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その後
45 ザラドの戸惑い
温室は好き勝手に茂った木と草のジャングルだ。
通路は薬草につけられた獣道のようだ。
上からぶら下がる枝や蔓を払い除けながら進む。
刺激された香草が爽やかな匂いを出して、ザラドの心を落ち着かせてくれた。
昨日は心が波立っていた。
ざぶんざぶんと渦巻いて落ち着かなかった。
外には出たく無くて。
誰とも会いたく無くて。
ひたすら王宮を歩き回った。
いつもなら幾つかの人影がこちらをこそこそ見てるのに、いない。
そう、大気がぐわんぐわん揺れて、夜会の動揺が収まっていなかった。
母上はとっくに自分の屋敷に帰っている。
父上は四阿で、燃え尽きた表情で座っている。
遠くに見た王と王妃は寄り添って、彫像の様にじっとしていた。
叔父上はいなかった。
文官や貴族達が、落ち着かなげに走り回っている。
無理もない。
叔父上に隠し子が。
つまり王位継承者が現れたのだ。
ザラド以外の王位継承者。
しかも王族の金色の瞳の。
王宮の、いや貴族の勢力図が変わる。
しかも相手は追放された令嬢の息子。
追放に関わった者は青褪め、防ごうとしていた者はチャンス到来と色めきたっている。
王都だけで無く、国中の貴族が今頃走り回っているのだろう。
自分より動揺している空気感の中で、ザラドは徐々に沈静化して行った。
夕方には胸にぽっかり穴が開いたようになって、部屋のベッドに転がった。
~~リーリアが母上に似ていた。
その発見はすとんと胸に落ちたけれどもショックだった。
可愛いいリーリア。
時間も場所も場面も考えない天真爛漫なリーリア。
……あの母上も昔はそうだったのだろうか。
レリアそっくりなら、父上の婚約者の令嬢はかなり美しかったはずだ。
その美しい令嬢を追放するって、どう?
姉のように苦言を言うシャルア。
息の詰まるその完璧さ。
でも、苦めばいいなんて思わない。
婚約解消したいのなら、王に願えばいい筈だ。
そして、レリア。
『いつまでも悪役にさせられているなんて惨めすぎる』そう言ってた。
彼は今どうしているんだろう。
彼を思うとじんわりと心が揺れた。
明日は会える。
会える筈だ。
そう自分に言い聞かせた。
そうしてザラドは温室を歩く。
目の前に点々とピンクの花をつけた蔓がぶら下がっている。
そのカーテンのような蔓を手で除けると、陽が一つ所に降っているのが見えた。
陽の中で黄金がキラキラと瞬いている。
金の髪に縁取られた小さな顔。
熟れた葡萄色と、濃金色の瞳。
それがこちらを見ている。
桃色の唇はちょっと半開きで、切なそうに胸の前で両手を振り絞っている。
縫い付けられたようにベンチに座って。
唇がちょっとふるふるしていて。
ああ、彼も緊張しているんだ。
と、心がじんわりと温かくなった。
ああ、なんて綺麗なんだ。
ひたりと自分だけを見つめる眼差し。
初めに妖精かと思ったように、
いまもその姿は夢のように美しい。
金色の夢のようだ。
望んでも手に入らない、幸せな夢のようだ。
ザラドはふっと息を吐いて、ゆっくりと近付いていった。
通路は薬草につけられた獣道のようだ。
上からぶら下がる枝や蔓を払い除けながら進む。
刺激された香草が爽やかな匂いを出して、ザラドの心を落ち着かせてくれた。
昨日は心が波立っていた。
ざぶんざぶんと渦巻いて落ち着かなかった。
外には出たく無くて。
誰とも会いたく無くて。
ひたすら王宮を歩き回った。
いつもなら幾つかの人影がこちらをこそこそ見てるのに、いない。
そう、大気がぐわんぐわん揺れて、夜会の動揺が収まっていなかった。
母上はとっくに自分の屋敷に帰っている。
父上は四阿で、燃え尽きた表情で座っている。
遠くに見た王と王妃は寄り添って、彫像の様にじっとしていた。
叔父上はいなかった。
文官や貴族達が、落ち着かなげに走り回っている。
無理もない。
叔父上に隠し子が。
つまり王位継承者が現れたのだ。
ザラド以外の王位継承者。
しかも王族の金色の瞳の。
王宮の、いや貴族の勢力図が変わる。
しかも相手は追放された令嬢の息子。
追放に関わった者は青褪め、防ごうとしていた者はチャンス到来と色めきたっている。
王都だけで無く、国中の貴族が今頃走り回っているのだろう。
自分より動揺している空気感の中で、ザラドは徐々に沈静化して行った。
夕方には胸にぽっかり穴が開いたようになって、部屋のベッドに転がった。
~~リーリアが母上に似ていた。
その発見はすとんと胸に落ちたけれどもショックだった。
可愛いいリーリア。
時間も場所も場面も考えない天真爛漫なリーリア。
……あの母上も昔はそうだったのだろうか。
レリアそっくりなら、父上の婚約者の令嬢はかなり美しかったはずだ。
その美しい令嬢を追放するって、どう?
姉のように苦言を言うシャルア。
息の詰まるその完璧さ。
でも、苦めばいいなんて思わない。
婚約解消したいのなら、王に願えばいい筈だ。
そして、レリア。
『いつまでも悪役にさせられているなんて惨めすぎる』そう言ってた。
彼は今どうしているんだろう。
彼を思うとじんわりと心が揺れた。
明日は会える。
会える筈だ。
そう自分に言い聞かせた。
そうしてザラドは温室を歩く。
目の前に点々とピンクの花をつけた蔓がぶら下がっている。
そのカーテンのような蔓を手で除けると、陽が一つ所に降っているのが見えた。
陽の中で黄金がキラキラと瞬いている。
金の髪に縁取られた小さな顔。
熟れた葡萄色と、濃金色の瞳。
それがこちらを見ている。
桃色の唇はちょっと半開きで、切なそうに胸の前で両手を振り絞っている。
縫い付けられたようにベンチに座って。
唇がちょっとふるふるしていて。
ああ、彼も緊張しているんだ。
と、心がじんわりと温かくなった。
ああ、なんて綺麗なんだ。
ひたりと自分だけを見つめる眼差し。
初めに妖精かと思ったように、
いまもその姿は夢のように美しい。
金色の夢のようだ。
望んでも手に入らない、幸せな夢のようだ。
ザラドはふっと息を吐いて、ゆっくりと近付いていった。
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