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意識は夢と現実を行ったり来たりしてるよう…
でも、夢の方が断然多いんだろうけど…
このまま、ずっと眠ってしまえば…死が訪れる…
誰にでも平等な死が…それでいい。
がさりと草の踏む音が遠くでする。
その音が徐々にこちらに近付いてくる気がして、顔を動かした…それだけでも痛みが出てしまう。
沈んでゆく陽を背に剛が俺を見つめておった。
「…剛…」
まさか…探しきるとは思ってなかった。
「やっと見つけた…光ちゃん…
ずっと探してたんだよ…」
そうだろうな…
あちこちに擦り傷をつけて、所々汚れがついている剛が自分の前にいた。
ぼろぼろになった剛はきゅっと俺に抱きついてきて、
「もぉ…一人でどこかに行かないで…
一人にはしないで…
一人ではずっと寂しかった、…
うっ…」
ぽろぽろと泣きながらそういう。
親と小さな頃にはぐれてしまったせいなのか、人一倍温もりを欲しがる剛…
でもそれは俺でなくてもいい筈や…正広君や家の皆も居る…
それに仲間達だって居るだろう。
「剛には他の猫等が居るだろう?」
俺の言葉に剛はふるふると左右に首を振る。
「…っ!
光ちゃんが傍に居てくれないとダメなの!」
まるで子供に戻ったかのような剛の頭をそっと撫でてやる。
「…お前は一人前の大人だ…
もぉな、俺が居なくても大丈夫だ…
信や健や…お前の周りの存在が助けてくれるから…」
こんな役立たずな存在の俺よりも相応しい奴が居る筈だ…
だから、このまま俺を休まさせてくれ…
痛みで顔の筋肉が動いているか判らないけど…微かに微笑んでやると、
「いやだよ!!
光ちゃん以外居ても…そんなのは何の手助けにもならないの。
必要なのは光ちゃんだけ…
光ちゃんの隣が僕の場所なんだから…」
必死になって剛がしがみつきながら言う。
俺は首をゆっくりと横に振る。
「違うぞ…それは。
お前の傍にはもっと相応しい奴が居るはずだ。
お前は先代のボス…小鉄の子供。
次のボスに誰よりも相応しい…」
優しく穏やかに剛に向かって言って、再度微笑んでやる。
「光ちゃん…
それやったら、僕が光ちゃんの傍に居る。
このままずっと一緒に居る。」
真っ直ぐに自分を見つめてくる剛…
「駄目だ…剛、お前は帰らなきゃいけないんだ…」
そう…こんな薄暗い寂しい場所じゃ無くて、日の当たる場所へ…
人と一緒に暮らせるような、優しい存在なのだから…
「まだだよ…
僕は光ちゃんから教わる事、沢山あるの。
それを教わってないのに…帰れる訳ないでしょう?」
必死になって言う剛に絆されそうだ…
「俺は全てお前に伝えた…
一人で生きて行く術も何もかも…」
ポンポンと剛の頭を撫でてやると、剛は顔を上げ、きっときつく睨み付けながら左右に首を振る。
「あるの…
教えてもわなくちゃいけない事が…」
教えること…既に全て教えた筈なのに…
もしかしたら…俺が側に居てもいいっていう剛の嘘なのか?
自分は側にいてもいいのか。
剛の側に…
「光ちゃんが好きなの。
だから一緒に帰ろう?
こんな寒くて暗い場所やなくて…ねぇ?」
思わず悩んでしまった俺に向かって、剛は首を傾げて再度尋ねてくる。
「皆を…呼んでもいい?」
剛の言葉に…本当に帰っていいのか…悩んでしまう。
フルフルと首を左右に振る…
いや…今更、帰らなくてもいい。此処で眠ってしまった方が剛の為にもいいんだ。
最初は辛いかもしれへんけど…時間が傷を癒してくれる。
「こぉちゃん…
浩輔君もこぉちゃんの帰り待ってるよ?」
堂本浩輔…俺がこの付近に来て、優しく家に迎え入れてくれた…二度目の主人…顔を一度でも見てから…別れるつもりだったのに…
こんな状態になってしまって…行く事ができなかった。
前の主人よりも…俺を大切に育ててくれた。信頼してなかったけど…どの猫やつにでも餌をくれる優しい人。
そして…剛が住んでいる家の人達も…
ふと思い出した…小鉄の言葉が…
『死にたいのか、お前?
生きていれば…その内、良かったって思えることが…またあるさ。
死んだら無だ…何も無い…終わり…
ただそれだけだ。
それでもいいっていうのなら、死ねばいい。』
あの時…俺は生きたかった…だから、小鉄の言葉に反射的に身体を起した。
まだ俺は生きててもいいのか?
