駆け落ちの後始末を、僕らに求めるのはマジ勘弁して欲しい

たまとら

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王都事変

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ルザの樹海より親書が現れました。

そう、伝書鳥のパトラが通信文を送ってから1日後。
速馬が王宮に走り込んだ。
城門を守っていた騎士達は眉を顰めた。

辺境のシーシュスからの使者は埃まみれで武骨で…。
そのまま王の御前に出したくは無いと思ったのだ。
しかし足止めしようとしたが、先触れでパトラが出ていたことにより、王は真っ直ぐに謁見の間へと歩いていた。


シーシュス領の使者は片膝をつき、恭順を示す為に剣を利き手と逆に置いていた。
前にはぼんやりと光る箱がある。
その場にいた者は、その箱の淡い光が嫦娥という絹の光沢に似ているのに目を止めていた。

嫦娥はタイタニア産の山絹と言われている。
これは青光りして美しいが、ほんの僅かしか流通せず、幻の絹だ。

使者が頭をたれて語り始めるのを、オベロン王は直ぐに止めた。
そしてを持って来させた。
直接に戸惑いながら両手に捧げると、オベロン王は受け取って直ぐに開く。
なかには巻いた紙が入っていて、ばさりと広げながらオベロンは黙読した。

謁見の間はかなり広い。
王は数段高くなった王座から、その広間を見下ろしている。

入り口から王へとまっすぐのびる通路には、使者の頭があり、その道の脇には王宮に勤める者も、騎士も、常駐する貴族も、ぎっしりと成り行きを見守っていた。



シーシュス領からひたすら馬をかった男は汗をかいて肩で息をしている。
その洗練されていない姿に、眉を顰める馬鹿者たちに、オベロン王は苛立ちを覚えた。

「ご苦労であった。部屋で休息をとらせよ。
この中にシーシュス領の者はいるか?」

問い掛けに慌てた男が人混みから出て、膝をついた。

「この使者は疲れておる。お前が領に返答せい。」

シーシュス領は辺境。
武骨な土地の者は、はっ!と短く答えた。


「仔細承知した。待っておる。と。」


こうしてシーシュスの男が去ってから、オベロン王は辺りを見回してから、一段低い所にいる宰相に告げた。


「今からだいたい一週間後に、タイタニアから使節団がくる。出迎えの用意をせよ。」


"タイタニア"その言葉に王宮は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。




シルフィの髪は腰の辺りまで伸びている。
白銀の艶が、陽をはじいて虹色に光っている。
三角の耳は柔らかな毛に覆われて裏は黒い。

オベロン王は膝の上にシルフィを載せて、そのふるふる動く尻尾を撫でていた。
かなり薄いが花のような黒い模様がある。
ソレはラルーナと同じで、ロクサーヌと同じだ。

慕わしい気持ちでぎゅっと抱きしめると、小さな体が微かに縮こまった。
心を許しているようでも、目の見えないこの子に警戒心は残っている。
苦々しい思いでその髪を撫でさすりながら、もっと心を蕩けさせたいと思った。


この空中庭園しか知らないシルフィ。
侍従以外は、自分としか接していない。

目の見えないこの子は、ロクサーヌのように逃げたりはしないのだ。

わしだけの天使だ。
耳に心地よい音楽を教え。
香りの良い草花を植え。
わしの思うままに育てていく。

この楽園を誰にも壊させやしない。

タイタニアから来るというラルーナの弟を、どう丸め込もうかとオベロンは頭を巡らせた。


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