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おまけはつらいよ
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ノック音と同時に黒いのがドヤドヤと雪崩こんだ。どうぞの言葉を発する前だったから、ノックの意味無いやんか!と雄太は思った。
オウルさんと側仕えの人達は瞬時に雄太を囲む。
黒い服を着たガタイのいい男達が何も言わずに入り込むと、卓球ラケットぐらいの虫眼鏡を翳しながら歩き始めた。
「失礼でしょう‼︎シークヴェルト様のヴィラです!敬意を払いなさい‼︎」
「神子様が全てに優先される。呪術や害意の魔道具を捜索してからだ。」
そんな声を聞きながら雄太はドキドキした。コレってアレだ。黒い強面のハンターがどどどっと出て来て、捕まったらやべぇ事になるって人達だ。そんな人達に物言いできるなんて、オウルさん達凄い。
しかも後からゆっくり入って来た一際デカくてゴツい金髪碧眼は、こっちをまんじりともせず睨んでくる。圧がダダ漏れだ。
その世紀末覇王的な雰囲気は、こっちがひでぶっ!と叫んで倒れなければいけない気にさせた。って、怖い‼︎
そんな緊張感の中で、ばっと両脇に寄った黒い強面の間から眩しい白いのが走り込んで来た。
「雄太くん、久しぶりぃ♡」
斗真さんだ。
純白でびっしり刺繍のされた服を着て満面の笑顔だ。
やばい。なんか色気が増している。
オウルさん達がハッとして礼をとるのを、いいから!と手で制して雄太にきゅっと抱き付いた。
黒い強面達から声の無いどよめきが起こる
「倒れたから心配してたんだよ。元気になって良かったぁ」
すんげぇいい匂いにフリーズした雄太を引き摺ってソファに隣り合って座ると、斗真は手を握り締めた。
げふっ。黒さん達の視線が刺さる。
「ずっと心配で、会いたいって言ってたんだ。やっと会えて良かったぁ」
そのうるうるした目に雄太は感極まった。
自分を。この世界で知り合いもいないこんな自分を。人心配してくれてる人がいた…
ツンと鼻が痛い。
喉が塞がれてヒクヒクする。
堪えきれずに、涙がダムの放水の様にぼろぼろぼろぼろこぼれ落ちた。
よしよしと言いながら雄太の頭は抱え込まれた。おおぉっと、堪えきれない野太い声が聞こえる。
頬には柔らかくてしなやかな生地とゴツゴツした刺繍が当たってくる。
でもそれよりも温かくて何処か懐かしいモノが流れ込んできた。
じんわりと臍のあたりにそれが落ちて溜まっていく。暖かい、落ち着く。
そう、今日は斗真さんがお見舞いにとやって来る日だった。ようやく起き上がれるようになったので、会える事になった。
シークヴェルト大司教の神殿の部屋はヴィラのように一棟丸ごとで、建て売りだった実家よりもデカくてサイズは小学校に近い。
雄太はそこに部屋を貰っている。
オウルさん達に身綺麗にされて、サロンで待っていたら、いきなり護衛の神兵達に踏み込まれた。
そりゃ世界で一人の皆んなのアイドル神子様に、何かあっちゃ大変だとも。
でもその威圧感溢れる姿と驚きと心細さになんか感情が振り切っちゃって、雄太はしばらく泣いていた。
落ち着いた雄太と『二人だけで話したい』と言ったら、黒い神兵の空気がぎっと尖った。ひいぃぃ!とビクッとした。
「もお、辞めてヨォ。グロッシュったら。雄太くんが怖がっちゃうじゃない」
さすがヤの予備軍をスルーできるハートの強さを持ってる斗真さんだ。
これっぽっちも怯む事なく世紀末覇王様に唇を尖らせた。
しのごのごねる強面達が微妙にデレてるのは、何というかむしろ怖い。
斗真さんは神子様として部屋の外で待機させると、スマホみたいのを取り出した。
簡易型の防音魔道具だという。
言われるままに力を入れると、キィンと空気が鳴った。
