【完】俺が"しり"を愛でるようになった、その訳とその記憶とその結果について

たまとら

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王宮の攻防

3 危機の正体

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帰りの引き継ぎを終えると、ユスフが無言の圧を投げて来た。
指を一本立てて、振る。
『ちょっと待て』のサインだ。
たとえ怪しくても、そのくらいの信頼はある筈だ。

イースタンは馬の前にレヴュトを乗せたまま。
と、いうか腕の間に凝ったまま。
ユスフの監視の視線の中に、貴族街の端へと馬を操った。
キョワラ男爵は学園で薬草学を教えていられた。
植物について研究をして、自費で研究所を作る老人だ。かつて領地の麦の改良のために話を伺ったことがある。
派閥に属さず。好きな事しか目に入らず。
いきなり伺っても門戸を開けて下さる人だ。

ユスフは黙って従ってくれた。


「どこでこれを?」

ハンカチから真珠の様に丸い小花が見える。
ペン先程の小ささなのに、甘い香りがする。

「これは"谷間の姫百合"と呼ばれる花です」

茎に丸い小花が並んで咲くという。
甘い香りは香水の原料となる。
高山地方に咲くけれど。
我が国では国境付近の高山でしか見た事が無い。

「可愛い花で御座いますが。生けてた花瓶の水を飲んだだけで致死致すほどの毒が御座います」

イースタンの隣でレヴュトがふるりともせずに聞いている。
勿論その姿は見えていない。
毒ときいて。影の様なレヴュトは、どんな顔をしているのか。当たり前だが、わからなかった。

口止めをして辞去する。
その頃にはユスフの目は、ぎらぎらと疑惑が溢れていた。

公園で馬を止める。
子供に小遣い銭を渡して馬の世話を頼み、ベンチに座る。
レヴュトは初めての公園にふるふると舞い上がり、歩き始めた。

割れた水の中の小花。
初めて見るソレはあんな小さいのに、香る。
そういえば、王宮があ甘て爽やかな香りがしだしたのはいつからだったっけ?
そのあたりから時々殿下は不調になられた様に思う。
いい香りだと馴染んで、日常になっていた。
水からソレが香っても当たり前になってはいなかったか…

取り止めない様なイースタンの話を、ユスフは真面目に聞いていた。

王太子が急死となれば、否応も無く、全てが捜査される。
ゆるゆると不調のままに弱っていかれたのなら、やむおえない病死という事になる。

イースタンはまずレヴュトの話を最初にしなかった。
何故花に目をつけたのかを言わずに、今の殿下の体調を考慮してもらった。
さがしても検出されなかった毒。
堂々と入れてあってもわからない毒。
その毒を使う犯人は誰か。
小花一つが水に紛れ込んでいたという事で、その犯人を糾弾出来るのか。

ユスフの目は理解してくれてる。
でも一番の疑問は、何故イースタンがわかったか、だ。

やむおえず、のろのろとレヴュトの話になった時。
ユスフは残念なモノを見る目でイースタンを見た。
だよね、幽霊が教えてくれたって…
言ってる自分だって、ちょっと残念な案件だ。
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