妖精王の味

うさぎくま

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39、嘘だと言って

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 やっとエティエンヌフューベルと再会でき、凛音は幸せ絶好調。

 お世話になった皆々様から盛大なツッコミをうけたが、それも当然だと理解する。つい先程まで旦那は狼種だと思われていたし。
 しかしハクリとルルなら、初日の凛音のあり得ない言動の数々も納得するだろう。

 ハクリには妖精族の王の名前を呼ぶ人なんて、頭がおかしいと、面と向かって言われたからだ。



「エティエンヌフューベル様、こっちに来てください」

 凛音に促され、エティエンヌフューベルはミミルを抱き上げたまま移動する。ハクリとルルの前にだ。


「エティエンヌフューベル様、こちらの男性がハクリさん。女性がルルさん。ご夫婦です。
 私がブラックホールから落ちた時。寝食する場や仕事の斡旋まで、色々と面倒を見てくれました。
 落ちた先が良かったとしか言えないですね」

 ハクリとルルの内心は「ヒェェェーーー」だ。



 距離にすれば1メートル強。その間近に妖精族の王がいる。現実的にあり得ない。

 ハクリは王宮勤めだ。見目の良さと腕っ節が買われ、各国の要人や他国の王の護衛にもついた事がある。が妖精族王の噂は聞くが、見るのは初めてだ。


 噂も噂。ハクリはしっかり聞いていた。あの美貌の王がやっと伴侶を得て、性別が固定されたと。

 それがまさか女ではなく『男』だと。

 妖精族特有の可愛いらしい男ではなく、見事な肉体美をもつ長身の『男』だと。それは王宮での噂を独占していた程だ。最近はその話しか聞かない。


 まさかその話題の妖精王エティエンヌフューベルが、目の前に。




 完全に言葉を失っている二人。凛音はルルに抱きついた。


「ルルさん、本当にすみません。たくさんの嘘をつきました…。
 私はこの世界の人ではないから、常識がなくて。エティエンヌフューベル様の事も、恐くて言えなかった」

「そんな、私、なんて、失礼な事、を、いっぱい」



 震えながら片言で話すルルに、凛音は吹き出す。

「ね、ね、ルルさん的にどう!?」



 どう!?と笑顔で言われてもルルは困惑しかない。凛音からそれは旦那が美しいと、ハクリより全然イケてると、口酸っぱく言った意味を深く理解した。

 そりゃ比べるのもおこがましい。相手がまさか、あの妖精王とは思わない。
 落ちてきた凛音が、泣きながらエティエンヌフューベルの名を聞いたはずだと思い出した。



「凛音の、言う通り、だと、思います」

「でしょう!! ハクリさんは? え、ハクリさん!?」



 ハクリは頭を90度に下げていた。

「頭を上げよ、王として出向いている訳ではないから必要ない」

「…………しかし…」



 ハクリは頭を上げづらい。凛音への疑問ピースがはまった瞬間、彼女への暴言の数々が走馬灯のように頭を巡っていく。

 出会いは…裸だったし。殺されるのでは…と戦々恐々。


「凛音が落ちた場所は風呂場だった。女のルルが落ちた凛音を運べるとは思わない。ならば運んだのはハクリだな。
 凛音の裸体を目にして、さらに抱き上げたのを理由に、人生を終わりにしたいか?」


 エティエンヌフューベルの身体から紫炎の炎が舞い上がる。

 甘やかでエロティックな雰囲気に包まれていた広間が、一気に灼熱地獄と化する。股をモジモジしていたギャラリーメンツらは、今は命の危機を感じていた。


(忘れてたぁぁぁ、けど、不可抗力だし!!ヤキモチ恐っ)
「エ、エティエンヌフューベル様!!まって」


「頭を上げよ、ハクリ」


 最後の審判を受ける気分でハクリは頭を上げた。それを満足に思ったのか、エティエンヌフューベルから吹き上がる紫炎は止んだ。

 エティエンヌフューベルは抱き上げていたミミルを凛音に渡し、ハクリの前に足を進めた。


 緊張でガチガチに固まるハクリを、エティエンヌフューベルは正面から抱きしめたのだ。



「……?…(ん!?)……」


「冗談だ、凛音からは私以外の男の匂いはしないから。ただ運んだだけと分かる。
 凛音を助けてくれ感謝する、ありがとう…。妖精族にとって伴侶は一人、失うことは死を意味するからな」


