悪役令嬢だって恋をするーラシェルとアベルの邂逅ー

うさぎくま

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24、二人の世界に乱入者

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 喚くマルシェは無視だ無視。これ以上聞いていると耳が腐る。ラシェルは口汚く罵るマルシェを丸無視した。


「アベルお兄様、歩けるかしら?」

「ラシェル、ラシェル、ラシェル」


 アベルは座り込んでいる。

 筋肉の塊といえる肉体美をもつアベルを支えるのはラシェルには無理だ。アベルの隣に座りながら、思案する。


「ラシェル、ラシェル、ラシェル」

 うっとりし、トロけきった顔でラシェルの名前を連呼するアベル。だいぶ普通じゃない。

 媚薬の力だろうし、アベルは正気じゃないと理解しても、この美味し過ぎる状況にラシェルのまともな思考が崩壊していく。


「もう、アベルお兄様の顔、エロい!! 全人類の下半身を虜に出来そうなレベルよ!!」

「…ラシェル、ラシェル、ラシェル、」


 見つめ合う。立っていたら身長差で顔が遠いが、座っていたなら麗しい顔が目の前。アベルの切れ長の金色の瞳にラシェルが映り込むのが確認出来た。


(綺麗…アベルお兄様の綺麗な瞳の中に私がいるわ)

 しばらく見つめ合い、先に動いたのはアベルだ。


「ラシェル…」

 アベルが距離を詰めても、ラシェルがアベルから離れていかないのを、嫌がってないのを確認してから、アベルはゆっくりと顔を傾けて、軽く啄ばむ優しい口づけを送る。

 どれだけ媚薬にやられていても、ラシェルはアベルの唯一無二の女神だ。
 無理強いというワードは存在しない。ラシェルから拒否がないかの確認は、アベルにとって最優先事項。


 どこまでも優しく、甘さ爆発的なアベルの声色に、ラシェルのお股もグチョグチョだ。

 夫婦になるラシェルとアベルだ、初夜がもう少し先か。うん、別に今でも構わないのではないか? アベルの濃厚な色気に当てられたラシェルは、意味不明な言い訳を自分自身にした。

 ラシェルが少し身体を離せば、アベルも従順に口づけをやめる。とても賢い番犬だ。
 しかし無理矢理性欲を高められた身体は、男としての魅力を振りまき、腰をビクビクさせている。その状況ながらも、ラシェルの次の行動をおとなしく待っていた。


(うわっ、これは…エロいわ…)

 アベルの身体は辛うじて射精はしていないが、ダラダラと先走りをたらしながら、腰が上下に揺れている大変、可哀想な状態だ。

 勝手知ったるアベルの身体。

 衣服から飛び出した巨根の先端部、パクパクと閉開しながらダラダラと我慢汁を流す部位。その敏感な部分をラシェルは指の先で、円を描くように軽く撫でる。

「ンァッ……ァッ…」


 鼻に抜ける甘さ爆発のアベルの喘ぎ声に、ラシェルの口から涎が垂れた。

(アベルお兄様、エロくて…最高…)


