王宮侍従テミスの、愛と欲望のサスペンスな日常

たまとら

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周りの人々

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    【 一緒に働きませんか‼︎  】

よくあるセリフなのに、大文字のブチ抜きなので目を引く。

本当にこんな人ばかりなの?
パラダイスじゃん‼︎
と思うほどに美人ばかりがずらりと並ぶ。
満面笑顔で腕を組んでラインダンスしている姿のポスターは、正直マニアじゃなくても剥がされて持ち去られる程に需要があった。
(なんか作ったのが、古臭いおやぢ臭するけど)

しかもそこに
  ◎  寮あり
        ◎  食堂あり
        ◎  制服あり
        ◎  7日に1日公休あり
        ◎  残業手当あり
        ◎  有給制度あり
と、続いて
 
  「明るくホワイトな職場です♡」

となって、
従者(若干名)面接で
侍従(若干名)マナーの実技と筆記試験あり

なんてなってたら、釣られない訳ないでしょう!
と、自信満々に思ってた。

でもね集まらなかったの。
集まってもつまらなそうな奴等なの。

1- 字が読めない 
 (だから美人目当てにポスター持ってった)
2- 条件が有り難すぎて罠かと疑っている
 (多分こっちが多いのよね。きっと)

それでも衣食住という必要なものをカバーしてるから、人は来ると思ってた。


私は、自分の生活から脱却する為に必死になる子が欲しかったの。
私の後釜として鍛えて、人にも物にも通じる清掃のプロになるものが欲しかったの。



最近、王宮はつまらない。
心浮き立つものが無い。

以前。
もっと貞節と恭順を前面に出してた貴族がいた頃は、ちょっとした嫉妬や愛がサスペンス劇場になって、心を震わせてくれた。

それが今の王がまだ王太子だった頃、"真実の愛"というものに天啓を受けて婚約破棄した事で、貴族社会はガタガタになった。

どれだけ尽くしても頑張っても。
いや、これ、違ったわ。
真実の愛じゃ無かったんだよねー
と、破棄されちゃうわけだ。
じゃ、頑張るなんて無駄じゃん‼︎と若い子は思い。
まぁ、スタンピードのように恋に走った。

我慢していた他人の恋人へとアプローチも、「え、これがきっと愛ってモノよ!」と主張してセックスする。
もう理性とかいうストッパーは無かった。

そして馬鹿な王様はその王太子を甘やかし、次にその王太子が王になってみたら。
あれ?ちょっと違いますけど…と思っても王宮は愛とセックスで染まっていた。

古いって言われるだろうけど。
愛や恋はこんなお手軽にセックスして。
じゃあね♡って別れるものじゃ無い。

◇◇伯は赤ちゃんプレイが好きとか、□□公はSMからすっかりスカトロセックスにハマったとか。
そんな、
それがどうした。
と、いうものしか噂にならない。

短絡的なセックスはもう便所感覚で。
愛とか欲望とかは、一番星の様に夜の初めにピカッと輝いて消えていく。

違うのよ。

私が欲しいのはもっときゅん♡として、どろどろして、わくわくするような愛なのよ。
気軽に交わって、愛だのなんだのほざかれたって。
獣と何処が違うっていうの。


王都で侍従に応募してくるのは、王宮で獲物を漁る肉食獣ばかり。試験なんてただの形骸。
力のある者の子息がその職をもぎ取っていく。

肉食獣の競い合いも。
喰われていく草食の坊ちゃん達にも興味が無い。


ここに来て王は自分の愚かさに目が覚めたようだ。
愛に真実は無い。
蜃気楼のように、掴めない自分だけがいる。

私もがっくりと座り込む。
友もふうっと背中を丸めている。

サスペンスは愛のスパイスよ。
噂はわくわくの原動力よ。
ソレが亡くなったら人に生きる希望は無いわ。


嫌だわ。
長く生きすぎたのかしら。
こんなに心が鈍いなんて。
感動が湧いてこないなんて。
これが腎虚っていうやつなのかしら。



求人のポスターは国中に貼られた。
文官がその募集期間と試験日を表にして提出してきた。

そうよ。
他の領よ!
お手軽セックスに染まった王都じゃなくて、田舎ならまだドキドキわくわくが残ってる筈だわ‼︎

私も貧乏貴族の三男だったから、その扱いは馬より低いのを知っている。
にっちもさっちも行かなくなった子が沢山いるはずだわ。そんな子が最後の希望の様に試験に来るはずよ!

私は執事長の静止を振り切って、試験官に同行した。



私の大好物な、思い詰めた目をして。
なんとも僻地な試験場にテミスは現れた。
なんとか笑顔を繕うとしていても、口が一文字になって揺れている。。
服は薄汚れて、街の平民の方がましだ。
それでもぐっと胸を逸らして顎を引いて。
田舎じゃ使うはずのない、正式な礼をとった。

まるで原石のように真っ直ぐな子。

心の底がごんごんと煮えたって釜鳴している。
退屈なんて、どこ?

私はこれから始まる楽しい時間に口元を緩めた。
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