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シーシャ・ヴェルバック
10 捕縛
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『リラク、元気かい。
お前が無事だと聞いて、私はとても嬉しいよ。』
そう始まった兄上の手紙は、花嫁が変わっていてびっくりしたけど訳があるんだろうと思った。と書かれていた。
『第二王子がいらっしゃった。
お祖父様の所にも尋ねられてらしたよ。
お前が見つからなくて、とても心配なさっていたよ。』
いやぁ。ない、ないっ‼︎
やっぱり隠れて正解だったな!
『リラクが相談出来ないような不甲斐ない兄でごめんね。
でもお前が望む道を応援するよ。
私は兄として、お前が大好きだ。』
てな事が書かれていて、リラクはうるうると胸が詰まった。
2枚目の紙に、農地を見聞して学ぶ為にしばらく王都の外の村を周遊する事になった。
ジャナビュー(西門からの街道沿いの村)にも行く、多分霜月の5日くらいから三日ほど。
"跳飛ノ角兎亭"に泊まるから、出来たら顔を見せておくれ。
とあった。
モロあやしい。
2枚目の紙は怪しすぎる。
薄い刃を熱してスッと払えば、封蝋を綺麗に開けれる。
そうやって筆跡を似せた2枚目を入れたんじゃないかな。
でもファーブ兄上は僕に繋ぎが付くことを信じてる。
長子としての仕事で見聞は良くある。
僕に会えると信じてたら、どうしよう。
兄上に会ってごめんねを言いたいし…
悩んだ末に、リラクは街道から外れて村に近寄った。
密かに宿とその周囲を探る。
でも怪しい者はいなかった。
逃げ出す用意をしながらも、そっと宿に行く。
跳飛ノ角兎亭は高級宿だった。
貴族がアバンチュールを愉しむ為の、王都の外の宿のようだ。
狭い入り口が人目や乱入を防いでいる。
でも中は広く、一階は平民の従者の食堂で二階はその宿になっている。
貴族はその奥の人工的な草原や森の中にコテージが幾つもあり、他人と生活空間を別けるためにそこに泊まるようだ。
貴族の従者もその控えの間に入るようだ。
フロントの美人に尋ねたら、
「ああ、あのぽっちゃりした方ですわね。
ちょうどお出かけですから、お待ち下さいな。」
と食堂のテーブルに案内してくれた。
思えば。
ぽっちゃりと言う言葉に、嵌ったんだと思う。
辺りに怪しい者はおらず。
ファーブ兄上の容姿もわかってる。
食堂にいる者は害意も悪意も無く、デイドに渡されていた道具に反応は無かった。
そこで気を抜いてしまった。
『情け無い。再教育ですね。』とデイドに特訓されるくらい、間抜けに気を抜いてしまったのだ。
そしてあり得ない失態をしてしまう。
にこにこと出されたお茶を飲みながら待ったのだ。
「本当の悪意は善意を使います。」
「善意は十人十色ですよ。貴方のそれと他の人は違います」
そんなデイドの言葉も、筋肉多めの脳みそにはちょっとしか残っていなかった。
人から見たらリラクは成人したばかりの未熟者でしか無いのに
「短絡的に家出した我儘な坊ちゃん」で
「苦労して探している兄さんを手助けして親御さんを安心させてあげたい」と思われる対象だった。
宿を借り切って人を雇って、金をばら撒く奴は正義の味方で。
さらに親御さんの為に我儘坊ちゃんを捕まえるという金看板を背負った人々は、当たり前だが善意しかない。
気が付いた時には、もう指先がふるふると震えていた。
椅子から立ちあがろうとしたら、力が出ずに床に転がった。
ドスッと響く音に、食堂の人が立ち上がる。
「いいかげん、帰ってあげなよ」
動けずに返事も出来ないリラクに、知らない商人が言った。
「ほら、向かいの宿から迎えの兄さんを呼んできな!」
フロントの美人が小僧を走らせる。
そして
「ありがとうございます」
薄れる意識の中で、護衛を引き連れた第二王子が満面の笑顔で宿に入ってきた。
お前が無事だと聞いて、私はとても嬉しいよ。』
そう始まった兄上の手紙は、花嫁が変わっていてびっくりしたけど訳があるんだろうと思った。と書かれていた。
『第二王子がいらっしゃった。
お祖父様の所にも尋ねられてらしたよ。
お前が見つからなくて、とても心配なさっていたよ。』
いやぁ。ない、ないっ‼︎
やっぱり隠れて正解だったな!
