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血の護り人
12 大事なものってやっぱ好き
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竜にとって、人間はゴミのような認識しか無い。
ただ自分の竜騎士は、初めて会った時から別格だ。
どんなに粗略に扱われても、ただ愛してしまう。
それが竜のありようだ。
反抗しようと殺気を出したとしても、竜は自分の騎士を傷つけ無い。
騎士を亡くした竜は、エサを食べずに衰弱死する事もある程だ。
混乱していたネティの頭の中で、激しい慟哭が木霊する。
あ、あ、ああぁぁ……と、苦悩に叫びながら、ザイル。ザイルと、声を上げてただただ泣き叫ぶ赤鬼竜。
その嘆きが、自分の内に向いていたネティの意識を周囲に向けさせた。
左肩をえぐられて、びくびく痙攣する黒い男。
ザイル! と、その名を叫ぶ竜。
ラゴウは、女王と自分の騎士が仲良しだと信じていた。
あんな叫びを上げるほど、拒絶されているとは思っていなかった。
そして女王を害しようとする男を、思わず攻撃してしまった。
我に帰ると、その男は自分の騎士で、自分の付けた傷で死のうとしている。
そう、自分がやったのだ。
ザイルが。
ザイルを。
自分が。
周りにいる者の意識が焼き切れそうなほどに慟哭している。
アキラの手をそっと退けると、よろよろとネティは立ち上がった。
途端、ももに後孔からぬるぬるとしたものが垂れていく。
その冷たさにぞくりと震えながら、ネティは足を踏み出した。
ラゴウ。
泣かないで。
ありがとう。
恐る恐る黒い男に近づく。
あの獣の様な目が、濁ってぼんやりと宙を見ている。
空いた口から赤いものがつっと垂れて、痙攣は止まらない。
アキラの静止する声がするけれど、止まらない。
止められない。
このままだとこの男は死に、ラゴウも死ぬ。
ゆっくり膝をつくと、えぐられた傷口に手を添える。
濃厚な血の匂いが暴力のように自分に迫る。
ゆっくり目を閉じて祈る。
命のありがたさに祈る。
自分の中で何かがふうわりと湧き上がって、暖かいものがくるくる周りながら広がっていく。
止めようとしていたアキラは動きを止めた。
ネティの体から柔らかい銀の光が広がっていく。
キラキラ瞬きながらネティの体を浸し、横たわる男の体を浸していく。
叫んでいたラゴウはごおぅっと息をはき、呆けたようにネティを見ていた。
そこにも癒しの光が広がって包み込む。
アキラと他の竜達は、ただただ見つめていた。
暖かい。
ザイルはうっとり思った。
あのびくびくと自分を突き上げる冷たさが無くなっていく。
焦点のあった目の前にネティの顔があった。
あの絶望感を昇華して、そこに上気した頬がある。
ふんわりした風に銀の髪を揺らしながら、慈愛を込めた目で自分を見ている。
何故助ける……。
そんな言葉があぶくのように浮かんだが、心地よさの中で消えていく。
千切れかけた腕の細胞が、ぐつぐつ音をたてながら手を繋いで塞がっていく。
痛みの意識は泡のように溶けて、うっとりした満足感だけが心を酩酊させていく。
流れた血のままに意識が薄れて、
ラゴウ、すまない。
と、つぶやきながらザイルは気を失った。
女王の力を目前に、竜達は首を垂れていた。
念話というには原始的なその意識の共有が、竜達の心をひとつにしていた。
女王の力の中にいる幸福感が、波動のように寄せては返す。そしてその波の中には、ネティに向けるアキラの心が熾火のようにあった。
ネティがゆっくり立ちあがる。
真っ直ぐにその眼差しをアキラに向ける。
阻害によるレイプ。
そんなもの、言い出すほどの値打ちも無い。
アキラはその柔らかな体をマントで包み、抱き上げた。
ただ自分の竜騎士は、初めて会った時から別格だ。
どんなに粗略に扱われても、ただ愛してしまう。
それが竜のありようだ。
反抗しようと殺気を出したとしても、竜は自分の騎士を傷つけ無い。
騎士を亡くした竜は、エサを食べずに衰弱死する事もある程だ。
混乱していたネティの頭の中で、激しい慟哭が木霊する。
あ、あ、ああぁぁ……と、苦悩に叫びながら、ザイル。ザイルと、声を上げてただただ泣き叫ぶ赤鬼竜。
その嘆きが、自分の内に向いていたネティの意識を周囲に向けさせた。
左肩をえぐられて、びくびく痙攣する黒い男。
ザイル! と、その名を叫ぶ竜。
ラゴウは、女王と自分の騎士が仲良しだと信じていた。
あんな叫びを上げるほど、拒絶されているとは思っていなかった。
そして女王を害しようとする男を、思わず攻撃してしまった。
我に帰ると、その男は自分の騎士で、自分の付けた傷で死のうとしている。
そう、自分がやったのだ。
ザイルが。
ザイルを。
自分が。
周りにいる者の意識が焼き切れそうなほどに慟哭している。
アキラの手をそっと退けると、よろよろとネティは立ち上がった。
途端、ももに後孔からぬるぬるとしたものが垂れていく。
その冷たさにぞくりと震えながら、ネティは足を踏み出した。
ラゴウ。
泣かないで。
ありがとう。
恐る恐る黒い男に近づく。
あの獣の様な目が、濁ってぼんやりと宙を見ている。
空いた口から赤いものがつっと垂れて、痙攣は止まらない。
アキラの静止する声がするけれど、止まらない。
止められない。
このままだとこの男は死に、ラゴウも死ぬ。
ゆっくり膝をつくと、えぐられた傷口に手を添える。
濃厚な血の匂いが暴力のように自分に迫る。
ゆっくり目を閉じて祈る。
命のありがたさに祈る。
自分の中で何かがふうわりと湧き上がって、暖かいものがくるくる周りながら広がっていく。
止めようとしていたアキラは動きを止めた。
ネティの体から柔らかい銀の光が広がっていく。
キラキラ瞬きながらネティの体を浸し、横たわる男の体を浸していく。
叫んでいたラゴウはごおぅっと息をはき、呆けたようにネティを見ていた。
そこにも癒しの光が広がって包み込む。
アキラと他の竜達は、ただただ見つめていた。
暖かい。
ザイルはうっとり思った。
あのびくびくと自分を突き上げる冷たさが無くなっていく。
焦点のあった目の前にネティの顔があった。
あの絶望感を昇華して、そこに上気した頬がある。
ふんわりした風に銀の髪を揺らしながら、慈愛を込めた目で自分を見ている。
何故助ける……。
そんな言葉があぶくのように浮かんだが、心地よさの中で消えていく。
千切れかけた腕の細胞が、ぐつぐつ音をたてながら手を繋いで塞がっていく。
痛みの意識は泡のように溶けて、うっとりした満足感だけが心を酩酊させていく。
流れた血のままに意識が薄れて、
ラゴウ、すまない。
と、つぶやきながらザイルは気を失った。
女王の力を目前に、竜達は首を垂れていた。
念話というには原始的なその意識の共有が、竜達の心をひとつにしていた。
女王の力の中にいる幸福感が、波動のように寄せては返す。そしてその波の中には、ネティに向けるアキラの心が熾火のようにあった。
ネティがゆっくり立ちあがる。
真っ直ぐにその眼差しをアキラに向ける。
阻害によるレイプ。
そんなもの、言い出すほどの値打ちも無い。
アキラはその柔らかな体をマントで包み、抱き上げた。
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