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城での生活

4 キャットファイト

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人差し指を揺らすと、ガルゼは礼をするように離れて行った。
いつでもどんな時でもガルゼの動きは美しい。

床に潰れていた金髪は、喚きながら起き上がった。
そしてこっちを指差す。
ぶんぶんと振り回しながら指を指す。

「なんだよ、お前‼︎
僕にこんな事してただじゃすまないぞっ!」

"人を指差してはいけません"キリルはそう教えられた人間だ。怒りをマグマのように内に溜めて、にっこりと金髪に向かう。

「あら、貴方はなのですか?」

「当たり前だ!前の領主夫人の弟で、伯爵の家の者だ!それに今の領主の大事な人だ!」

執事長が弟のところで頷き、大事な人のところで首を振った。


「ったく。
ちょっと目を離したら嫌らしく入り込むんだからな。
アルベルトがいないのはわかってるんだぞ。
いない隙に入り込んで、既成事実を作るつもりなんだろうけど、僕がいる限りそんな事許さないからなっ‼︎」

おやおや~。さっきの従者の"5日"といい"入り込む"といい、作為的な匂いがしちゃうよ?

執事長がなんとも言えない情け無い顔でこっちを見ている。
キリルはうんうんと、軽く目で頷いた。
コレが仕組まれたキャットファイトだとしても、貴方達への追求は後ほど。


「ネプラ様。"他家への訪問は使者を送ってから"と習いましたでしょう。学園での勉学が全く無駄になってしまいましたね」

キリルの毒は甘い。
御し易い方から崩していく。
その菫色の瞳に絡められて、ネプラは赤くなった。
金髪がムッとしてキリルに腕を振り上げる。
それを軽く掴むとくるりと後ろへステップを踏む。

ぐぎゃあっ‼︎

腕を捻られて金髪は濁音で叫んだ。
あ、さっきガルゼが固めてたのとは違う方。
優しいからね、僕。

「つまり貴方はアルベルト様の愛人というわけですね」

恋人と愛人。
似ているようで違う。
ぜんぜん違う。

それに気がついた金髪に、ことさら甘く囁く。
甘すぎて、蜜が垂れているようだ。

「はじめまして。
アルベルト様と夫夫ふうふになりました、キリルと申します。」

「はあぁぁぁぁっ⁉︎」

夫夫ふうふと言う単語に、ネプラも叫んでいる。

は本妻へ愛人が殴り込みをかけてきた…という認識でよろしいでしょうか?」

凄いな。
怒りで毛根が立って、髪が逆立ってるじゃないか。
金髪は肩越しに睨みあげながら怒鳴った。


「嘘つくなっ‼︎
まだやって来て5日も経ってないだろうがっ!
アルベルトを堕としてる筈はないっ!?
ここの領主夫人になるのは僕なんだからなっ!」


ふっふぅ~ん。
こぉんな生意気な奴。大好物さ‼︎
しかも目の前に赤い糸の端っこと端っこをくっつけあってる。って、…ハ・ラ・タ・ツ
徹底抗戦しちゃうからね。



"礼儀知らず"
"殴り込み"
という単語にネプラはすでに顔色が青より白い。
しかもキリルが公爵家だったと知っている。

おろおろと
「そ、それは…」とか
「ビーチェ、やめないか」
とか声を出してるのにチラ見もされてない。

そうだぞ。 
そうやっておろおろと優柔不断だから、学園でもナンパが成功しなかったんだぞ。
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