おまけってやっぱりお得よね。とごまかして、この世を渡って行くのは立派な処世術

たまとら

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おまけはつらいよ

2

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おおおぉぉぉぉぉっ‼︎

轟音で空気が揺れた。

「成功だぁ!」

「なんだっ?二人いるぞぉ!」

そんな声を聞きながら雄太は蹲っていた。
富○急の高飛車に乗った後のように、血の気が引いたような虚脱感がある。

いきなり景色が変わってびっくりした。
ヤの付く人にヘンな薬でもキメられたのかと一瞬思った。
ぺったん座りしている床は冷たい石で体温を奪っていく。
腕に重さと温かさがあって、隣を見ると腕を掴んだままの綺麗なお兄さんがいた。
訳がわからないけど一人じゃなくてほっとした。

恐る恐る顔を上げると眩しい。
高い吹き抜けの天井には窓が等間隔に並んで、そこから光が真っ直ぐに降ってくる。
その強い光で周りが影になっている。
その暗闇の中で沢山の人が蠢いていた。

「神子様はどちらだ‼︎」

仁王立ちする男が光の中に聳える。

「王子!お待ちください」

闇の中で白や黒の影が揺れ動く。

男は光を浴びて蜂蜜のような金の髪をテカリと反射した。

「私はこの国の第一王子コルレオニス。
我が国に張られている結界が崩れてきている。結界が無くなると忌まわしき物どもが侵入して民を脅かす。
為に神の秘術によって神子を召喚させて頂いた。我が国を救って下さる神子様はどちらだ⁉︎」

ノンブレスの長ゼリフとその西洋系の顔立ちに雄太はぽかんと口を開けた。
隣で腕にしがみついていた綺麗なお兄さんも驚いたように顔をあげる。
王子はその顔を見て、がっと目を見開いた

音が消えた。
わぁだのおおぉだの叫んでいた沢山の声がピタリと止まった。
ゴクリと唾を飲み込む音があちこちで起こる。

「……神子…ですか?」

ウィスパーボイスが音の消えた空間にくっきりふわりと広がった。

見回さなくてもわかる。
全ての視線がお兄さんに集中だ。
光のシャワーの中でプラチナシルバーは発光してる様にみえる。
ホコリのキラキラが辺りに踊って、そりゃもう神々しさ100%だった。

うん。うん。わかってるぜ。
皆んながお兄さんに見惚れてるぜ。
どっちが神子だと聞かれたら100人中100人がこっちだと言うにきまってる。
(勿論100人のうちの1人は自分だ)

雄太は平凡な中坊だ。
チャリ通で日焼けしてテッカテカだ。
髪は1000円カットで済ませてる。
神子って言うより坊主ってカンジだ。

神子様なんて摩訶不思議な単語で理解した
最近TVでやってるモニタ○ングとかのドッキリ番組だ。
綺麗なお兄さんは芸能人なんだ。

雄太はキョロキョロ見渡した。
デカくて立派な教会に、外国人のキャスト。わあわあ騒ぐエキストラも沢山だ。
これすっごくお金の掛かったドッキリだ。
『異世界でこの世を救ってくださいと言われたら』的なドッキリだろうな。

ーー驚いてなんかやるもんか。
ネタバレして笑い物になるなんて真っ平だ。



王子に手を取られて立ち上がったお兄さんは斗真と名乗った。
「私でよかったら力を尽くします」と湧き起こるスタンディングオベレーションに笑顔で返している。

ちょっと待ったぁ‼︎

「僕はあと10日で高校の入学式なんで忙しいです!」

忙しいからこんなドッキリにかまってられません!と言う宣言だ。

王子の周りの人達はギョッとした様に目を見開いて睨みつけて来た。

「斗真様は助けて下さると仰ってるのに、貴方は拒否なさるのですかっ!」

光に目が慣れてみると、そのホールには沢山のひとがいた。
一斉にこっちを睨みつけている。

雄太は普通の中坊だ。
純度100%の悪意の集中なんか味わったことは無い。そのギリギリする鋭さに、ひうっと息をのむ。王子なんか虫を見る様な目を向けてきた。
いや、過剰演技では、

動きの止まった時間の中で鳶色の髪の人が動き出した。
そっと膝をついて雄太と目を合わせた。
「まぁまぁ、とにかく神力を測定いたしましょう。」視線の圧を遮る様にして立たせてくれた。
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