白い結婚をしたら相手が毎晩愛を囁いてくるけど、魔法契約の破棄は御遠慮いたします。

たまとら

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結婚への道  レイト

2 分岐はずっと昔にあったし

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レイトは着せ替え人形となっている。
母様は"可愛い娘(義娘も可)ときゃっきゃうふふの買い物デート♡"と夢を見てたのに、産んだ3人は全て男だった。
しかも長兄は父親似のごっついマッチョで問題外。
次兄は自分に似た美形だったが醒めた目で完拒否タイプだったので、自然と自己主張少なめの末っ子がその役目を担っていた。
しかも今年はその末っ子を王都に連れて行けるのだ!
ずーっと誘っていたのにレイトは首を縦に振らなかった。
つまりこれは初・王都なのよっ!祝‼︎

舞い上がった母様の耳元でクレスト兄様が囁く。
「卒業祝いもありますから、コーディネートなさってくださいね」
悪魔だ、悪魔がいる。

長い馬車旅で尻が四つに割れたと思える程にクタクタになった。
でも母様は着替えたとたんに「行くわよっ!」と立ち上がり、父様はレイトと財布を黙ってさしだした。

知ってるか?
着せ替えってすんごく体力いるんだぞ。
ついでに精神力も削られるんだぞ。

マダム・ペネーネはお得意様にニッコニコだ。
超特急でお作りしますわん♡
着てお帰りになる為に既製品を手直しいたしますわねぇん♡
と、高級服を幾つも試着させた。

鏡の向こうにはわりと地味めな顔が、豪華でファンシーな服を見事に引き立てている。光沢のあるサーモンピンクで、襟や袖にアイボリーのレースが添えられていてびっしり刺繍がされている。
重い。
高級服は戦闘服だって誰かが言ってたが、とりあえず拘束物であるようだ。

「可愛いわぁ♡」

はしゃぐ母様の視力と頭が心配。
でも何故か付いてきたクレスト兄様も、うんうんと頷いている。
そして鬼の目にも涙…なんかうるうるしている。
大きくなったなぁと言うクレスト兄様に、へにゃりと全面降伏の笑いを見せた。

クレスト兄様の腹黒バリアが強くなったのはレイトのせいだ。
兄様は決して認めないけれどレイトはわかってる。
そして兄様のおかげで自分はなんとか生きて行けるのだ。
その有り難さはマリアナ海溝よりも深く感じて感謝している。


レイトは困った子供だった。
産まれた時からレイトの周りには色が溢れていた。
母様の愛情、兄様同士の小競り合い、メイドの癇癪。
それは桜色だの蜜柑色だの錆色だのと人の周りで瞬いていた。
それは人の心だとわかった。
隠してもじっと見ると丸見えだった。

しかも窓からやって来る真珠色の光の玉が「井戸端でケンとメリーがキスしてた」とか「今度の行商人は釣り銭を誤魔化すね」と囁いてくる。
そのことをうっかりと無邪気に発言するたびに使用人達は引いていく。

多分賢いクレスト兄様はすぐに悟った。
ある日兄様の周りは白金で反射する壁が築かれて、一才の色が読めなくなった。
レイトは拒絶されたとショックを受けた。
それまで猫っ可愛がりしていた兄様の拒絶が凄く悲しかった。
それでなくてもレイトの近くだと使用人達が濁った沼の色になるのだ。
使用人達にとってレイトは、得体の知れない怪物に見えていたのだと思う。

レイトはどうしていいのかわからなかった。
困っているのに見ないふりも出来なかった。

だから3歳の時に言ってしまってのだ。


夕食のスープを給仕するマリーは消し炭と茄子がどろどろと混ざった色だった。

「あ~あ、今度こそ死んじゃうよぉ」
「ばっかみたいだよねぇ」

人に見えない光の玉がレイトの周りでクスクスと笑う。
マリーは娘のマゼリに鼠に使う毒を飲ませていた。死なない程度にちょっと。
病弱ですぐ具合の悪くなるマゼリを必死で看病するマリーは、同情されたり褒められたりするたびに橙色に瞬く。

「そのポケットの薬を使ったら、今度こそマゼリは死んじゃうよ」

ポツリと落とされたレイトの言葉は、部屋の中に波紋の様に広がった。

マリーのリンゴのように艶々した赤い頬は一瞬にして白くなり、スープのポットを投げ出してうずくまって叫んだ。

マリーはレイトが裁きを成す天の御使様に見えたらしく、金切り声を上げながら懺悔を捲し立てて転げ回った。
勿論あたりは阿鼻叫喚で、使用人達は悲鳴を飲み込んで立ち尽くしていた。
何故かばら撒かれたスープのキャベツの匂いを、レイトは強く感じた。
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