「…ラシェ…ル…」



 切なく名を呼ばれたなら、ラシェルの理性は崩壊した。


 ラシェルは自分に気合いを入れながら下着を脱ぎさり、猛々しく上を向くアベルの性器を自身の性器に標準を合わせ跨ぎながら、力いっぱい叫ぶ。


「うん、もう性行為してもいいわよね! 据え膳食わぬは女の恥よ!!」


 ラシェルの穴にアベルの巨根を入れようとした瞬間、何故か身体が浮いた。

 上のお口は何度も口づけをしたのに、肝心の性器どうしは未遂に終わる。アベルの性器もダラダラだが、ラシェルのお股もビチョビチョだ。


「のぅ!?」

 脇に手を入れられ、持ち上げられている。プランと宙に浮く身体にラシェルは不満たっぷり。


「…ラシェル。女ではなく、男の恥だろう。自分優位な考え方はやめろ」

 まさかの父が乱入。


「酷いっ!! お父様だっていい年して性行為を覚えたての少年みたいに、所構わずお母様とズコズコしているのに、何故、私はダメなの??」

「やめてくれ!! いったい、いつ、私が所構わずした!?」


 父であるヴィルヘルムは頭痛がした。

 昔から、そう前世から今世にいたるまでラシェルは、ヴィルヘルムとティーナにとって、愛のキューピットか仲違いさせる悪魔か、紙一重だった。


「あらっ、お父様。しらばっくれないでくれますか?この間、走る馬車の中で挿入しましたわよね。
 馬車の揺れもあって大変気持ち良かったらしいと、風の噂で聞きました。嫌だわ、娘として恥ずかしい…」

 ピシッ!! ヴィルヘルムの身体が硬直する。



 何故、ラシェルが知っているのか??
 バレたのか…。いや、従者が話すはずはない。

 では誰だ? エル(ティーナ)様との性行為中は、気をつけていても非常に周りが見えなくなる。まさか見られていたのか?? 


 不安が頭を過ぎる。

 ヴィルヘルム自身は何を言われても構わないが、世間にティーナを悪く言われるのは我慢ならない。


 色々思うことがあるのだろう。本気で固まる父に、ラシェルは呆れていた。



(いや、話の出どころはお母様一択でしょうよ)

 そうなのだ。大好きな娘のラシェルは、実は前世で唯一の親友だった。赤裸々トークもついついラシェルに話してしまうのだ。

 ラシェルも気になるし、目をキラキラさせて聞くから、筒抜けなのだ。

 いまだ、ラシェルを抱えて固まる父にラシェルは反撃をやめた。


「…お父様、聞いたのはお母様からです。心配しなくてもお母様の悪い噂なんてありません。大変できた女性という噂ならてんこ盛りですが。
 真っ赤な顔でポゥーとされていたから、聞き出したの。
 最近話題になった庭園を見に行ったはずなのに。感想を聞いても、お母様、ずっーーーーーと、『気持ち良かった…』しか言わなかったから、どうせアンアンズコズコやったのだと思って、詳しく聞き出したの」

