ダークファンタジア番外編

ノクターン

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14部

騎士交代

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ねぼすけは珍しく少々緊張した面持ちだった。すぐ目の前にいて自分の顔を間近で眺めていたのは、最高神アシュランである。
「綺麗に入ってるなあ。あいつ器用なことするな」
アシュランは感心した様子で、ねぼすけの右目を見ていた。
「一瞬痛かったですけどね」
ここはねぼすけの家である。ねぼすけは突然来たアシュランに起こされたのだった。
「その目で他に変わったことはないのか?」
「特には」
「ふーん」
アシュランは椅子を寄せてきて座っていた。ねぼすけはベッドに座っている。ねぼすけはアシュランとはもう二千年以上の付き合いであるが、いつもこんな感じだった。ははーと平伏したことがない。
「僕の目を見るためにわざわざいらしたんですか?」
「うん。ところで、そこに何かいるが」
枕の横に、茶色い生き物がいた。とかげのような生き物である。
「ペットのヤモリ君です。ヤモリ君、アシュラン様にご挨拶して」
ねぼすけがいうとヤモリは頭を下げるような仕草をしていた。
「賢いでしょう?」
「何か変な感じがするが。まあいいか。リアン、お前何か私に望みはないか? 何か聞いてやるぞ」
アシュランが突然優しく言い出したので、ねぼすけは、「死ぬ前に何か望みを聞いてやるとかそんな感じですか?」
と頬を引きつらせていた。
「そういうんじゃない。さっきスペードの所に行って望みを聞いてやったんで、ついでにお前は何か望みはないかと思ったんだ」
「スペードの望みって何ですか?」
「カードの騎士を引退したいそうだ。お前に譲るとさ。正直な話、カードに残っているのはやつだけだし、あのカードはもう終わらせてもいいんだが……あいつ永遠に出られそうにないしな」
「じゃあ僕もかわいい女の子に騎士様、ステキ、とか言われちゃうんですかね」
「助けるのが女とは限らんが」
「どうせなら若い女の子を助けたいなあ」
「それが望みか?」
「いえ、わざわざ大神様に頼むほどのことでもないです」
「スペードも、王妃にあって仲良くしたいと言い出すのかと思ったら、騎士の引退だった。あいつが私に何かを望んだのは初めてだ。何かの祝いで贈り物をやろうと言った時には、頑なに遠慮してたな。私はお前達のことだって息子のように思ってるんだぞ。もっと気軽に誕生日パーティーに呼んだりされたかった。だれも呼んでくれなかった」
「それは呼ばないでしょう」
ねぼすけは仕方なくつっこんでいた。
「クーガ君の誕生日には呼ばれたんですか?」
「呼ばれてない。だが最近、クーガとの会話が長く続いている。それがうれしい」
「よかったですね」
「じゃあ行くかな」
「カードの僕、かっこよくお願いしますね」
「うん」
アシュランは消えた。
「誕生日パーティーに大神を招待? ははは」
ねぼすけは一人で笑っていたのだった。

アシュランがスペードの所に来た翌日、再びアシュランがやってきた。
「ほら」
アシュランは騎士のカードと銀色のバッジを渡した。
「ありがとうございます。これは?」
スペードはバッジを見て聞いた。
「せっかくだから自分で渡してこい。向こうにいる間、王妃以外にはかわいいマリカに見えるように魔法をかけてやる。だからかわいらしい仕草で、歩くときも小股で女性らしく歩くように」

「は……はあ……」

「バッジが光ったら強制的に聖地に戻すからな。神官のマリカですってかわいらしく言うんだぞ。ちょっと言ってみろ」
「え……し、神官のマリカです」
「もっと高い声で」
「神官のマリカです♪」
スペードの裏声が面白かったのか、アシュランはぷっと笑っていた。スペードは恥ずかしかったのか、頬が赤くなっている。
「じゃあバッジをつけろ。送る。あ、そうだ。せっかくだから服を変えよう」
アシュランが手をたたいた。スペードの服が緑系の服に変わった。スペードはバッジをつけた。
「じゃあ行ってこい」
「ありがとうございます」

スペードはそのまま飛ばされて、ついた先は、蛇の国の城の門の前だった。番兵達がスペードを見た。
「あの、わたし、神官のマリカといいます。王妃様にお会いしたいのですが」
スペードは内心(気持ち悪いな)と思いながらも、なるべくかわいらしい声で言ったのだった。
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