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13部 番外編
ちょっと付き合ってください
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2の月の下旬、聖地にて、午後、いつもの訓練場所で神官たちに稽古をつけていたスペードの元にクーガがやってきた。
「一緒にやりますか?」
スペードがクーガに声をかけた。
「いえ、ちょっと付き合ってほしいんですが」
「いいですよ。どこに行くんですか?」
「ヒルデリア様の神殿です」
「はあ」
スペードは神官たちに自主稽古をさせて、クーガについていった。
聖地の誰でも知っていることだったが、クーガとヒルデリアの仲は良くない。それもクーガはアシュランが浮気してできた子供だからだ。
瞬間移動でクーガはスペードを連れてヒルデリアの神殿にやってきた。
スペードは服装を直しながら、「クーガ様もここに来ることがあるんですね」と言った。
「中に入るのは初めてですよ」
「初めて?」
「実は蛇の国の王妃様が出産が近いので、お祈りしたくなりまして」
「え? へーそうなんですか」
二人はヒルデリアの神殿に入って行った。スペードが前回ここに来たのは、ゆりと一緒の時だった。今日は人はまばらである。神殿内にいた神官たちは、クーガの姿を見て一瞬ざわついていた。
クーガは神官たちに軽く頭を下げて、正面にある大きなヒルデリアの石像の前で片膝をつき、祈りをささげた。スペードもその横で同様に祈った。
(出産なさるんですね。健康な赤ちゃんが産まれますように。そして王妃様も元気でいますように。ヒルデリア様、あなた様の信者に加護をお与えください)
クーガが立ち上がった。
「終わりました」
「彼女とここに来たのが、随分昔のような気がしますよ」
スペードは神殿内を見回して言った。あの二日間は、楽しい思い出としてスペードの中では残っている。
再び神殿内がざわついてきた。
「あれは……」
「綺麗……」
などという人々のささやきが聞こえてくる。神殿の入口付近に金色の獣がいた。虎くらいの大きな獣である。
「あ、雷獣トルメンタ?」
ヒルデリアが愛する神獣が座っていた。クーガが近づいて行くと、トルメンタはクーガに頭を下げて、クーガもトルメンタに頭をさげた。スペードも同様にして、二人は神殿から外に出た。
「話には聞いていたが、本当に復活したんだ。神々しくて、貫禄がありましたね」
「そうですね。今日は助かりました。一人ではちょっと入りづらかったもので。それじゃ」
「あ、はい」
クーガは去って行った。
(一人ではやはり入りづらかったのか。それでもお祈りしたかったんだな)
クーガにすれば、この神殿に入るには、結構な勇気が必要だったろう。
(声をかけられて悪い気はしないな。うん)
スペードがヒルデリアの神殿を眺めていると、「こんにちは」と声が聞こえてきた。周りを見ると、いつの間にかトルメンタが近くに座っている。
「あれ?」
「こんにちは、あの方はどうして今日こちらにいらしたんですか?」
どう見ても神獣がスペードに話しているようである。スペードはトルメンタが話せることは知らなかった。トルメンタの声は女性よりの声だった。
「こ、こんにちは。えーと、知り合いの妊婦さんのためのようです。出産が近いんでお祈りしたかったみたいで」
スペードは上からトルメンタを見下ろしてもいいのかどうか迷いつつ言った。
「そうなんですか。あなたはあの方の友達ですか?」
「はい、友達です」
「あなたのお名前は」
「スペードといいます」
「スペードさん、手を出してください」
「はい」
スペードは疑問に思いつつもひざをついて、言われた通りに手を出した。トルメンタがその手に右手をひょいと乗せた。するとびりっと強い静電気のようなものが起こり、スペードは「わっ!」と手を離していた。
「うふふ」
トルメンタは笑っている。
(いたずら? いたずらされたのかな?)
