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結婚への道 レイト
3 懺悔と後悔は後からくる
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マリーの罪は実子へ何かを飲ませたというあやふやなものだ。
言うなれば主家の薬の横領罪とか、主家の食事に毒を混入できる恐怖とかだが、使用人達の嘆願で修道院に送られた。
こうしてレイトは困った子供から化け物へと進化した。
家族の色は案じるような竜胆色が混ざったが不動の愛で落ち着いている。
使用人達からは濁った苔の様な色が、敷地のあちこちからレイトを伺っていた。
その色は使用人から領民へと溢れる様に広がって、レイトの喉を塞いでいく。
後悔と動揺と孤立感に苛まれるレイトは、世界が息苦しくてたまらなかった。
だから濁った赤い殺意が自分に向かって来るのを黙って受け入れた。
「あんたなんか死んじまえっ‼︎」
吹き抜けの正面階段の上でマゼリに突き飛ばされた。
殺意の赤がぐにゃりと伸びて覆い被さって来るのを、レイトはほっと待った。
ふわりと浮遊する身体は、天井のシャンデリアを足下にして落ちていく。
ごめんなさい。
マゼリにこんな事をさせたのは僕です。
ごめんなさい。
階段からの落下の中でレイトは泣いていた。
痛みは灼熱のシグナルのようだ。
満遍なく駆け巡る痛みの中で気がついた。
ベッドの脇に人がいるのがわかった。
何もしなくても、目を開けなくても、その人が白金の壁を張っているのがわかる。
初めその壁を見た時拒絶だと思ったけど、色がわからないのは安堵と救いだった。
人の奥底がわからないのは、本当に嬉しい事だった。
「レイト起きた?」
「ねぇねぇ飛ぶのってどんな感じ?」
「一緒なら飛べるよぉ」
姦しい光の玉がぴるぴる声を挙げるのをレイトは何とも言えずに力を抜いた。
ぎしりとクレスト兄様が立ち上がる。
「お前達五月蝿いよ。」
え?と驚くレイトよりも光の玉達はひぃと叫んだ。
聞き取れないくらいの早口で言いたてながらあっけなく消えていく。
クレスト兄様はレイトに吸い口で水を飲ませた。
少し冷たい指先を、包帯まみれのおでこから頬へするりとおとす。
その目が生きてて良かったと言っていた。
気持ちの色が見えなくても、人の気持ちってわかるものなんだ。
「お前はちょっとやりすぎたようだね」
ギクッ!
なんか勇者とラスボスの会話じゃーん
そんなレイトの焦りを誤魔化すツッコミを歯牙にも掛けず、兄様は微笑む。
「これからのお前に選択肢は2つあるよ。
一つは記憶喪失となって、普通の子供としてやり直すこと。
一つはあの妖精どもを操って、国の情報を集める仕事に向かうこと。」
「妖精?」
「妖精。」
「…妖精なんだ…」
あれが妖精なんて知りませんでしたぁ…
頭を打って記憶を失くしたレイトに、周りは大慌てだった。
遠巻きにしていた使用人達も、子供らしいレイトに徐々に絆されていく。
レイトは色を出来るだけ見ないようにした。
誰にも構わず、誰とも距離をおいて何枚も猫を被っていく。
慣れてみたらソレはとても生きやすかった。
クレスト兄様は学校で状態を維持する魔道具を作って送ってくれた。
それはレイトの意識を白金の壁のように囲い、余計なものを遮断してくれる。
壁の中からは光の玉の声も遠い囁き声のようでとても落ち着いた。
そうしてレイトはようやく呼吸出来るようになった。
言うなれば主家の薬の横領罪とか、主家の食事に毒を混入できる恐怖とかだが、使用人達の嘆願で修道院に送られた。
こうしてレイトは困った子供から化け物へと進化した。
家族の色は案じるような竜胆色が混ざったが不動の愛で落ち着いている。
使用人達からは濁った苔の様な色が、敷地のあちこちからレイトを伺っていた。
その色は使用人から領民へと溢れる様に広がって、レイトの喉を塞いでいく。
後悔と動揺と孤立感に苛まれるレイトは、世界が息苦しくてたまらなかった。
だから濁った赤い殺意が自分に向かって来るのを黙って受け入れた。
「あんたなんか死んじまえっ‼︎」
吹き抜けの正面階段の上でマゼリに突き飛ばされた。
殺意の赤がぐにゃりと伸びて覆い被さって来るのを、レイトはほっと待った。
ふわりと浮遊する身体は、天井のシャンデリアを足下にして落ちていく。
ごめんなさい。
マゼリにこんな事をさせたのは僕です。
ごめんなさい。
階段からの落下の中でレイトは泣いていた。
痛みは灼熱のシグナルのようだ。
満遍なく駆け巡る痛みの中で気がついた。
ベッドの脇に人がいるのがわかった。
何もしなくても、目を開けなくても、その人が白金の壁を張っているのがわかる。
初めその壁を見た時拒絶だと思ったけど、色がわからないのは安堵と救いだった。
人の奥底がわからないのは、本当に嬉しい事だった。
「レイト起きた?」
「ねぇねぇ飛ぶのってどんな感じ?」
「一緒なら飛べるよぉ」
姦しい光の玉がぴるぴる声を挙げるのをレイトは何とも言えずに力を抜いた。
ぎしりとクレスト兄様が立ち上がる。
「お前達五月蝿いよ。」
え?と驚くレイトよりも光の玉達はひぃと叫んだ。
聞き取れないくらいの早口で言いたてながらあっけなく消えていく。
クレスト兄様はレイトに吸い口で水を飲ませた。
少し冷たい指先を、包帯まみれのおでこから頬へするりとおとす。
その目が生きてて良かったと言っていた。
気持ちの色が見えなくても、人の気持ちってわかるものなんだ。
「お前はちょっとやりすぎたようだね」
ギクッ!
なんか勇者とラスボスの会話じゃーん
そんなレイトの焦りを誤魔化すツッコミを歯牙にも掛けず、兄様は微笑む。
「これからのお前に選択肢は2つあるよ。
一つは記憶喪失となって、普通の子供としてやり直すこと。
一つはあの妖精どもを操って、国の情報を集める仕事に向かうこと。」
「妖精?」
「妖精。」
「…妖精なんだ…」
あれが妖精なんて知りませんでしたぁ…
頭を打って記憶を失くしたレイトに、周りは大慌てだった。
遠巻きにしていた使用人達も、子供らしいレイトに徐々に絆されていく。
レイトは色を出来るだけ見ないようにした。
誰にも構わず、誰とも距離をおいて何枚も猫を被っていく。
慣れてみたらソレはとても生きやすかった。
クレスト兄様は学校で状態を維持する魔道具を作って送ってくれた。
それはレイトの意識を白金の壁のように囲い、余計なものを遮断してくれる。
壁の中からは光の玉の声も遠い囁き声のようでとても落ち着いた。
そうしてレイトはようやく呼吸出来るようになった。
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