妖精王の味

うさぎくま

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41、広野での出来事

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 基本この世界には獣人しかいない為、移動は自らの足になる。全員で走っているが、緊張から先導する何人かが途中で倒れ吐いた。

 吐いた連中は皆が王宮勤めの騎士達だ。

 ハクリも自身の魔力量が多く、エティエンヌフューベルの近くにいればその膨大な魔力に酔い、吐き気をもよおしていた。

 ハーベストと部下達は主に貿易商の護衛傭兵な為、多少の荒じに対応でき、王宮の騎士ほど魔力が無い為吐くまでには至ってなかった。



「申し訳ございません!!」

(…またか、魔力は抑えているのだがな)

 エティエンヌフューベルは内心ごちる。


 ハクリよりさらに上だと分かる人物が土下座している。一緒にハクリも土下座しているが、顔が真っ青だ。

 エティエンヌフューベルもこの状況が、今朝までした凛音との性行為のせいだと、薄々気づいていた。


(やり過ぎたか…久しぶりだったしな、凛音が強請るから加減が…)


 性別が固定されれば魔力があがるのは妖精族としては当然だが、もう一つは伴侶との性行為が魔力を回復し高める技ともなる。

 相手が心の底から望み求めると、それは万能の妙薬となる。二人の体液が絡み合えば合う方、互いの魔力は底無しに膨れ上がるのだ。

 異世界人である凛音は、魔力無しであるから、その恩恵はあってないものだったが、エティエンヌフューベルは違う。
 いつも以上に求めてくる凛音のいじらしい心は、すでに膨大な魔力あるエティエンヌフューベルには、扱いに困るほどの魔力増大となっていた。



 凛音の事だ、ついてくるかもしれない。エティエンヌフューベル自身、凛音に殺す現場を見せたくなかった。


 凛音が生きた向こうの世界では、人の死は当たり前ではなく。殺しは犯罪者だった。

 向こうの世界を夢という形で見たエティエンヌフューベルは、凛音を手にした時、己が今まで殺してきた人の多さを徹底的に隠すと誓った。

 まさに殺すつもりで出向いているエティエンヌフューベルの姿を見せない為。

 凛音に口では敵わない為(強く出られると言う事を聞いてしまう)快楽地獄に落とし、身体が全停止を余儀なくさせるまで抱き潰した。確信犯だ。


「謝らなくて構わない。魔力量が多い者は離脱してくれ」

「…それでは、流石に…」


 土下座しながらも反論してくる。シェルバー国の王宮騎士としてのプライドを完膚なきまで叩かれた気分なのだろう。


「分かった、案内はここまででいい。この先は街や集落がないな。巻き込む人がいなければ私一人で相手をし、潰してこよう」

 死刑宣告の言葉と受け取った。

「妖精王が何故そこまでされるのですか!? 我が国を滅ぼそうとされるのか!? 力で屈服させるおつもりでしょうか!?」

「隊長っっっ!!!」


 ハクリは隣りで土下座をしながらも、隊長の妖精王への失礼な言動に、非難の目を向けた。だが、隊長は土下座しながらも悔しくあるのか、地面に爪を立てていた。

 そう今のシェルバー国は穏やかではない。

 王国騎士団のトップとして、国の行く末を案じているのだ。
 若くして病で倒れた王にはまだ後継者がいない。代替わりを必要とするのか、病が治るのを待つのか。今、新たな後継者を探すのかと、不安定な情勢に気を張っているのだ。

 そこでエティエンヌフューベルが現れた。勘違いもする。



(そうもとれるか…凛音で脳内が一色だったから気づかなかった…)


 全くの興味がなく、名乗らせもしなかった。これはエティエンヌフューベルのミスだ。

 流石に街のいさかいに王国騎士団のトップが来ているとは、エティエンヌフューベルにも予測できなかった。



「説明不足で悪かった。国を乗っ取る気などない。フェア国は全ての国の中立国、侵略して我々に益があるか?」

「ですから何故と……」


 忠誠を誓った自国の王以外に頭を下げる悔しさが滲み出ている。

 エティエンヌフューベルは面倒になり、隊長である男の腕を掴み、力を持って無理矢理立たせた。

 息を吐く空気が混じるほどの距離にいる妖精王。まさか子供のように立たされるとは思わず、顔が惚けている。


「私の性別が固定されたのは、見て分かるな」

「は、い…」

 聞いていると、頭には入っているかと確認し、話し出す。


「私は伴侶を得た。長く独り身で生涯唯一の伴侶に会わずに死を迎えるとも思っていたが、出会えた。焦がれ続けたたった一人の伴侶。
 自然発生のブラックホールに唯一の伴侶が落ちた。何の獣人性ももたない娘だ。半分は諦めていた。たった二週間だが私は狂いかけた。
 ハクリのおかげで、ミミルのおかげで、私は伴侶を失わずに、私自身が狂う前に再会できた。
 これは感謝の意を込めての行動だ。国がどうかとは関係ない。
 伴侶を…私の命より大切な凛音を助けてくれた礼だ」


