断罪だとか求婚だとかって、勝手に振り回してくれちゃってるけど。僕はただただ猫を撫でたい。

たまとら

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シーシャ・ヴェルバック

12 恋って馬鹿になる

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結界の中という空間に、ミストのように白金のマナが立ち込めた。
それはキラキラと虹に煌いている。
徐々に充満していくソレは、後光のように見えて
シーシャをまるで人を超えた者のように見せていた。

第二王子はその中で、鉛色のマナを放っている。
妖しく蠢くソレが、真っ直ぐシーシャへと延びていく。
その目はただシーシャだけを見ていた。

……って、第二王子、マジ恋でしたか。

ちょっと、いやかなりリラクは引いていた。

どう考えても第二王子はマルっとSだと思ってた。
そして『好きな子をいぢめる』という子供特有のお約束だけで無く、そのSであの四阿があったんだと思ってた。
でもマジ恋で。そりゃ恋は問答無用、後先考えない物だけど。

ちょっと前までリラクだって、シーシャを嫋やかだと思ってた。
でも実物を見て、視野狭窄な自分と言うか思い込みマジックをめちゃくちゃ反省した。


ねぇ、見て。

あんたの目の前で殺気飛ばしてる美人シーシャ
あんたよりちょっと背ぇ高いし。
あんたより胸筋あるし。
きっと、確実に、あんたよりマッチョだよ。

やばい。
拗れた恋は問答無用だ。
願望補正が掛かって、現実が見えてない!

「シーシャ。こいつを助けたければ言う事を聞け‼︎」

第二王子は胸を張って、ばばーんと声を張った。

……。すまん。状況を見ろや。
何故この場でそれが言える⁉︎
護衛はいない。
僕は転がっていない。
殺気だった相手側の従者が居て。
相手側の結界が張られている。

馬鹿なの。ねぇ、馬鹿だよね。
って言うより恋は盲目って方面かもしれない。
シーシャ様しか見えてないのか!
興味が無いから護衛もリラクも目に入って無いのか。

なんか視線に哀れみが混じって、ふうっとなるリラクと隅に立つ先輩。
そしてその言葉にピキッとなったのは、シーシャだった。


互いのマナがざん、と湧き立つ。
そのぶつかり合いに煽られて、白金の髪が生き物のようにたわんだ。
鉛色が鞭のように唸りを上げて吹き付ける。
そのまま白金は高くおちる滝のように、額から肩を流れて踊る。
滝はつんとなだらかな鼻によって左右に分けられ
その左右の飛沫の中には水底のような縹色がある。
型のいい鼻の下には薄い紅色の唇が、ほころぶ花弁のように開いていた。
白い歯が少しのぞいた唇が、にいっと端をつりあげる。 

やばい。
綺麗だ。

ぼんやり見入るリラクよりも、その視線を向けられている第二王子はうっとりと立ち尽くしている。
ぐるぐると竜巻のように攪拌されたマナは鉛色の中に虹のように溶け込んで、絡まっていく。

リラクは声が出ないのを幸いだと思った。
溶け合ったマナが、二重映しのようにかさなって王子の身体に沁みていく。
目も鼻も口も耳も。毛穴の全てに取り憑くソレは気色悪かった。

ぬおぅと身体に消えていくマナに動かない第二王子。
そこに艶やかな笑顔のまま、シーシャが一歩前に出る。
ゆっくりともたげた両腕の先で、爪がちかりと光を弾いた。


え?

その指先が王子の金髪の中へ潜り込んでいく。
シーシャ様は鉛色に巻き付かれ、王子と共に白金に覆われている。

花弁のような唇が薄く開いた。
躑躅色の舌がその中に潜んでいる。
少し顔を横に倒して、キスの為に近づいていく。
王子の碧は悦びと情欲でぎとぎとひかり、顔が近づいていく。

リラクは身動き出来なかった。
叫びたいのに喉は震えない。

キス⁉︎

何故⁉︎

やめて、やめて、何故‼︎

僕のせい?
僕が捕まったから?

心が締め付けられて呼吸が荒くなる。


そんなリラクの前で二つの頭が合わさって、いった。
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