 男に抱きつかれて嬉しいのは初めてだ。身体は筋肉質だが、その髪から匂う香りの良いこと。
 エティエンヌフューベルなら、男どうしでもアリかと本気でハクリは思う。

 ハクリの思考はただいま、脱線中。

 ハクリから身体を離したエティエンヌフューベルは、優しい笑みを浮かべたまま…。恐怖の鉄槌をくだす。


「凛音を失ったら最後。狂った私は己自身を紫炎で焼き、暴走した紫炎は何カ国も火の海に沈めていただろうから、何ごともなく良かった」

 良くないだろう。皆々様の正直な意見だ。


「…エティエンヌフューベル様は、相変わらずぶっ飛んでますね」

 呆れた凛音の物言いに、エティエンヌフューベルは低姿勢。


「凛音はあれほど説明しても、まだ私の愛を理解しないのか?」

「理解してますけど…今度意味もなく街の人を脅したら、一か月エッチ無しですからね。
 異世界の常識は、私には非常識なんです!! ねぇーミミル」

「一か月!? 凛音!! そんな恐ろしい条件を提示しないでくれ!!
 一か月も抱かずにいると、気が狂ってしまう!!」


「私、熱風嫌いなんです。めちゃくちゃ肌に悪そうだし。手入れなしで素晴らしく美しいエティエンヌフューベル様とは違うのでね。
 …この街、少しでも燃やしたら一生怨みますからね」


 凛音の一言に青ざめている妖精族美貌の王エティエンヌフューベルに。あれ、夫婦間はどこも一緒。嫁さんが強いんだと、広場は朗らかになっていく。

 実は狼種であるミミルは、がっつり上下関係をつけた。エティエンヌフューベルが強いと思っていたが、何よりも強いのは凛音。


「……ママが最強。ママが一番なの」


 ミミルの声を拾えた広場にいる皆が「間違いない」とうなづいた。



 ***


 さて、いつまでも広場にいるのも…と、なり。居合わせたギャラリーは結末に満足し、さらに凛音を最強と認め、バラバラに散らばった。

 一部の男女、あの張形店で圧勝した凛音の相手が妖精王エティエンヌフューベルだと知った者達は震え上がっていた。

 話題に出すのは禁句だと、全員が黙秘をつらぬく姿勢。


 妖精族特有の見目の素晴らしさ、底知れぬ魔力の強さ、にプラスしての男性生殖器の立派さに、人々は唸る。

 あそこまで完璧だと、恐怖しかない。


 凛音達は、ガガットの店、張形店に併設されたカフェにいる。無論張形店は閉めて、カフェとの間には暗幕をかけた。

 ハーブとガガットは友人の間柄で、阿吽の呼吸で皆の紅茶を手早く用意し、皆の前に手早く並べ菓子まで用意した。



「ハーブさん、ガガットさん、ありがとうございます」

「いえ、ですが妖精王も、同じで構わないのでしょうか…」


 ハーブさんはエティエンヌフューベルを一切見ずに、地面を見ながら話している。いいのだ、妖精王が凄いのはいいのだ。しかし凛音はこういう人に序列あるのが嫌いだ。

 日本人だから余計に感にさわる。目を見ないで話すのは逆に失礼だと感じてしまう。

 普通に話がしたい。ハーブさん以下皆の視線が地面。



「……エティエンヌフューベル様は、顔を見られるのは我慢なりませんか?」

「いや、とくに気にしない。常に見られているからな」

(…確かに、フェア国だって毎度エティエンヌフューベル様に見惚れ、しばし魂を飛ばすのは普通だったわね)



「皆がうっとりガン見しても、怒らないですか?」

「怒らないな、基本凛音以外は興味がない。私に肉欲を求め、どうだと股を開いてくる者なら消し炭にするが。そうでなく会話するくらいはどうとも思わん」

「ヘェ~……」


 何やら不穏な台詞があった。いやにハッキリとした例だ。
 これは間違いなく実際にあった事だろう。凛音の知らない二週間の間に、エティエンヌフューベルは他人の股を見たのだ。

