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屋敷の暮らし
16 レオン・ベルガー
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人の形をしているのに息をしていない。
それだけで、どうしてこんなによそよそしいのだろう。
レリアは説明書の通りに、その自動人形のシャツのボタンを外した。
広げられた胸もとは緩やかに盛り上がり、美しい筋肉がついている。
その胸に手を付くことに少し気後れしながら、おずおずと手を押し当てた。
ひんやりとした肌の感触がぐにゃりと当たる。
その死体を思わせる感触が、生理的嫌悪で唾を飲み込ませた。
ごくりという音がとても響いて、自分でどきりとした。
慌てて、ぐっと手を当てて魔力を流す。
自分の魔力が、まるで宇宙の様な空間にふるふると立ち昇っていく。
ゆっくり目を閉じて、その魔石を感じる。
~~大きい。
いままで魔力を込めていた魔石など、太陽の前の小石のようだ。
まるで自分の全てを飲み込みそうなその空間に、少し怯えが浮かんだ。
魔石の閉じた内には星が瞬いている気がする。
遥か上に瞬くそこまで、自分の魔力を。
ここを一杯にすればベルが。
再び抱き上げてくれるベルが。
ーーベルの為なら怖くないから。
いつのまにか口元に笑が咲き、レリアは自分の内に入り込むように魔力を注いでいた。
あのぐにゃりとして冷たかった上皮がほの温かい。
満たされた光が溢れてくるに従って、軽い脈動が指をくすぐってくる。
ドクン。
ドクン。
その動きが、指を押して心地良い。
そっと目を開けて見つめると、目の前の顔はほのかな赤みを帯びていた。
ふるふるとまつ毛がゆれる。
きゅっと結ばれていた男らしい口元が、やわやわと緩んでいく。
ああ、早く目を開けて。
あの琥珀色の中で溺れたい。
必死に。
請うように願いながら魔力を込め続ける。
ぴん。
と、手が弾かれた。
もう魔石は満杯だ。
もうこれ以上は…
レリアの見守る中で、それは解けていった。
"人"が産まれる所を、レリアは口を開けて見ていた。
ぐんなりとしていた体がうごうごと伸びていく。
前屈みになっていた背筋がぴんと伸びて、投げ出されていた頭が持ち上がった。
揺れていたまつ毛がゆっくりと持ち上がる。
黒いまつ毛の間から、琥珀色が覗いていた。
息が掛かるほどに近づいたその琥珀色に、レリアの顔が映っている。
それはまさしく宝石で。
深いその中に、不安に歪んだレリアの顔が映っていた。
この瞳は、深く、静かで、ただただ無機質な宝石。
その透徹に深い琥珀に、レリアは説明書のままに、自分の虹彩を読ませる為にぐっと目を見開いて近づいた。
「レオン・ベルガー。」
ゆっくりとその名を口にする。
静かな琥珀の瞳の中に、ぴくっと漣が立つ。
それがチッチッと光り、
奥で細かい数字がシャワーのように流れていく。
「レオン・ベルガー。」
もう一度、はっきりと呼びかける。
タタタタタッという微かな読み込み音と共に、小刻みに瞼が震えた。
その音が止まるのをレリアは祈るような気持ちで待った。
早く起動して。
早く。
早く、僕を呼んで。
ベルガーの瞼がぎゅっと閉じられる。
それがゆっくり開いた時。
さっきまで無機質だった瞳の中に、何かがゆらめいているのがわかった。
その瞳の中のものは、確かに何処か知っているものだ。
そう、知っているものだ。
鼻の奥がツンと痛んだ。
「僕はレリア。
レリアだよ。」
レリアを見上げるベルガーは、じっくりとその名を咀嚼するように目を閉じた。
そうしてゆっくりと微笑んだ。
それだけで、どうしてこんなによそよそしいのだろう。
レリアは説明書の通りに、その自動人形のシャツのボタンを外した。
広げられた胸もとは緩やかに盛り上がり、美しい筋肉がついている。
その胸に手を付くことに少し気後れしながら、おずおずと手を押し当てた。
ひんやりとした肌の感触がぐにゃりと当たる。
その死体を思わせる感触が、生理的嫌悪で唾を飲み込ませた。
ごくりという音がとても響いて、自分でどきりとした。
慌てて、ぐっと手を当てて魔力を流す。
自分の魔力が、まるで宇宙の様な空間にふるふると立ち昇っていく。
ゆっくり目を閉じて、その魔石を感じる。
~~大きい。
いままで魔力を込めていた魔石など、太陽の前の小石のようだ。
まるで自分の全てを飲み込みそうなその空間に、少し怯えが浮かんだ。
魔石の閉じた内には星が瞬いている気がする。
遥か上に瞬くそこまで、自分の魔力を。
ここを一杯にすればベルが。
再び抱き上げてくれるベルが。
ーーベルの為なら怖くないから。
いつのまにか口元に笑が咲き、レリアは自分の内に入り込むように魔力を注いでいた。
あのぐにゃりとして冷たかった上皮がほの温かい。
満たされた光が溢れてくるに従って、軽い脈動が指をくすぐってくる。
ドクン。
ドクン。
その動きが、指を押して心地良い。
そっと目を開けて見つめると、目の前の顔はほのかな赤みを帯びていた。
ふるふるとまつ毛がゆれる。
きゅっと結ばれていた男らしい口元が、やわやわと緩んでいく。
ああ、早く目を開けて。
あの琥珀色の中で溺れたい。
必死に。
請うように願いながら魔力を込め続ける。
ぴん。
と、手が弾かれた。
もう魔石は満杯だ。
もうこれ以上は…
レリアの見守る中で、それは解けていった。
"人"が産まれる所を、レリアは口を開けて見ていた。
ぐんなりとしていた体がうごうごと伸びていく。
前屈みになっていた背筋がぴんと伸びて、投げ出されていた頭が持ち上がった。
揺れていたまつ毛がゆっくりと持ち上がる。
黒いまつ毛の間から、琥珀色が覗いていた。
息が掛かるほどに近づいたその琥珀色に、レリアの顔が映っている。
それはまさしく宝石で。
深いその中に、不安に歪んだレリアの顔が映っていた。
この瞳は、深く、静かで、ただただ無機質な宝石。
その透徹に深い琥珀に、レリアは説明書のままに、自分の虹彩を読ませる為にぐっと目を見開いて近づいた。
「レオン・ベルガー。」
ゆっくりとその名を口にする。
静かな琥珀の瞳の中に、ぴくっと漣が立つ。
それがチッチッと光り、
奥で細かい数字がシャワーのように流れていく。
「レオン・ベルガー。」
もう一度、はっきりと呼びかける。
タタタタタッという微かな読み込み音と共に、小刻みに瞼が震えた。
その音が止まるのをレリアは祈るような気持ちで待った。
早く起動して。
早く。
早く、僕を呼んで。
ベルガーの瞼がぎゅっと閉じられる。
それがゆっくり開いた時。
さっきまで無機質だった瞳の中に、何かがゆらめいているのがわかった。
その瞳の中のものは、確かに何処か知っているものだ。
そう、知っているものだ。
鼻の奥がツンと痛んだ。
「僕はレリア。
レリアだよ。」
レリアを見上げるベルガーは、じっくりとその名を咀嚼するように目を閉じた。
そうしてゆっくりと微笑んだ。
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