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王の帰還 2
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どしんどしんとした、ゆっくり歩く竜の振動に少しうとうとし始めたとき、左前の時計塔の陰で花火がずずんと大きな音をたてて弾けた。
半円の火の花が、建物の陰でドンと爆発する。
わっと人声が上がった。
王を振り返るが、表情を変えない。
無かったものとして進んで行く。
警護の兵が向かい。
……小さな竜の叫びが、シリンの心に届いた。
「王よ。竜が血を流しております。
私は逃げませぬ。行かせて下さい。」
シリンの声にラグナロワは小首を傾げる。
シリンは斎王としての笑を浮かべると、竜に声をかせた。
『止まりなさい、』
脳の奥に木霊するような声に、周りの赤鬼も青鬼も、王の乗る輿車竜すら、ゆっくり動きを止める。
輿の上に立ち上がると、左前にいる赤鬼竜の兵に声をかけた。
「台になりなさい。」
静かな声なのに良く通り、訓練に慣れた騎士は無駄な動きもなく、すっと竜から降りた。
王を振り返ってにっこり笑う。
「行ってまいります。」
兵めがけてゆっくり飛び上がると、兵の肩を足掛かりにとんと地上に降りた。
周りの兵と観衆も声を失い、動きを止める間を、すっと進む。
走っているわけではないのに、すすっと流れるように早い。
そのまま時計塔の脇に出る。
血と硝煙の匂いが満ちていた。
まだ残る煙が、目と鼻を刺激する。
そこに横倒しになって叫ぶ青鬼竜と縋りつく兵。
爆発に巻き込まれた人々が倒れていた。
遠巻きにしていた人々が、斎王に気づく。
ざわめきが収まって、耳が痛いほどの静寂が来た。
救護兵に怪我人を集めてもらう。
そこに近づくとゆっくり跪き、祈るように手を組んで、祝詞を唱える。
白銀の髪がふわふわと舞い上がり、シリンを中心に光が膨れ上がり、金粉をまきながら、ふんわりとひろがった。
観衆も、兵も声を無くして見守る中で、うめいていた怪我人が、起き上がってこちらを見た。
驚愕の目が、銀の斎王に注がれる。
それににこりと答えると、立ち上がって青鬼竜に近づく。
「いけません!痛みで我を忘れています!」
縋り付いて泣いていた兵が止めようとする。
青鬼竜はももから血を流して、牙をガシガシとかみならしている。
あぁ、痛いね。
ゆっくり近づくと手を翳す。
濁って血走っていた青鬼竜の目がシリンを捉えた。
「このままでは、もう脚が使えなくなります。」
涙でぐしゃぐしゃになった兵に呼びかける。
まだ若い。少年のようだ。
「この傷をすこし負う事は出来ますか。」
「もちろんです!半分でも、全部でも!バルドルは私の相棒です!」
真っ直ぐなその返答に心が満たされる。
「その心意気や良し!そなたのエネルギーを少し貰います。」
翳した手から緑に煌めく光が湧き上がり、竜と兵にまとわりつく。
ゼオライトの国民の前で、斎王はその神がかりの力を見せつけていた。
半円の火の花が、建物の陰でドンと爆発する。
わっと人声が上がった。
王を振り返るが、表情を変えない。
無かったものとして進んで行く。
警護の兵が向かい。
……小さな竜の叫びが、シリンの心に届いた。
「王よ。竜が血を流しております。
私は逃げませぬ。行かせて下さい。」
シリンの声にラグナロワは小首を傾げる。
シリンは斎王としての笑を浮かべると、竜に声をかせた。
『止まりなさい、』
脳の奥に木霊するような声に、周りの赤鬼も青鬼も、王の乗る輿車竜すら、ゆっくり動きを止める。
輿の上に立ち上がると、左前にいる赤鬼竜の兵に声をかけた。
「台になりなさい。」
静かな声なのに良く通り、訓練に慣れた騎士は無駄な動きもなく、すっと竜から降りた。
王を振り返ってにっこり笑う。
「行ってまいります。」
兵めがけてゆっくり飛び上がると、兵の肩を足掛かりにとんと地上に降りた。
周りの兵と観衆も声を失い、動きを止める間を、すっと進む。
走っているわけではないのに、すすっと流れるように早い。
そのまま時計塔の脇に出る。
血と硝煙の匂いが満ちていた。
まだ残る煙が、目と鼻を刺激する。
そこに横倒しになって叫ぶ青鬼竜と縋りつく兵。
爆発に巻き込まれた人々が倒れていた。
遠巻きにしていた人々が、斎王に気づく。
ざわめきが収まって、耳が痛いほどの静寂が来た。
救護兵に怪我人を集めてもらう。
そこに近づくとゆっくり跪き、祈るように手を組んで、祝詞を唱える。
白銀の髪がふわふわと舞い上がり、シリンを中心に光が膨れ上がり、金粉をまきながら、ふんわりとひろがった。
観衆も、兵も声を無くして見守る中で、うめいていた怪我人が、起き上がってこちらを見た。
驚愕の目が、銀の斎王に注がれる。
それににこりと答えると、立ち上がって青鬼竜に近づく。
「いけません!痛みで我を忘れています!」
縋り付いて泣いていた兵が止めようとする。
青鬼竜はももから血を流して、牙をガシガシとかみならしている。
あぁ、痛いね。
ゆっくり近づくと手を翳す。
濁って血走っていた青鬼竜の目がシリンを捉えた。
「このままでは、もう脚が使えなくなります。」
涙でぐしゃぐしゃになった兵に呼びかける。
まだ若い。少年のようだ。
「この傷をすこし負う事は出来ますか。」
「もちろんです!半分でも、全部でも!バルドルは私の相棒です!」
真っ直ぐなその返答に心が満たされる。
「その心意気や良し!そなたのエネルギーを少し貰います。」
翳した手から緑に煌めく光が湧き上がり、竜と兵にまとわりつく。
ゼオライトの国民の前で、斎王はその神がかりの力を見せつけていた。
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