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屋敷の暮らし
14 サモエド レリア四歳
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あの日。
サモエドは床の上で跪いていた。
腕は後ろに回され、何かに固定されている。
……力が出ない。
ぐんぐんと力が吸われ、呆けて眠りそうになっていく。
後になって、それが捕縛の魔道具だと知った。
目の前には同じ年頃の男の子がいた。
小綺麗な…いや、小綺麗じゃ無い。
市場で見かける大商人の子供なんか足元にも及ばないくらいに、上等な身なりだ。
子供はこっちを見下ろしている。
「ねぇ、君は魔法が使えるんだね。」
声がふるふると浮き足立って、喜びがこっちにまで流れてくる。
「しかも錬金できるタイプなんて凄いよ!
ねぇ、君。 僕のモノにおなりよ。」
それがセバスティン・オーランジェだった。
市場で財布を摺った。
街の警ら隊はあらかじめ目星を付けていたらしく、猟犬のように襲いかかってきた。
必死で逃げるその時に。
サモエドは足元の土を壁にして逃げ延びた。
~~驚いたのは本人も同じ。
馬鹿にされたと思ったらしい警ら隊は目の色を変えた。
もし捕まったら、五体満足ではいられない。
スラムのガキの命は、コーヒー一杯より安い。
逃げ惑うサモエドを手際よく捕らえたのは、セバスティンの護衛だった。
街の警ら隊に渡さずに屋敷に連れ帰る。
去勢を張って、恐怖で縋りつきそうなのを押し留めた。
そして小さな子の世話をしているから無理。
と答えると、信用できる孤児院をすぐ手配してくれた。
「凄いよ、君の魔力。一緒に勉強しようよ!」
媚びないところがとても良い。
と、セバスティンは笑った。
セバスティンは距離感が少し特殊だ。
得体の知れないスラムのガキを相手に、対等な態度を取る。
そして周りも決してセバスティンに逆らわない。
こうして後援者となり、サモエドは市民権を手に入れた。
覚えていくと、なるほど自分の力は凄かった。
頭の中に次々と新しい魔道具が浮かぶ。
自分の魔力で錬金出来る事に酔いしれる。
煽るようにセバスティンは誉め上げた上に、君なら出来る。
もっともっとと要求する。
その時の瞳はキラキラして、闇の中の宝石の様で。
サモエドはひたすら"セバスティンの為"という目標に突き進んだ。
~~思えばそれは盲信とも言える恋だったと思う。
そうして二人は学園に入学して。
お貴族様ばかりの何で、セバスティンとサフィア様だけがサモエドの凄さを認めた。
ああ、セバスティンのサフィア様を見る目…。
そして、他の有象無象を見る目。
その夜空より深い藍色の目は、確実にこの男が自分が興味ある物以外は、恐ろしいほどに無関心だと語っている。
怒りも悲しみも慈愛も何も無い、空っぽな無関心さは人に畏怖をもたらす。
ただでさえ、なんでも出来る男だから。
隔離された屋敷の家でサフィア様は麗しく笑う。
学園の時の様に、他愛無い話で笑う。
ふと、その動きが止まり、レリア様を思い出し…
直ぐに学園のランチタイムの話になる。
彼女の笑顔は。
リピート。
学園の話に。
リピート。
お茶会の話に。
リピート。
刺繍の話に。
……明らかに、不自然だ。
セバスティンが何かしているに違いない。
でも、こうしてセバスティンが女神を手に入れ。
復習の手段を手に入れ。
そして自分の力を、誰よりも必要としている事が、嬉しい。
良くない事だと罪悪感が心を責めるが、強烈に嬉しい。
自分の罪は、この男に魂を掴まれた事。
その痛みは、レリア様を庇う事で、少しは薄れていくようだ。
サモエドは床の上で跪いていた。
腕は後ろに回され、何かに固定されている。
……力が出ない。
ぐんぐんと力が吸われ、呆けて眠りそうになっていく。
後になって、それが捕縛の魔道具だと知った。
目の前には同じ年頃の男の子がいた。
小綺麗な…いや、小綺麗じゃ無い。
市場で見かける大商人の子供なんか足元にも及ばないくらいに、上等な身なりだ。
子供はこっちを見下ろしている。
「ねぇ、君は魔法が使えるんだね。」
声がふるふると浮き足立って、喜びがこっちにまで流れてくる。
「しかも錬金できるタイプなんて凄いよ!
ねぇ、君。 僕のモノにおなりよ。」
それがセバスティン・オーランジェだった。
市場で財布を摺った。
街の警ら隊はあらかじめ目星を付けていたらしく、猟犬のように襲いかかってきた。
必死で逃げるその時に。
サモエドは足元の土を壁にして逃げ延びた。
~~驚いたのは本人も同じ。
馬鹿にされたと思ったらしい警ら隊は目の色を変えた。
もし捕まったら、五体満足ではいられない。
スラムのガキの命は、コーヒー一杯より安い。
逃げ惑うサモエドを手際よく捕らえたのは、セバスティンの護衛だった。
街の警ら隊に渡さずに屋敷に連れ帰る。
去勢を張って、恐怖で縋りつきそうなのを押し留めた。
そして小さな子の世話をしているから無理。
と答えると、信用できる孤児院をすぐ手配してくれた。
「凄いよ、君の魔力。一緒に勉強しようよ!」
媚びないところがとても良い。
と、セバスティンは笑った。
セバスティンは距離感が少し特殊だ。
得体の知れないスラムのガキを相手に、対等な態度を取る。
そして周りも決してセバスティンに逆らわない。
こうして後援者となり、サモエドは市民権を手に入れた。
覚えていくと、なるほど自分の力は凄かった。
頭の中に次々と新しい魔道具が浮かぶ。
自分の魔力で錬金出来る事に酔いしれる。
煽るようにセバスティンは誉め上げた上に、君なら出来る。
もっともっとと要求する。
その時の瞳はキラキラして、闇の中の宝石の様で。
サモエドはひたすら"セバスティンの為"という目標に突き進んだ。
~~思えばそれは盲信とも言える恋だったと思う。
そうして二人は学園に入学して。
お貴族様ばかりの何で、セバスティンとサフィア様だけがサモエドの凄さを認めた。
ああ、セバスティンのサフィア様を見る目…。
そして、他の有象無象を見る目。
その夜空より深い藍色の目は、確実にこの男が自分が興味ある物以外は、恐ろしいほどに無関心だと語っている。
怒りも悲しみも慈愛も何も無い、空っぽな無関心さは人に畏怖をもたらす。
ただでさえ、なんでも出来る男だから。
隔離された屋敷の家でサフィア様は麗しく笑う。
学園の時の様に、他愛無い話で笑う。
ふと、その動きが止まり、レリア様を思い出し…
直ぐに学園のランチタイムの話になる。
彼女の笑顔は。
リピート。
学園の話に。
リピート。
お茶会の話に。
リピート。
刺繍の話に。
……明らかに、不自然だ。
セバスティンが何かしているに違いない。
でも、こうしてセバスティンが女神を手に入れ。
復習の手段を手に入れ。
そして自分の力を、誰よりも必要としている事が、嬉しい。
良くない事だと罪悪感が心を責めるが、強烈に嬉しい。
自分の罪は、この男に魂を掴まれた事。
その痛みは、レリア様を庇う事で、少しは薄れていくようだ。
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