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2.さあ、行くわよ!

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 そもそも私が婚約破棄に興味を持ったのは、幼い頃からルナーラお姉様とカミーラお姉様から色んな話を聞いていたからです。
「○○様と‪✕‬✕様が夜会で婚約破棄した」
とか、
「△△様と□□様が浮気した」
とかいう話を半年に1度ほど聞いていたのでこういう事は普通にある事なんだと思っていました。

 それが普通ではない事だと気付いたのは、本が読めるようになった8歳の頃です。何でもお姉様たちが通う学園では、恋愛結婚が流行していて、私の様に小さい頃に政略結婚の為の婚約を結んだ人たちが続々と婚約破棄をしているそうです。

その時、私は驚いて何度もお姉様たちに尋ねたものです。あの時のお姉様たちのやってしまったというような顔を今でも覚えています。

 そこから、私は2年間本を読みまくったり、お姉様たちにもっと深く話を聞いたりして知識をつけました。

 興味はなくなるどころか、どんどん大きくなってしまい、遂に声に出てしまったのです。


 「じゃあ早速、婚約破棄の準備を進めましょうか!」

 私がそう言うと、侍女は焦ったような顔をしてこう言います。

 「お嬢様、1度当主様に相談されてみてはどうでしょう…?」

 「確かに、お父様なら手伝ってくれるかも!」

 そうじゃなくて…という言葉が侍女の顔にでています。

 「これでやっと、私の願いが叶えられるわ!」

 「…そうですね。では、本日の夕食時に尋ねてみましょう。」

 おや、侍女も諦めて、協力してくれるようです。

 「うん!!」

 私は元気よく返事すると、さっそく紙とペンを取り出してこれからの計画を書き込んでいきます。

 「今日中にお父様に相談するとして…私が用意するべきものは…」

 ぶつぶつと独り言を唱える私の横で、侍女が私の大好きな紅茶を用意してくれています。

 この侍女、ヴェーラは私が生まれる前から侯爵家で働いていて、私が生まれた後はずっと私の世話をしてくれているので、私の事は家族と同じくらい理解しています。
 だから、私が今何を飲みたいかを分かっているのです。

「ありがとう、ヴェーラ!」

「光栄でございます」

お手本のような礼をしてヴェーラはそう言いました。
 私はその言葉にニコッと笑って計画をまた書き込んでいきます。


「よし、出来た!!」

 私がこう叫んだのは計画を書き始めてから2時間がたった5時頃でした。タイミングを見計らってお菓子を持ってきてくれたヴェーラを部屋に通し、夜ご飯が食べられるようにお菓子を食べ、気合いを入れます。

「さあ、行くわよ!」

 長い廊下を歩き、食堂の前でもう一度気合いを入れ直してから扉を開きました。
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