…この後、何か良かったと思える事が残ってるんだろうか…
今…此処で俺が死んだらきっと剛が苦しむ…
目の前にまで迎えに来て、ずっと一緒に居たいと言ってくれた剛が…こんな場所で、傷だらけな剛を放っておく訳にもいかないし…
不意にあの時と状況が被ってしまう…小鉄もどちらかと言えば、悲しげな表情で俺をじっと見てたな…こんな所が親子なんだろうな…
小鉄も情に深いやつやだったから…
でも、夢の方が断然多いんだろうけど…
このまま、ずっと眠ってしまえば…死が訪れる…
誰にでも平等な死が…それでいい。
がさりと草の踏む音が遠くでする。
その音が徐々にこちらに近付いてくる気がして、顔を動かした…それだけでも痛みが出てしまう。
沈んでゆく陽を背に剛が俺を見つめておった。
「…剛…」
まさか…探しきるとは思ってなかった。
「やっと見つけた…光ちゃん…
ずっと探してたんだよ…」
そうだろうな…
あちこちに擦り傷をつけて、所々汚れがついている剛が自分の前にいた。
ぼろぼろになった剛はきゅっと俺に抱きついてきて、
「もぉ…一人でどこかに行かないで…
一人にはしないで…
一人ではずっと寂しかった、…
うっ…」
ぽろぽろと泣きながらそういう。
親と小さな頃にはぐれてしまったせいなのか、人一倍温もりを欲しがる剛…
でもそれは俺でなくてもいい筈や…正広君や家の皆も居る…
それに仲間達だって居るだろう。
「剛には他の猫等が居るだろう?」
俺の言葉に剛はふるふると左右に首を振る。
「…っ!
光ちゃんが傍に居てくれないとダメなの!」
まるで子供に戻ったかのような剛の頭をそっと撫でてやる。
「…お前は一人前の大人だ…
もぉな、俺が居なくても大丈夫だ…
信や健や…お前の周りの存在が助けてくれるから…」
こんな役立たずな存在の俺よりも相応しい奴が居る筈だ…
だから、このまま俺を休まさせてくれ…
痛みで顔の筋肉が動いているか判らないけど…微かに微笑んでやると、
「いやだよ!!
光ちゃん以外居ても…そんなのは何の手助けにもならないの。
必要なのは光ちゃんだけ…
光ちゃんの隣が僕の場所なんだから…」
必死になって剛がしがみつきながら言う。
俺は首をゆっくりと横に振る。
「違うぞ…それは。
お前の傍にはもっと相応しい奴が居るはずだ。
お前は先代のボス…小鉄の子供。
次のボスに誰よりも相応しい…」
優しく穏やかに剛に向かって言って、再度微笑んでやる。
「光ちゃん…
それやったら、僕が光ちゃんの傍に居る。
このままずっと一緒に居る。」
真っ直ぐに自分を見つめてくる剛…
「駄目だ…剛、お前は帰らなきゃいけないんだ…」
そう…こんな薄暗い寂しい場所じゃ無くて、日の当たる場所へ…
人と一緒に暮らせるような、優しい存在なのだから…
「まだだよ…
僕は光ちゃんから教わる事、沢山あるの。
それを教わってないのに…帰れる訳ないでしょう?」
必死になって言う剛に絆されそうだ…
「俺は全てお前に伝えた…
一人で生きて行く術も何もかも…」
ポンポンと剛の頭を撫でてやると、剛は顔を上げ、きっときつく睨み付けながら左右に首を振る。
「あるの…
教えてもわなくちゃいけない事が…」
教えること…既に全て教えた筈なのに…
もしかしたら…俺が側に居てもいいっていう剛の嘘なのか?
自分は側にいてもいいのか。
剛の側に…
「光ちゃんが好きなの。
だから一緒に帰ろう?
こんな寒くて暗い場所やなくて…ねぇ?」
思わず悩んでしまった俺に向かって、剛は首を傾げて再度尋ねてくる。
「皆を…呼んでもいい?」
剛の言葉に…本当に帰っていいのか…悩んでしまう。
フルフルと首を左右に振る…
いや…今更、帰らなくてもいい。此処で眠ってしまった方が剛の為にもいいんだ。
最初は辛いかもしれへんけど…時間が傷を癒してくれる。
「こぉちゃん…
浩輔君もこぉちゃんの帰り待ってるよ?」
堂本浩輔…俺がこの付近に来て、優しく家に迎え入れてくれた…二度目の主人…顔を一度でも見てから…別れるつもりだったのに…
こんな状態になってしまって…行く事ができなかった。
前の主人よりも…俺を大切に育ててくれた。信頼してなかったけど…どの猫やつにでも餌をくれる優しい人。
そして…剛が住んでいる家の人達も…
ふと思い出した…小鉄の言葉が…
『死にたいのか、お前?
生きていれば…その内、良かったって思えることが…またあるさ。
死んだら無だ…何も無い…終わり…
ただそれだけだ。
それでもいいっていうのなら、死ねばいい。』
あの時…俺は生きたかった…だから、小鉄の言葉に反射的に身体を起した。
まだ俺は生きててもいいのか?
…この後、何か良かったと思える事が残ってるんだろうか…
今…此処で俺が死んだらきっと剛が苦しむ…
目の前にまで迎えに来て、ずっと一緒に居たいと言ってくれた剛が…こんな場所で、傷だらけな剛を放っておく訳にもいかないし…
不意にあの時と状況が被ってしまう…小鉄もどちらかと言えば、悲しげな表情で俺をじっと見てたな…こんな所が親子なんだろうな…
小鉄も情に深いやつやだったから…
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