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いよいよ囲い込み
43 エルメ
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それは凪いだ水面に、ぽつりと小石が落ちたようだった。
その振動とぷくぷく沈んでいく小石が、水を押し除けて波紋を呼ぶ。
そんなふうにいきなり掻き回されて私は目覚めた。
私はエルメ。
ここは… 殻の中だ。
眠っていた私は、何が私を起こしたのか意識を広げた。
『母さま…母様…置いてかな…ぃで…』
小さく、絶え絶えの声が聞こえる。
その慟哭が、棘の様に刺さって眠らせてくれない。
私はゆるゆると意識を広げた。
周りにいくつも眠っている。
~~ああ、コレは仲間。
私は飛竜。
飛竜だ。
周りの仲間に声を掛けたけれど、眠っていて切れ切れの単語しか聞こえてこない。
物足りない私は、外へと意識を飛ばした。
竜の卵を珍しがって、火蜥蜴が群がっている。
その小さくて点滅する様な意識は面白いけれど、彼らの意識はあやふやで単語にさえならない。
その目を覗いて考えると、沢山の点から線が浮かんで来て、ようやくぼんやりと形になって行った。
砂の中に立つ卵達。
どうも私の卵は小さいようだ。
火蜥蜴がまさぐってくれて、ようやくコレだとわかった卵は、隣の半分以下でちょっと残念だった。
苦笑する。
どうも私は見栄っ張りのようだ。
卵の中で私は夢を見る。
飛竜は竜騎士に出会って生涯を共にする。
私は何色なんだろう。
私はどんな竜騎士と出会うんだろう。
そんな夢は楽しくて、私はすぐ仲間の卵と微睡んだ。
ある時。
息苦しさが押し迫ってきた。
早く。
早く。
このままだと危ない‼︎
鉄板に炒られた豆の様に、仲間は慌てた。
孵化だ!
仲間は殻を卵歯で突き破り、ばきばきと叩き壊している。
でも私はなかなか出来ない。
苦しい。
息が出来ない。
今までまあるくて安全で夢を見せていた卵の宇宙は、中身を排出させようと苦しさだけを投げ告げてくる。
あちこちでぼこっぼこっと殻から飛び出す気配がして。
名前を名乗る仲間の声がする。
その度に胸にじんわりと愛おしさが感じられて、私も‼︎ と、焦る。
なのに、殻が割れない!
辺りに仲間がいなくなる。
やめて!
助けて‼︎
必死で動くのに、殻は私を閉じ込めて、いまや死の冷たさを感じる。
やめて!
助けて‼︎
誰か、助けて‼︎
中で叫び続けていたら、風の魔法の気配がした。
誰なの、お願い!
助けて‼︎
そう叫んでいたら、花萌葱色の風ががんと叩きつけられ、硬い殻が吹き飛んだ。
そのまま倒れた卵から這い出ると、涙で潤んだ瑠璃色が私を捉えた。
『私ハ……エルメ…』
『僕はルカだよ』
小さくて青白くて、隈まである。
その子供は、ルカと名乗った途端に微笑んだ。
途端に光が溢れる。
私の中にルカが満たされる。
ルカの中に私が満たされる。
私はルカ。
ルカは私。
一つのものへとシンクロし、私達はこうして感合した。
ルカの心が私を転がす。
それはシャボン玉のようにころころと面白おかしく飛び跳ねて、目の前を明るく染めていく。
私はルカの為に火蜥蜴や他の竜から魔物の有り様を伝える。
『やっぱりエルメは最高だ!』
そう言って笑うルカに、幸せが辺りに舞い上がる。
それからは一緒で。
どこでも一緒で。
学園の時も離れなかったのに。
……そんな私達に"発情"という大人社会が立ち塞がった。
発情期が来ると番というものが出来る。
絶対無二のルカとの中を邪魔な者が隔てていく。
でもそれは自然の理というもので…
私はルカが幸せな番を見つけられる様に祈った。
~~ルカはちょっと困ったさんだから。
そして今、カララの為にアッシュバルトに来ている。
ルカはディサロという人間と性交している。
初めての時の様に、薬で強制的に快楽を拾ったんじゃ無く。
ちゃんと自分で快楽を味わっているのにほっとした。
ディサロはかなり前から(竜は時間経過を考えるのが苦手だ)ルカを見守っていた。
