おまけってやっぱりお得よね。とごまかして、この世を渡って行くのは立派な処世術

たまとら

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おまけはつらいよ

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オウルさんはシークヴェルト様の実家から派遣された側仕えだった。
それも領地から出向した人だ。
つまり神殿の外を知ってる人で、パンがいくらだとか職種がどれだけあるか知ってる方だ。
この溢れる不信感とどうしていいのかわからない心細さに蓋をして、とにかく生きる術を探している雄太にとってドンピシャな先生だった。


斗真さんに「レベルが違うから一緒に学ぶのは難しいです」と言ったら、寂しいと涙ぐまれた。
今まで神子様を煩わせるなと睨んでいた周りが、グリンと手のひらを返して『神子様の無聊を慰め無いとは何事か』と言い出した。わけわかんない。
とりあえずしばらく共に学ぶ事になったけれど、雄太はマナーが必要な生活になるとは考えられなかった。寧ろ考えたく無い。
そして神への祈りの作法や祝詞を覚えるのを繰り返して、いや神殿で生きるの無理だわぁと思った。

神子様を泣かせたという噂は、悪事千里を走るって感じで広がった。
ヴィラから出ると、あっちからもこっちからもヘイト感が突き刺さる。
座学の部屋に行くまでに「来やがったなこの野郎」的な神兵に睨まれて凄く凄く居心地が悪い。


今日の座学は聖紋についてだった。
刈り込み的ショートおカッパでピンと髭を跳ね上げた先生だ、キャラが濃い。
魔道具を起動させると空中に虹色の絵が浮かんだ。先生はその紋をうっとり見てから、斗真さんにも蕩ける視線を投げた。(ちなみに雄太の挨拶はスルーだ)

先生が教鞭を指すと赤い色が紋に浮かぶ。

「この部分が世界の創造を」
ピシッ
「この部分があまねく光を」
ピシッ
「この部分にかぎりなき愛を」
ピシッ
と、部位ごとに説明していく。

よくわからない。

「この紋は完成しております。
この紋には一つの宇宙があるのです!」

なんか極まった先生が早口で神と紋章への賛美を捲し立てた。
唾を飛ばし、両腕を振るさせ、髭はピンピンとしなっている。そして目はギンギンとイッちゃってる。怖っ。
その目がグリンと雄太を捉えた。

「ここ!この部分ですよっ‼︎」

赤い点滅が紋章の下のちょんとハネた部分で瞬く。エマージェンシー?

「この部分が貴方に着いているのです‼︎」

ああ、ヘソのとこの聖紋ってそれかぁ。
なるほど爪の先ほどだぁ。
雄太のぽかんとに触発されて、先生の顔は赤くなっていく。
ギリギリと歯軋りの音がする。

「これっ!これが足りないばかりに神子様の聖紋は完璧では無いのです‼︎おかげでこの部分の時空への力が足りないのです!」

返せと目が言っている。
その熱気に怯んで辺りを見れば、黒い神兵もギラギラと睨んでいた。

そう言われてもなぁ…

返せるものなら返したいし。


おまけとしてついて来た。
神子様を泣かせた。
そんな雄太の噂に、"聖紋を盗んだ"が加わった。
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