『リラクが相談出来ないような不甲斐ない兄でごめんね。
でもお前が望む道を応援するよ。
私は兄として、お前が大好きだ。』
てな事が書かれていて、リラクはうるうると胸が詰まった。
2枚目の紙に、農地を見聞して学ぶ為にしばらく王都の外の村を周遊する事になった。
ジャナビュー(西門からの街道沿いの村)にも行く、多分霜月の5日くらいから三日ほど。
"跳飛ノ角兎亭"に泊まるから、出来たら顔を見せておくれ。
とあった。
モロあやしい。
2枚目の紙は怪しすぎる。
薄い刃を熱してスッと払えば、封蝋を綺麗に開けれる。
そうやって筆跡を似せた2枚目を入れたんじゃないかな。
でもファーブ兄上は僕に繋ぎが付くことを信じてる。
長子としての仕事で見聞は良くある。
僕に会えると信じてたら、どうしよう。
兄上に会ってごめんねを言いたいし…
悩んだ末に、リラクは街道から外れて村に近寄った。
密かに宿とその周囲を探る。
でも怪しい者はいなかった。
逃げ出す用意をしながらも、そっと宿に行く。
跳飛ノ角兎亭は高級宿だった。
貴族がアバンチュールを愉しむ為の、王都の外の宿のようだ。
狭い入り口が人目や乱入を防いでいる。
でも中は広く、一階は平民の従者の食堂で二階はその宿になっている。
貴族はその奥の人工的な草原や森の中にコテージが幾つもあり、他人と生活空間を別けるためにそこに泊まるようだ。
貴族の従者もその控えの間に入るようだ。
フロントの美人に尋ねたら、
「ああ、あのぽっちゃりした方ですわね。
ちょうどお出かけですから、お待ち下さいな。」
と食堂のテーブルに案内してくれた。
思えば。
ぽっちゃりと言う言葉に、嵌ったんだと思う。
辺りに怪しい者はおらず。
ファーブ兄上の容姿もわかってる。
食堂にいる者は害意も悪意も無く、デイドに渡されていた道具に反応は無かった。
そこで気を抜いてしまった。
『情け無い。再教育ですね。』とデイドに特訓されるくらい、間抜けに気を抜いてしまったのだ。
そしてあり得ない失態をしてしまう。
にこにこと出されたお茶を飲みながら待ったのだ。
「本当の悪意は善意を使います。」
「善意は十人十色ですよ。貴方のそれと他の人は違います」
そんなデイドの言葉も、筋肉多めの脳みそにはちょっとしか残っていなかった。
人から見たらリラクは成人したばかりの未熟者でしか無いのに
「短絡的に家出した我儘な坊ちゃん」で
「苦労して探している兄さんを手助けして親御さんを安心させてあげたい」と思われる対象だった。
宿を借り切って人を雇って、金をばら撒く奴は正義の味方で。
さらに親御さんの為に我儘坊ちゃんを捕まえるという金看板を背負った人々は、当たり前だが善意しかない。
気が付いた時には、もう指先がふるふると震えていた。
椅子から立ちあがろうとしたら、力が出ずに床に転がった。
ドスッと響く音に、食堂の人が立ち上がる。
「いいかげん、帰ってあげなよ」
動けずに返事も出来ないリラクに、知らない商人が言った。
「ほら、向かいの宿から迎えの兄さんを呼んできな!」
フロントの美人が小僧を走らせる。
そして
「ありがとうございます」
薄れる意識の中で、護衛を引き連れた第二王子が満面の笑顔で宿に入ってきた。
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