……あの人間なら許せる。
私は納得して、もう一眠りする事にした。
その振動とぷくぷく沈んでいく小石が、水を押し除けて波紋を呼ぶ。
そんなふうにいきなり掻き回されて私は目覚めた。
私はエルメ。
ここは… 殻の中だ。
眠っていた私は、何が私を起こしたのか意識を広げた。
『母さま…母様…置いてかな…ぃで…』
小さく、絶え絶えの声が聞こえる。
その慟哭が、棘の様に刺さって眠らせてくれない。
私はゆるゆると意識を広げた。
周りにいくつも眠っている。
~~ああ、コレは仲間。
私は飛竜。
飛竜だ。
周りの仲間に声を掛けたけれど、眠っていて切れ切れの単語しか聞こえてこない。
物足りない私は、外へと意識を飛ばした。
竜の卵を珍しがって、火蜥蜴が群がっている。
その小さくて点滅する様な意識は面白いけれど、彼らの意識はあやふやで単語にさえならない。
その目を覗いて考えると、沢山の点から線が浮かんで来て、ようやくぼんやりと形になって行った。
砂の中に立つ卵達。
どうも私の卵は小さいようだ。
火蜥蜴がまさぐってくれて、ようやくコレだとわかった卵は、隣の半分以下でちょっと残念だった。
苦笑する。
どうも私は見栄っ張りのようだ。
卵の中で私は夢を見る。
飛竜は竜騎士に出会って生涯を共にする。
私は何色なんだろう。
私はどんな竜騎士と出会うんだろう。
そんな夢は楽しくて、私はすぐ仲間の卵と微睡んだ。
ある時。
息苦しさが押し迫ってきた。
早く。
早く。
このままだと危ない‼︎
鉄板に炒られた豆の様に、仲間は慌てた。
孵化だ!
仲間は殻を卵歯で突き破り、ばきばきと叩き壊している。
でも私はなかなか出来ない。
苦しい。
息が出来ない。
今までまあるくて安全で夢を見せていた卵の宇宙は、中身を排出させようと苦しさだけを投げ告げてくる。
あちこちでぼこっぼこっと殻から飛び出す気配がして。
名前を名乗る仲間の声がする。
その度に胸にじんわりと愛おしさが感じられて、私も‼︎ と、焦る。
なのに、殻が割れない!
辺りに仲間がいなくなる。
やめて!
助けて‼︎
必死で動くのに、殻は私を閉じ込めて、いまや死の冷たさを感じる。
やめて!
助けて‼︎
誰か、助けて‼︎
中で叫び続けていたら、風の魔法の気配がした。
誰なの、お願い!
助けて‼︎
そう叫んでいたら、花萌葱色の風ががんと叩きつけられ、硬い殻が吹き飛んだ。
そのまま倒れた卵から這い出ると、涙で潤んだ瑠璃色が私を捉えた。
『私ハ……エルメ…』
『僕はルカだよ』
小さくて青白くて、隈まである。
その子供は、ルカと名乗った途端に微笑んだ。
途端に光が溢れる。
私の中にルカが満たされる。
ルカの中に私が満たされる。
私はルカ。
ルカは私。
一つのものへとシンクロし、私達はこうして感合した。
ルカの心が私を転がす。
それはシャボン玉のようにころころと面白おかしく飛び跳ねて、目の前を明るく染めていく。
私はルカの為に火蜥蜴や他の竜から魔物の有り様を伝える。
『やっぱりエルメは最高だ!』
そう言って笑うルカに、幸せが辺りに舞い上がる。
それからは一緒で。
どこでも一緒で。
学園の時も離れなかったのに。
……そんな私達に"発情"という大人社会が立ち塞がった。
発情期が来ると番というものが出来る。
絶対無二のルカとの中を邪魔な者が隔てていく。
でもそれは自然の理というもので…
私はルカが幸せな番を見つけられる様に祈った。
~~ルカはちょっと困ったさんだから。
そして今、カララの為にアッシュバルトに来ている。
ルカはディサロという人間と性交している。
初めての時の様に、薬で強制的に快楽を拾ったんじゃ無く。
ちゃんと自分で快楽を味わっているのにほっとした。
ディサロはかなり前から(竜は時間経過を考えるのが苦手だ)ルカを見守っていた。
……あの人間なら許せる。
私は納得して、もう一眠りする事にした。
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