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パルスと愉快な仲間達 〜辺境〜
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ラースは猪の獣人だ。
家はアボット商会。
平民だけど割と大きな商会で、シーシュス領以外にも支店がある。
ラースは体が大きくて、鼻っ柱が強い。
町の年少組を仕切っていた。
領主んところのメテオはいい奴だ。
狼らしく、すばしっこくて足腰が強い。
悪戯好きな事も、いい感じだと思う。
俺とメテオが組むと、大概の喧嘩は負けない。
たまに子供を意味もなく怒鳴りつける馬鹿な大人にだって怯んだりしない。
俺とメテオは最高のペアだと思ってた。
~~あの日までは。
あの日、メテオの後ろに黒猫がいた。
はっとするような綺麗な子で。
ここら辺じゃ御目にかからない毛並みの良さだった。
その氷のむこうを覗き込むような透明な蒼色の目は、吸い込まれそうで。
思わずぼうっと見惚れた。
挨拶の声は小さい。
そのか細い声に、見惚れていた自分がハッとする。
軟派な自分にムッとして、振り切るように走り出す。
案の定、黒猫は遅れてきていた。
なんだよ。
弱っちい、こんな奴。
なんでデレデレとつれてんだよっ。
なんか今まで見たことのない顔してるメテオに、苛々した。
年長組になると、どこそこの犬獣人がいい尻してる。 だとか。
飯屋のうさぎ獣人が色っぽいとか、言い合っている。
つまり、そう言うことか?
だけど俺達はまだ年少組だ。
色気で割り込めるほど、俺の年少組はだらけて無いからな。
肩で息をする黒猫を脅しつける。
『おまえは捨てられたって、皆んなが言ってるぜ。』
そう言った時、黒猫は飛び掛かっていた。
年少者での立ち位置は初回で決まる。
おとなしく後をついてくる奴。
強い奴の腰巾着になる奴。
頭とタイマン張って、一目置かれる奴。
黒猫はもちろん、腰巾着だと思った。
こんな綺麗な奴なら、連れて歩くのも満更じゃないと思った。
だから。
殴っても向かってくる姿に、正直ビビった。
俺の拳は重い。
年長組にも通じるほどに。
ソレを脇腹に食らわしても向かってくる。
そして、その目……。
金色の焔が氷の蒼の中で燃えている。
初めて見る宝石のようで。
頭の芯がくらくらした。
もう、やめろよ!
心の中で叫びながら殴る。
俺の手をすり抜けながら黒猫が跳ぶ。
黒猫は四つ足で床に弾んで、こっちに向かってくる。
~~あぁ、綺麗だなぁ。
うん、止めたくない。
向かい合う、黒猫と俺だけの世界にうっとりする。
ぬるっ。
脇腹に拳を当てた時、何かがぬめった。
驚いて見ようと気を散らしたら。
黒猫はその隙を逃さずに俺の喉首に飛び付いた。
咽喉を取られたら完敗だ。
肩で息をしながら、冷たい目が俺を捕らえる。
『僕のママは色を売ったりしない。』
『悪いことはしていない。』
『僕は捨てられたわけじゃない。』
悪かった。
そう言いながら、ラースは深い悦びを感じていた。
自分でもそうと認識しない程に深い所で、ラースはパルスに膝をついていた。
こうして、生涯の下僕が誕生した。
家はアボット商会。
平民だけど割と大きな商会で、シーシュス領以外にも支店がある。
ラースは体が大きくて、鼻っ柱が強い。
町の年少組を仕切っていた。
領主んところのメテオはいい奴だ。
狼らしく、すばしっこくて足腰が強い。
悪戯好きな事も、いい感じだと思う。
俺とメテオが組むと、大概の喧嘩は負けない。
たまに子供を意味もなく怒鳴りつける馬鹿な大人にだって怯んだりしない。
俺とメテオは最高のペアだと思ってた。
~~あの日までは。
あの日、メテオの後ろに黒猫がいた。
はっとするような綺麗な子で。
ここら辺じゃ御目にかからない毛並みの良さだった。
その氷のむこうを覗き込むような透明な蒼色の目は、吸い込まれそうで。
思わずぼうっと見惚れた。
挨拶の声は小さい。
そのか細い声に、見惚れていた自分がハッとする。
軟派な自分にムッとして、振り切るように走り出す。
案の定、黒猫は遅れてきていた。
なんだよ。
弱っちい、こんな奴。
なんでデレデレとつれてんだよっ。
なんか今まで見たことのない顔してるメテオに、苛々した。
年長組になると、どこそこの犬獣人がいい尻してる。 だとか。
飯屋のうさぎ獣人が色っぽいとか、言い合っている。
つまり、そう言うことか?
だけど俺達はまだ年少組だ。
色気で割り込めるほど、俺の年少組はだらけて無いからな。
肩で息をする黒猫を脅しつける。
『おまえは捨てられたって、皆んなが言ってるぜ。』
そう言った時、黒猫は飛び掛かっていた。
年少者での立ち位置は初回で決まる。
おとなしく後をついてくる奴。
強い奴の腰巾着になる奴。
頭とタイマン張って、一目置かれる奴。
黒猫はもちろん、腰巾着だと思った。
こんな綺麗な奴なら、連れて歩くのも満更じゃないと思った。
だから。
殴っても向かってくる姿に、正直ビビった。
俺の拳は重い。
年長組にも通じるほどに。
ソレを脇腹に食らわしても向かってくる。
そして、その目……。
金色の焔が氷の蒼の中で燃えている。
初めて見る宝石のようで。
頭の芯がくらくらした。
もう、やめろよ!
心の中で叫びながら殴る。
俺の手をすり抜けながら黒猫が跳ぶ。
黒猫は四つ足で床に弾んで、こっちに向かってくる。
~~あぁ、綺麗だなぁ。
うん、止めたくない。
向かい合う、黒猫と俺だけの世界にうっとりする。
ぬるっ。
脇腹に拳を当てた時、何かがぬめった。
驚いて見ようと気を散らしたら。
黒猫はその隙を逃さずに俺の喉首に飛び付いた。
咽喉を取られたら完敗だ。
肩で息をしながら、冷たい目が俺を捕らえる。
『僕のママは色を売ったりしない。』
『悪いことはしていない。』
『僕は捨てられたわけじゃない。』
悪かった。
そう言いながら、ラースは深い悦びを感じていた。
自分でもそうと認識しない程に深い所で、ラースはパルスに膝をついていた。
こうして、生涯の下僕が誕生した。
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