「スペードさん、それじゃまた」
トルメンタは走って去って行き、神殿の中に入って行った。
「神獣にいたずらされてしまった??」
右手はまだびりびりしたものが残っている。スペードは首をかしげつつ帰って行ったのだった。
「一緒にやりますか?」
スペードがクーガに声をかけた。
「いえ、ちょっと付き合ってほしいんですが」
「いいですよ。どこに行くんですか?」
「ヒルデリア様の神殿です」
「はあ」
スペードは神官たちに自主稽古をさせて、クーガについていった。
聖地の誰でも知っていることだったが、クーガとヒルデリアの仲は良くない。それもクーガはアシュランが浮気してできた子供だからだ。
瞬間移動でクーガはスペードを連れてヒルデリアの神殿にやってきた。
スペードは服装を直しながら、「クーガ様もここに来ることがあるんですね」と言った。
「中に入るのは初めてですよ」
「初めて?」
「実は蛇の国の王妃様が出産が近いので、お祈りしたくなりまして」
「え? へーそうなんですか」
二人はヒルデリアの神殿に入って行った。スペードが前回ここに来たのは、ゆりと一緒の時だった。今日は人はまばらである。神殿内にいた神官たちは、クーガの姿を見て一瞬ざわついていた。
クーガは神官たちに軽く頭を下げて、正面にある大きなヒルデリアの石像の前で片膝をつき、祈りをささげた。スペードもその横で同様に祈った。
(出産なさるんですね。健康な赤ちゃんが産まれますように。そして王妃様も元気でいますように。ヒルデリア様、あなた様の信者に加護をお与えください)
クーガが立ち上がった。
「終わりました」
「彼女とここに来たのが、随分昔のような気がしますよ」
スペードは神殿内を見回して言った。あの二日間は、楽しい思い出としてスペードの中では残っている。
再び神殿内がざわついてきた。
「あれは……」
「綺麗……」
などという人々のささやきが聞こえてくる。神殿の入口付近に金色の獣がいた。虎くらいの大きな獣である。
「あ、雷獣トルメンタ?」
ヒルデリアが愛する神獣が座っていた。クーガが近づいて行くと、トルメンタはクーガに頭を下げて、クーガもトルメンタに頭をさげた。スペードも同様にして、二人は神殿から外に出た。
「話には聞いていたが、本当に復活したんだ。神々しくて、貫禄がありましたね」
「そうですね。今日は助かりました。一人ではちょっと入りづらかったもので。それじゃ」
「あ、はい」
クーガは去って行った。
(一人ではやはり入りづらかったのか。それでもお祈りしたかったんだな)
クーガにすれば、この神殿に入るには、結構な勇気が必要だったろう。
(声をかけられて悪い気はしないな。うん)
スペードがヒルデリアの神殿を眺めていると、「こんにちは」と声が聞こえてきた。周りを見ると、いつの間にかトルメンタが近くに座っている。
「あれ?」
「こんにちは、あの方はどうして今日こちらにいらしたんですか?」
どう見ても神獣がスペードに話しているようである。スペードはトルメンタが話せることは知らなかった。トルメンタの声は女性よりの声だった。
「こ、こんにちは。えーと、知り合いの妊婦さんのためのようです。出産が近いんでお祈りしたかったみたいで」
スペードは上からトルメンタを見下ろしてもいいのかどうか迷いつつ言った。
「そうなんですか。あなたはあの方の友達ですか?」
「はい、友達です」
「あなたのお名前は」
「スペードといいます」
「スペードさん、手を出してください」
「はい」
スペードは疑問に思いつつもひざをついて、言われた通りに手を出した。トルメンタがその手に右手をひょいと乗せた。するとびりっと強い静電気のようなものが起こり、スペードは「わっ!」と手を離していた。
「うふふ」
トルメンタは笑っている。
(いたずら? いたずらされたのかな?)
「スペードさん、それじゃまた」
トルメンタは走って去って行き、神殿の中に入って行った。
「神獣にいたずらされてしまった??」
右手はまだびりびりしたものが残っている。スペードは首をかしげつつ帰って行ったのだった。
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