「……ラシェル」

「お父様、照れてないで、おろしてくださいな」


 思わぬところから〝あの時〟の感想を聞けて非常に満足なヴィルヘルムだったが、今の状況を思い出した。


「ここで性行為はするな。お前はいいかもしれないが、正気に戻った後、アベルは発狂するぞ」

「何故?」

「何故だと聞き返すな。本当に分からないのか?」


 地頭が賢く、政治的な考え方や部下や従者への対応など国を率いるのには文句なくラシェルは優秀だが、いかせん男心が分からない。

 それも下半身がゆるゆるな男の心理は熟知して策を練れるのに、初恋を拗らせ一途に一人を愛する男の気持ちは理解できない。


「どうせいつかはやるのに、今は駄目な意味が分からないわ。アベルお兄様も準備万端。私も準備万端。さぁ、何が駄目?」

「………ここが隠し通路だと理解しているか?お前は、アベルとの初体験が、ここでいいのか?」

「いいわよ」


 間髪入れずのラシェルからの返答に、ヴィルヘルムの美麗な顔が引きつる。

 いい訳ない。どれだけラシェルとの初体験に夢を持っているのかを知るヴィルヘルムはアベルを全面的に擁護する。


「ラシェル…お前がよくても、アベルが駄目だ。諦めろ」


 いまだ父であるヴィルヘルムに抱えられている状態のラシェル。駄目だと言われたので、改めてアベルの股間に目をやる。

 うん、デカい。立派、ずるっと入る強度良し。再度ラシェルは納得した。


「バッチコイ状態ですわ!!」

「……薬でだろう。今は意識も朦朧としているぞ」

「やだぁぁー」


 頬をふくらまし嫌々と駄々をこねるラシェルを下ろし、ヴィルヘルムはラシェルを見ながら微笑んでいるアベルに向き合う。

 ヴィルヘルムの姿も瞳には映らないようだ。

 アベルとヴィルヘルムの性器はほぼ同じサイズ。よってこうなってしまった状態の収め方も熟知している。

 陰茎にあまり刺激を与えないようにトラウザーズの中に手際よくいれてやる。


「あぁぁぁぁー!! ちょっと、お父様!! 今、アベルお兄様の性器を触ったわね!!」

「お前は少し静かにしろ」


 ヴィルヘルムは頑固だ。それはもう頑固中の頑固だ。

 父の意思を曲げれるのは母くらいだが…それも…だ。母、ティーナの身体や精神に負荷がかかる用件なら、問答無用で叩き切り、頑無視。
 例えボルタージュの王でも、各国の重鎮でも、我が子でも、母がトップオブトップであり、母中心で世界が回っている。


「お父様…頑固過ぎると、お母様に嫌われるわよ」


 ヴィルヘルムの背中がビクッ!! となり、ラシェルにはニヤリと笑う。

 アベルの立派な巨根を、トラウザーズに入れて前部分を手際よく閉めているのを背後から観察するラシェルにヴィルヘルムは溜め息。


「……見てやるな…。アベルが可哀想だ」

「あのね、目の保養だから見るわよ」

「目の保養? 一度言葉を習い直してこい」


 アベルの衣服を直し終わったヴィルヘルムは、この上なく呆れた顔をラシェルに見せた。
 どのような顔をされてもラシェルは全く、微塵も心に響かない。

 ラシェルは、チチチっ。と指をヴィルヘルムの美麗な顔の前で左右に動かす。そしてふんぞり返りながら宣言した。


「アベルお兄様も。もちろんお父様も、キラキラしい綺麗なお顔からは想像もできない、うわっ!?って、二度見しちゃうくらい立派な〝男の象徴〟は大変最高グッジョブよ!!
 裸体彫刻も裸足で逃げ出す立派さ!! もう~よだれが垂れるほどに目の保養なのよ。そんな立派なイチモツを観賞できるのは、私の特権だもの。使うわ!!」

 ヴィルヘルムは色々、そう色々諦めた。

「…………分かった、もう勝手にしてくれ」


 ヴィルヘルムは下ネタを嬉々として話す娘を無視し、アベルを肩に担ぐ。切り替えが早いラシェルが、疑問を口にする。


「なぜ担ぐの? 怪力のお父様でも筋肉の塊って身体のアベルお兄様は重いわよ。背に背負うのが楽じゃないかしら?」

「……ラシェル。少しは男の事情(アベルの状態)を察してくれ」

「…う? あ、そうか。担ぐ方が股間に負荷がかからないのね!! まだ硬いままだものね」


 おぉー。なるほど!!と満面の笑みで納得しているぶっ飛んだ娘に、ヴィルヘルムは頭痛がしてきた。

 ラシェルは我が物顔で、ヴィルヘルムに担がれたアベルのテント張りに膨れた辺りを突く。



「突くな。触るな」

「もぅー、お父様のケチ」

「……ラシェル…」


 アベルは何がよくてラシェルなのか? 確かにラシェルはエル様に似て、賢くてプロポーション抜群で美人、浮気も…まぁしないだろう。

 しかし一番の難点は性格だ。多少性格がゆがんでいようがアベルにとってはそれも愛しい…愛しのか…?

 ぽやぽや可愛い妻を思い描き、全く妻に似てない戦車のような娘。ラシェルはあまりにも前世の魂の性格(質)に引きずられているとしか思えない。

 育て方が悪かったのかと、ヴィルヘルムは自身を責めた。


「…はぁぁぁ……」

「お父様、ため息禁止。絶対に今のため息、私の悪口入ったため息よね」

「……アベルが起きたら、好きにしたらいい。それまではどうか我慢してくれ」

「分かってるわ。大事にされてるのよね、私は!」


 しっとり笑うラシェルに、ヴィルヘルムも微笑み返す。両者思う事はあるが、愛している事に変わりはなかった。







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