 まさかそんな事で、としっかり顔に書いてある。

 妖精族は全体数が少ない。妖精族には決まった伴侶しか愛せない身体で精神だとは、眉唾物。

 フェア国から遠くはなれたシェルバー国に至っては、知ってはいても、それを100%理解しているかというと違うのだ。

 己の常識が全てなのも理解ある。が真実は真実。

 ハクリがベラベラと凛音やエティエンヌフューベルの内情を言わないのに好感を持ったが、それが勘違いを招いていたのだ。



「妖精族の伴侶は生涯ただ一人。伴侶を失った妖精族の末路は、禁止していても自決が多く、自決せずともほぼ衰弱死と知らぬ訳ではないだろう」


 エティエンヌフューベルは意識して微笑んでみせる。突如みせられた優しい表情に、完璧に隊長は心を掴まれた。

『男』ではあるが、エティエンヌフューベルは人として最高レベルの顔面。惚れさすのは得意。


「……存じて…おります…」

 呆然と呟く隊長にエティエンヌフューベルはついでに謝罪もすます。


「流石の私も、普段ここまでの魔力はない。昨日の夜から早朝まで一度も抜かずに、凛音と性器を繋げた。
 しばらく起こさない為に精力を搾り取った。魔力酔いを起こすほどなのは、それが原因だろう」

「はい…(朝まで、一度も抜かず!?)」


 辛うじて疑問は飲み込めた。が隊長は目を向いて驚愕しているし、先程まで吐いていた騎士もエティエンヌフューベルの情事にドン引き。

 そう凛音が圧勝した旦那の陰茎サイズ勝負。

 あの時あの場にいた者が、実際映し出された尋常じゃないほど立派なイチモツを見た者が、この討伐隊メンバーに何人もいた。

 あの巨根で絶倫、半日ずっと腰を振り続けられるのか??それで彼女は大丈夫なのか??

 一晩ずっとなど大概無理だ。腰は痛くなるし、擦り過ぎと擦れて痛くなる。そもそも膣内を穿つほどの強度を陰茎が長時間保ち続けるのは不可能だ。

 化け物だ…と全員が思った。通常状態でも、股間部が見事に張っているのは、いやでも見たらわかる。


 同じ人と思うなという事だ。強制的にそう思うおうと皆の意見が一致した。ちょうどその時。


 ドーーーッッッーーーーーーーン!!!!!!

 森からバザバザっと鳥が飛び立つ音がした。


「来たか…」

 エティエンヌフューベルは、あちから出向いてくれたのに感謝する。

「一箇所に固まってくれ、手出し無用」


 そう宣言し、エティエンヌフューベルは背中に生える純白の羽根を一枚抜いた。大の男の手二つ分ほどの長さの大きな羽根を、背後に固まる王宮騎士と傭兵隊の前の地面にザクっと突き刺した。

 誰でも分かった、透明でかつ強固な魔力の壁が出現した。


「妖精王、これは…」

 馬族でありキャルルの伴侶であるハーベストは呆然と呟く。

「戦いたいかもしれないが、静かに見るだけにしてもらう。紫炎を操る私には、皆で一緒が無理なタイプだ、尋問する時まで待て」

 エティエンヌフューベルの言葉に皆がしっかり頷く。森から一斉に出てきた奴らはあまり会ったことのない連中だった。

(ほう…珍しい奴らだ…)


 森から出てきた奴らは、驚くほど上位の昆虫獣人、爬虫類獣人だった。見事にまともそうな獣人がいなくエティエンヌフューベルは鼻で笑う。

 一番前に陣取っているのがこの一団をまとめる長で、蟷螂獣人だった。戦闘準備オッケーなのか、見た目まんま蟷螂。服をきた歩く蟷螂だ。

 その他メンバーも皆が皆、一番戦闘能力があがる獣の二足歩行型をとっている。
 肉食動物の獣人型は凛音には大好物だったろうが、昆虫が大の苦手の凛音は、この状況に失神していたはずだ。

 小さな羽虫バッタにギャーギャー喚き、柔らかい胸部をエティエンヌフューベルの腹に押し付けながら、半泣きで抱きついてきたのを思い出した。

(くくっ、連れてこないで正解だ。凛音に嫌な思いなどさせたくない)



