじくを混ぜたこのスープもうまいはずだ。
料理経験はないが、栄養素が味覚にもたらす効果は十分知っている。
あとは、味のバランスだが、それも酢によって整うはずだ。
「できたぞ!」
そういって皆にスープをふるまった。
「最初に食べるのはちょっと勇気がいるわね。」
「そう言わず、冷めないうちに食べてみてくれ。」
内心ドキドキしていた。
甘いトマトのスープは本当にうまいのか?
私にはわからないだけに、緊張が走る。
「ん、案外おいしいかも!鉄屑にしてはやるじゃない。」
「確かにうまいな、甘いスープを飲むのは初めてだが、悪くない。」
「おう、うまいぞノア。これはなんて名前のスープなんだ?」
皆の感想に喜びを感じた。報酬系回路が活性化しているのを感じる。
初めての料理だったが上出来なようだ。自信がわいたあたりで、勢いづいて命名してしまう。
「ノア・スープだ!」
「名前がダサすぎるわ、前言撤回。まだまだかもね。」
「でも確かに、ノアにしか作れないスープだな!」
その後も意見は様々だったが、おおむね「おいしいスープ」を作れたとしっかり認識できた。
喜んでもらえてよかった、スープは得意料理にしよう。
野営の際も手軽に作れ、やはり満足度が高そうだ。
温かいスープは体温を高めることで、リラックス効果もあるらしい。
もっと改良を重ねなければ。
「ふう。ごちそうさま。
じゃあ、とりあえず食事はこのくらいにして、そろそろ行こうか。目的地へ。」
ジンはスープを飲みほし、そう言って立ち上がる。
各自、支度を始めた。
その手は手早いが、不安を感じていることがわかる。
どうやら今回の調査は簡単ではないらしい。
「気が重いわ。
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