 勝手に見せられたに違いなくとも、凛音は嫉妬でイラつく。


(はぁ!? 股を開いて強請った!? 誰それ!? 妖精族が浮気をしないのは知ってるけど、それでもムカつく。
 エティエンヌフューベル様には、私の陰部しか見ないで欲しいんだけど)


 凛音はイラつく心に蓋をした。

 エティエンヌフューベルの言質をとったのだ、話を進める為、パンッ!!!と手を叩いた。


「はい、皆々様、聞きましたか!? 人身販売の人が来るのかもしれないのでしょう!?
 この際、エティエンヌフューベル様の事は、綺麗過ぎる男性くらいで思ってください。
 ほら、ほら、全人類並べても絶対にトップクラスの容姿ですから、今見なきゃ損ですよ、損」


 凛音が褒めればエティエンヌフューベルの脳内エロ分泌が漏れる。


「凛音、話し合いより、先に一度身体を合わせてからでよくないか?二週間お預けで、私の身体はとても苦しいのだが…」


(ぐはっ、あ、甘さに負けるな!私は負けない!)

「………いやです。エティエンヌフューベル様と性行為したら、とてつもなく長いから無理です」


「何故? 確認ほどの時間でもか? 凛音は私と離れても大丈夫なのか? 身体は疼かないのか?」


 真摯な表情で凛音の手を横からすくい、触れるか触れないかの優しい口づけをする。

 そしてその手を優しく導く。

 エティエンヌフューベルの通常バージョンでも、見事に盛り上がる存在感たっぷりの陰茎の先端、亀頭部分の上にそっと凛音の手を落とした。

 ぶにょ…。
 程よい弾力のある柔らかなブツの感触が手のひらに伝わり、凛音は絶叫。


「ぃぎゃぁぁぁぁぁぁー!!!」



 そう力一杯凛音は叫んだ。ビクッとした面々、凛音は真っ赤だ。


「エティエンヌフューベル様ぁぁぁぁぁぁ!!今度誘ってきたら、浮気しますからね!!
 快楽地獄に落とそうとしたら、本気でエッチ無しにしますよ!!」


 話が進まないのに、凛音はイラついていた。


「悪かった!すまない。凛音に褒められて調子に乗った。浮気は絶対にやめてくれ、なんでも言う事は聞くから」

 凛音には基本低姿勢なエティエンヌフューベル。


「…ママね、最強なの」

 ミミルの中で、凛音は頂点に君臨する主人に確定した。しかし綺麗なパパの味方もする。


「ママ」

「なに?」

 ちょっとだけ不機嫌な凛音に、ミミルは頼む。


「綺麗なママと、綺麗なパパの願いは叶ったの。次はね、綺麗な妹か弟がほしいの。
 ミミルね、お姉ちゃんになりたいの。だめ?」

 キュルンッ。凛音は落ちた。

「だ、だめじゃない!!! 頑張るわ、頑張るわよ!!!」


 思わぬところからの助っ人に、エティエンヌフューベルも大満足だ。

「ミミルはいい子だな」

 またもエティエンヌフューベルから頭上に口づけを貰い、気分は勇者だろう。ふふんっ、てな顔だ。

 場が和んだところで、本題だ。


 見惚れていいならと、顔を上げたらば当然。ルル、キャルル、ハーブ、ガガットは絶賛見惚れて、軽く失神中。

 案の定無事なのは、凛音とハクリとハーベスト、そしてミミルだけになっていた。子供のミミルはお菓子を絶賛試食中。



 エティエンヌフューベルは感謝の気持ちも込めて、討伐計画に、自ら参加を申しでた。

 優しいエティエンヌフューベルの心にマジ泣きしながら「夜には、少しなら大丈夫」と凛音は絆され、性行為の約束を取り付けた。


「ありがとう、凛音」

 そのやりとりに、ハクリもハーベストも夢心地になっていた。





後書き
次はガッツリ18Rです。これでもかの、甘ったるい二人を描きます!! お楽しみに!!

うさぎくま
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