聞き耳をたてる心配が無くなると、斗真さんは真っ直ぐに雄太を見つめた。
「ねぇ、君は神子になりたい?」
オウルさんと側仕えの人達は瞬時に雄太を囲む。
黒い服を着たガタイのいい男達が何も言わずに入り込むと、卓球ラケットぐらいの虫眼鏡を翳しながら歩き始めた。
「失礼でしょう‼︎シークヴェルト様のヴィラです!敬意を払いなさい‼︎」
「神子様が全てに優先される。呪術や害意の魔道具を捜索してからだ。」
そんな声を聞きながら雄太はドキドキした。コレってアレだ。黒い強面のハンターがどどどっと出て来て、捕まったらやべぇ事になるって人達だ。そんな人達に物言いできるなんて、オウルさん達凄い。
しかも後からゆっくり入って来た一際デカくてゴツい金髪碧眼は、こっちをまんじりともせず睨んでくる。圧がダダ漏れだ。
その世紀末覇王的な雰囲気は、こっちがひでぶっ!と叫んで倒れなければいけない気にさせた。って、怖い‼︎
そんな緊張感の中で、ばっと両脇に寄った黒い強面の間から眩しい白いのが走り込んで来た。
「雄太くん、久しぶりぃ♡」
斗真さんだ。
純白でびっしり刺繍のされた服を着て満面の笑顔だ。
やばい。なんか色気が増している。
オウルさん達がハッとして礼をとるのを、いいから!と手で制して雄太にきゅっと抱き付いた。
黒い強面達から声の無いどよめきが起こる
「倒れたから心配してたんだよ。元気になって良かったぁ」
すんげぇいい匂いにフリーズした雄太を引き摺ってソファに隣り合って座ると、斗真は手を握り締めた。
げふっ。黒さん達の視線が刺さる。
「ずっと心配で、会いたいって言ってたんだ。やっと会えて良かったぁ」
そのうるうるした目に雄太は感極まった。
自分を。この世界で知り合いもいないこんな自分を。人心配してくれてる人がいた…
ツンと鼻が痛い。
喉が塞がれてヒクヒクする。
堪えきれずに、涙がダムの放水の様にぼろぼろぼろぼろこぼれ落ちた。
よしよしと言いながら雄太の頭は抱え込まれた。おおぉっと、堪えきれない野太い声が聞こえる。
頬には柔らかくてしなやかな生地とゴツゴツした刺繍が当たってくる。
でもそれよりも温かくて何処か懐かしいモノが流れ込んできた。
じんわりと臍のあたりにそれが落ちて溜まっていく。暖かい、落ち着く。
そう、今日は斗真さんがお見舞いにとやって来る日だった。ようやく起き上がれるようになったので、会える事になった。
シークヴェルト大司教の神殿の部屋はヴィラのように一棟丸ごとで、建て売りだった実家よりもデカくてサイズは小学校に近い。
雄太はそこに部屋を貰っている。
オウルさん達に身綺麗にされて、サロンで待っていたら、いきなり護衛の神兵達に踏み込まれた。
そりゃ世界で一人の皆んなのアイドル神子様に、何かあっちゃ大変だとも。
でもその威圧感溢れる姿と驚きと心細さになんか感情が振り切っちゃって、雄太はしばらく泣いていた。
落ち着いた雄太と『二人だけで話したい』と言ったら、黒い神兵の空気がぎっと尖った。ひいぃぃ!とビクッとした。
「もお、辞めてヨォ。グロッシュったら。雄太くんが怖がっちゃうじゃない」
さすがヤの予備軍をスルーできるハートの強さを持ってる斗真さんだ。
これっぽっちも怯む事なく世紀末覇王様に唇を尖らせた。
しのごのごねる強面達が微妙にデレてるのは、何というかむしろ怖い。
斗真さんは神子様として部屋の外で待機させると、スマホみたいのを取り出した。
簡易型の防音魔道具だという。
言われるままに力を入れると、キィンと空気が鳴った。
聞き耳をたてる心配が無くなると、斗真さんは真っ直ぐに雄太を見つめた。
「ねぇ、君は神子になりたい?」
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