 ***



 人身売買を生業にする団員達。昨日、珍しい獣人性の匂いがしない女との出会い話を、上層部に嬉々として説明した。


『あれは高く売れますぜ』

『何の獣人性がない奴は、落ち人だ。弱いが繁殖能力が凄いし、高額取引きできるな』

『あちらも一度引いた俺達がまたくると、読んでいるはず』

『大丈夫だ、俺が行こう。味見をさせてもらいたい』

『だんなが行くのですかい!? 穴を広げ過ぎて使い物にならなくせんで下さいよ、くっくっくっ』



 昨晩の会話は、獣人性ない女の腹に吐くほどの精液を入れてやろうと幹部の一人蟷螂獣人は喜んでいた。

 下っ端では敵わない、ハーベストクラスの護衛騎士がいたから、その場はひいたのだ。だからこそより上位の獣人が、街にくりだす予定だった。


 ***

 予定とは、だいぶ違う。


 街に行き、置いてきた子供と何の獣人の匂いもしない無臭女を掻っさらうつもりだったのに、出鼻をくじかれた。

 土埃が落ち着いた先には…。

 そしてあり得ない人が目の前に。


「あん!? なんだっ、お前た…ち…、えっ!?」

「あ、あれっ、あの羽根は…妖精族?っというか」


 偉そうにあたりに響く声を発した蟷螂獣人は、発言後 硬直する。




 完全に砂埃が引いた先には、妖精族特有の純白の羽根を持つ人の姿。

 体高30センチが普通の妖精族と違い、この世界基準の身長よりもさらに高い。一見女と思うほどに長い風に靡く薄紫色の髪と整った輪郭。

 しかし骨格が男。分かりやすく確認するべき箇所を目視すれば、前方を押し出す型に膨れる股間部は間違いなく男だと。

 妖精族でこのサイズ間の『男』は、現在、たった一人。


「ま、ま、まさか妖精王!?」

「まさか!?」




 昆虫獣人は基本子供が多い。

 女の腹で子供を育てる種族は、一度に一人か二人しか産めない身体。しかし昆虫獣人は一度に200から300ほどの卵で子供は生まれていく。

 よって増えるのも早い。だが、かれらは寿命が短い。主となるモノに疑問を持たず付き従う種。
 頭脳戦というよりは肉体が全て。引き連れた人数は数えきれないほどだ。



 その人数に、ハクリら王宮騎士もハーベストと傭兵達もゾッとする。シェルバー国側の人間もだが、当然向こう側もエティエンヌフューベルの姿に生命の危機を感じていた。

 広い草原の真ん中に立つ圧倒的な美貌のエティエンヌフューベルに、蟷螂獣人は恐る恐る言葉を投げかける。

 これがエティエンヌフューベルの地雷だと気づかずに。



「……妖精王と、お見受けするが」

「そうだ」

「遠くの麗しい国からわざわざご苦労様です。こちらは用事がございまして…そう立ち塞がれていると。なんとも通りにくいのですが」

「通す気はない」

「何故か? 私は昆虫獣人蟷螂族、商売を手広くしております、ゾーイと申します。
 すぐそこに街がありましてね。私の花嫁を迎えに行きたいのですよ」

「花嫁だと。軍隊を引き連れてか?」


「そうですよ、私の妻はわがままな女でしてね。ちょっとお仕置きが必要なのですわ。
 すぐに股を開く女ですが。あの柔らかな腹に子供を植え付けたくて。どうも我々は同じ種だと頭からバリバリ食べられるのですよ。
 何の獣人性もない女ですからね、食われる心配もなく、楽しみで。穴を広げ過ぎて死んでしまうかもですが、所詮落ち人。養分になれて喜んで腰を振ってきますわ」


 誰の話を、誰の女の話をしているのか。


 基本的にこの世界に住人は声がデカい。とくに昆虫族は輪をかけて声が通る。その声が、ただ広い草原に高らかに響き渡った。


 うん、奴は死にたいらしい。

 静かに蟷螂獣人の話を聞くエティエンヌフューベルに、ハクリとハーベスト、王国騎士の隊長や騎士、傭兵人は背中に冷たい汗が大量に流れていた。


 間に合って良かった。あの、おしゃまな女の子ミミルのおかげで最悪の事態を回避できた。できたのだが、自分達は無事に帰れるのか…?

 目の前に立つ妖精王が恐い。

 嵐の前の静けさだ。


 おい、今、お前が自分の女だと主張して、ありもしない妄想睦言を言った《女》は、その妖精王のただ一人の伴侶だぞ、と。声を大にして言いたい。

 奴は死んだ。それはいいが俺達も無事に五体満足で帰れるかという不安にかられていた。不安いっぱいの中、エティエンヌフューベルの美声が放たれる。



「奇遇だな。私の伴侶も落ち人だ」

「………は?」



 蟷螂獣人の馬鹿な返答の瞬間。


 ゴゥーーーーーーーーーーーーーーという音と共に地面が揺れる。

 エティエンヌフューベルが立つ場所から半径数十キロ。空気圧に耐えれなく、地盤が一気に下がった。

 魔力が少ない者達が圧力に負け、身体がひしゃげて死んでいく。



 エティエンヌフューベルは、生まれて初めて他者に対し憎悪をもった。




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