押してダメなら引いてみるけど、恋ってやつは後戻りはできない。

たまとら

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ルゥティルと愉快な仲間たち

1 テオドア 四歳

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テオドアがルゥティルに会ったのは四歳だった。

その頃のテオドアはイキっていた。
だって魔力が発現したのだ。
四歳なのに‼︎

魔力器官は生まれた時は小さく脆い。
だから五歳の選定式まで魔力に晒さないように育てられる。
五歳前には魔力は発現しないのが世間一般の常識だった。
勿論テオドアも魔力に触れないように暮らしていた。
それがわずか四歳で発現したのだ。

俺って天才じゃね⁉︎
しかも植物を操る緑の魔力だ。
俺って無敵じゃね⁉︎

そんな訳でテオドアは子供特有の万能感でイキってハッピーに暮らしていた。


ブレイクリー家の三男坊だったテオドアは腹ペコ君だった。
ブレイクリー家は男爵位だったが、西の辺境近くに領地がある。
極小で痩せた土地で貧乏だった。
多分、王都の平民の方がいいもん食ってるよな。と言う食事内容な上に家族は肉信者だった。

西の辺境は国境では無く森に面している。
そこから湧く魔物との攻防の為に、この辺りの領主はすべからく戦闘民族だった。

『戦うには肉‼︎』
『肉が欲しければ挑んで来い!』

そんな悪戦苦闘する食卓に疲れ果て、食べれる植物を探していたことで発現したらしい。

森で戦うには植物を操れるのがマストだ。葉の揺らぎで獲物をサーチできるのだ。長兄ジェルドの火の力など、広い戦場なら無茶苦茶カッコいいが森の中だと余程のコントロールが無いと類焼大惨事決定の無用の長物だったりする。
そんな訳で西辺境界隈では緑の魔力は憧れの力だった。
そんな力が四歳で発現しちゃったのだ。もう人生勝ち組だよね。

テオドアは毎日森に通った。
木ノ実に山菜に茸、上手くいったら肉。
あるいは領民の畑で成長促進させて、お礼にトマトや胡瓜を貰う。

どうせ五歳の選定式を迎えるまで魔力コードは定まらず、役所に登録出来ないのだ。
テオドアは食卓の品数を増やす為と魔力を鍛える為に毎日楽しく暮らしていた。
そしてそんなテオドアを家族も領民も温かく見守っていた。

そんな時だ。

インドラグナ辺境伯からの緊急魔報が飛び込んで来た。

『風舞花を探して欲しい』

緊急‼︎
スタンピード以来の緊急‼︎

ブレイクリー家どころか領民全てが立ち上がった。
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