攻略対象者【D】は、重めの愛にへこたれない

たまとら

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プロローグ

攻略対象者〈B〉

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ねちょねちょと泥粘土を捏ねるような音がして、デュークは足を止めた。

はっはっはっ、と、獣の様な息遣いもする。

あれ?

と、辺りを見回した。

風に乗って、んっ、ん、ん、
と、押し殺した声もして。

あ、やっちまった。と、思った。



ここは学園の裏庭だ。
は向こうにあるし、恋を囁く庭園も別方向だ。

入学以来何度かチェックして、ここはあまり手入れもされずに人も来ない事を確認していた。
放置された小さな四阿は、枯れた蔓がぴるぴると巻き付いて小汚く、絶対スチルに無いぞ!と安心したものだ。
だからのんびりとここで本を読んだり昼寝もしてたりと、隠れ場所として満喫してた訳だけど。

初夏が始まって、枯れた蔓に葉が付いて。
繁々と緑になって来た。

あれ?
と、思っていたが、やがて小さな蕾がついて。

~昨日、ついにピンクの花が開いたのだ。


コレはもしや⁉︎

と、思ったけど。

まだ花は一つだし。
色はピンクだし。
と、自分を騙す様にいいわけしていた。


そして今日。

教室にいたく無いのでふらふら来てみたら、おっぱじまっていたって訳だ。


恐る恐る近づいて、木の影から覗き込む。

四阿の柱も屋根も新緑の葉で覆われ、咲き誇る花が甘い匂いを蒔いている。



うそん。


昨日はまだこんなに繁ってなかったじゃん。
コレが噂に聞いたストーリー補正と言う奴かっ‼︎

理不尽さにギリギリしながら四阿の中を凝視した。



……スチルだ。

現場を見て息を呑んだ。
そこには男が二人。

こんな時だというのに、神絵師様の美スチルを思い出し、デュークはうっとりと目を細めた。


そこには攻略対象者Bがベンチにいた。

…‥尊い…。

思わず拝みそうになった時。
デュークははっとした。

待ていっ!
コレを見せられるって事は、物語が順調に動いてるって事じゃ無いのかっ⁉︎

馬鹿っ!
見惚れてる場合じゃないだろうがっ!


あわあわする人の気配を察して、彼が気だるげに目を向けた。

ギョッとする俺にちょっと目を丸くすると、指を唇の前に一本立ててにやりと笑う。

デュークはごくりと唾を飲んで頷くと、そろりときびすを返した。


見てませーん!
見てませんからっ‼︎


だんだん早足になって逃げ出す。

ぜえぜえと走り込んで研究棟まで来ると、デュークは頭を抱えた。

駄目じゃん!
ブオナ様と目が合っちまったぁ‼︎



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