断罪だとか求婚だとかって、勝手に振り回してくれちゃってるけど。僕はただただ猫を撫でたい。

たまとら

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リラクの最低な日々

2 ちょっとまったぁ!の求婚

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「王子!リラク様と婚約破棄なさるのでしたら、私がっ!どうぞ私にっ‼︎」

モーゼの海の様に、ざっと人が割れた。
その向こうには紺色のジャケットを着たイケメンが。
彼はカッ、カッ、と大股で近寄ると。
流れる様にリラクの前で片膝を着いた。

「リラク様。お慕いしております。
どうぞ私の心を受け取って下さい‼︎」

……不覚にもきゅん♡しちゃいましたぁ。
だって昨夜読んだロマンス小説みたいだもの。

リラクはちょっとお調子者で。
読んだ本や観たオペラに割と直ぐに影響される。


リラクの手をとるのはアシュバートン家のサダム様だ。王宮でもきゃあきゃあ言われるインテリクール系イケメンだ。
昔から第二王子の御学友の座を上手く手に入れて、そのまま側近へと登ってきた。
お茶会とかで気が付いたら、第二王子の周りにいた。
優しく真面目でクールだと評価は高い。

でも。
"いけすかない奴"とずーっと思ってなのに。
思わず"きゅん♡"しちまったって訳だ。


それにリラクはわかってた。
ここでNOと言ったら、全ての貴族を敵に回す。
(その最大は多分、父上だ)
もうこの国の貴族社会では生きて行けない。

貴族がダメなら、平民になれば良いんじゃな~い。
って思うが、第二王子の婚約者って肩書は、死んでも着いて回るだろう。
憐れみよりも報復が繰り出されるに違いない。

リラクの頭の中に、そんな計算と打算がパタパタと打ち出された。ちょっときゅん♡としたのもあって、
まあ、時間稼ぎになるかなぁ…と思った。

で、頷いた。


頷いた途端に、サダムががしりと抱き締めて良かったあ‼︎と大声でさけんだ。
おい、まてよ、いきなりのハグは…
そんな言葉は父上のハグで潰された。
会場の向こうから父上がとんできていた。
おめでとう!
おめでとう!
良かったね!
良かったね!
周りから上がる声に、取り囲まれているのを知った。
会場中の令息までもが笑顔で拍手している。
しまいには王様から祝いを言われて。
あ、仕組まれてた。と悟った。


第二王子はダンスホールの真ん中に立っている。
まるでスポットライトが当たってる様だ。
第二王子は腕をひろげて歌う様に話し出した。
ーーそう、オペラの様に。

「すまないリラク。お前は良くやっていた。
お前に落ち度はないが、瑕疵が無ければ婚約破棄を認めてもらえなかったのだ。」

な、ナニゆうとんですかぁ?

「今回の咎は、リラクの可憐さに惹かれて婚約者に指名してしまった私にある!
リラクとサダムは初めてあった時に惹かれあっていたのだ。王族への断りは反逆ともとられる。不敬だとも言われる。
可哀想に二人はその初恋を秘めていたのだ」

ああ、第二王子。
そんな長いセリフ、よう覚えましたねぇ。
リラクは現実逃避に心を飛ばした。

「勿論、私は悩んだ。王にも相談させて頂いた。そうしてこの結婚できる成人の儀に、リラクをサダムに返そうと決意したのだ」

会場中が歓声で湧いた。
王がリラクとサダムの婚約を宣言した。
今まで我慢していたのだから、と結婚式を一か月後というスピード指定された。

リラクは罠の口は閉じられた事を悟った。

抱き締めたリラクを見つめるサダムの琥珀色の瞳は
中心の虹彩にモスグリーンの闇を滲ませている。
サダムはにんまりと笑っていた。

……あ、こいつの目。

『なんか生理的に嫌‼︎』
と、ずっと思ってたのをたった今思い出した。

けど。

大ホールはリラクの"断罪"と"求婚"でジェットコースターのように揺さぶられて。
"初恋を貫く二人"に湧いた湧いたの初恋祭り状態が始まっていた。

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