【完】俺が"しり"を愛でるようになった、その訳とその記憶とその結果について

たまとら

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王宮の攻防

10 帰ってくる約束

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手一つ握った事も無いけれど。(当たり前だ)
口付けした事も無いけれど。(当たり前だ)

俺たちの恋は終わった。

骨を実家に届けた時。
小さな家の壁には、よくあるブラウンの髪の子供が笑っている絵が掛かっていた。
こういう顔だったんだと感慨深くしげしげと見た。
あの美尻に比べて、しごく平凡な顔だったのに妙に納得した。

この絵の釣り書が届いても。
釣り書の山に埋もれて、選び出しはしないだろうなぁと思える平凡な顔だ。
そんな残酷な事を考えながらも。
どんな笑い方をするんだろう、とか。
一緒に歩く時は何を喋るんだろう、と考えていると。
なぜか目の前は滲んできた。

『生まれ変わります』
『急ぐから』
『好き』

そんな単語を書き散らかしながら、チャルは消えた。


ほら、俺は健康優良児。
いつだって臨戦態勢で。
いつだって出来る。
そんな自信がある訳で。

絵に描いた餅は食えない訳で。
体の健康の為にも、心の健康の為にも娼館に行く。

あっちからもこっちからも縁談と釣り書が舞い込む。
それらは全部お断りだ‼︎

ユスフは子煩悩おやぢに進化して、"家族はいいぞ"と言う。
早く忘れて結婚しろって事だよね。
そりゃいいだろうと思うけど。
俺には約束があるから。


王太子が御成婚なさって。
可愛いお子様が出来たんだけど。
おいおい。
生まれ変わって王太子の子供だったら、俺との身分も歳の差もあるから出来たら一般ピープルで生まれて来てくれよ。
と、心の中で突っ込むが当たり前だが返事は無い。
歳の差20はもう決まっているのだ。
俺ががっつり老け込む前に急いで生まれ変わって来て欲しい。

そんな事を考えて。
赤ん坊を見るたびにしげしげと見る。
もうロリコン変態の不審者だった。
そんな気持ちも時間が経つと落ち着いてきた。



ユスフが家飲みに誘ってきた。
ユスフの嫁は懐が深い。
子供は二人。
上の子はもう四歳になっている。
こっちを気遣っていたが、そろそろ落ち着いたかと声を掛けて来た様だ。

子供ってどんな土産がいいんだろう。
とりあえず菓子を見繕った。


家は緊張感が充満していた。
嫁も当人も喋らない。

イースタンの元に上の子がお盆を運んでくる。
そこには苺、葡萄、林檎がのってた。
~~飲みなのに、何故果物?

その子はユスフに似て天使の様に可愛い。
ふっくらしたほっぺに長いまつ毛をぎゅっと顰めて、ぷるぷる震えた。
なんか…既視感…?

その子の琥珀の様な目がぐっと見上げる。その小動物のような動きに、イースタンは目を見張った。

「チャル?」

喉が掠れて囁きにしかならない。
その子はふらふると小さく震え、そして眉を八の字にさげて泣いてる様に笑った。

チャル。
チャル!

イースタンは幼児を抱き上げた。
耳元で「なんかわかんなくって、言っていいのかわかんなくって。探してくれてるの聞いてたし、でも説明できなくて…」早口で焦った言葉が流れていく。

頬にちゅっと口付けをする。
何度も。
何度も。

「おいっ‼︎ それは早い!」

飛んで来たユスフの声は聞こえなかった。

手を握れるチャルがここにいる。
勿論成人までは大人のキスも出来ないが。
成人になっても、まだ好きでいてくれるのかわからないが。

チャルの琥珀が涙で揺れる。
ぎゅっと首に抱きつかれる。
くるくる回しながら、イースタンは幸せに酔いしれた。
新しい恋が今始まる。




     【 終わり 】


お読み頂きまして、ありがとうございました \(//∇//)\
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