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第1話 奏→カナデ
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「以上の事から、織田信長を魔王と呼んで恐れる人も少なくなかったんだ」
社会科教師の声が教室に響く。
しかし、時間は午後。梅雨時の湿った空気も相まって生徒の大半が眠気と戦っていた。中には既に睡魔に呑まれてしまった奴もいる。
ジメジメとした空気はやる気を奪う。もちろん俺も例外ではなく睡魔に首を噛まれているような状態だった。
あと……もうちょっとか……
授業時間は残り5分。なんとか睡魔を振り払おうと、俺は歴史の教科書に目を落とした。
そこにはどこか抜けた、しかし同時に威厳に溢れる信長の肖像画があった。
「魔王……か」
魔王と呼ばれる人間がどんな気分なのかはよくわからないが、少なくとも俺だったらいい気はしないな。
イヤ、待て待て……そもそも冴えない庶民の俺が考える事じゃないよな……
馬鹿みたいな思考を眠気とともに追い払っていると授業終了を告げるチャイムが鳴った。
「奏君。一緒に帰りませんか?」
帰りの荷物をまとめていると幼馴染の輝沙羅が話しかけて来た。
黒城輝沙羅は俺の幼馴染だ。真面目で美人。学業優秀な非の付けどころのない(強いて言えば運動が若干苦手な事だろうか)自慢の幼馴染だ。
そんな彼女に話しかけられてる俺は、クラスの男子から嫉妬の念が篭った眼を向けられている。
向けられてる視線に僅かに顔をしかめながら俺は輝沙羅の方を向いた。
「ゴメン、今日は蓮香と淳也と約束があるんだ……」
「そうなんですか……わかりました。こちらこそすみません」
シュン……とした顔をして俯く輝沙羅。そんな顔されると罪悪感が湧いてくる。
「あぁ……輝沙羅、それならお前も一緒に来ないか……カラオケ、アイツらも輝沙羅がいた方がきっと喜ぶぞ?」
「・・・」
輝沙羅は眼を伏せて迷っている様子だった。
「お誘いありがとうございます。でも私、急に割り込むみたいになってるし、それに今日はお財布を忘れちゃって……」
「大丈夫だよ、これくらい。それにカラオケ代くらいなら俺が立て替えておくぞ?いや、何なら奢ってやっても……」
「ごめんなさい、やっぱり今日は1人で帰ります」
ペコリ、と頭を下げて輝沙羅は教室から出て行った。
「ったく、輝沙羅のやつ……あんなによそよそしくしなくても良いじゃないか」
蓮香と淳也の所へ向かう道中、ブツブツと呟きながら歩いていた。
俺と淳也と蓮香。そして輝沙羅は幼稚園からの付き合い、いわゆる腐れ縁というヤツだ。
小さい頃はよく一緒に遊んだものだった。
いつからだろうか……輝沙羅がみんなといるのを拒むようになったのは。
気がつくと淳也と蓮香と待ち合わせした場所についていた。
「おーい!奏!」
蓮香が俺に気づいたらしく大声をだしながら手を振っている。すぐ隣では淳也がスマホを扱いながら立っていた。
「もう、奏遅すぎ!学校終わってから何分経ったと思ってるの!?」
「悪い悪い、ちょっと考え事しててな……」
蓮香が頬を膨らませて怒鳴ってくる。
う、うるせぇ……もちろん悪いのは遅れた俺だがこんな人通りの多い所で怒鳴らなくてもいいじゃないか。
『・・・』
通行人がこちらにチラチラと視線を向けてくる。
流石にこれは恥ずかしい。
(淳也、助けてくれ……!)
俺の視線に気づいたのか淳也はスマホをポケットにしまい爽やかな笑みを浮かべて蓮香の肩に手を置いた。
「おいおい、蓮香。奏が時間にルーズなのは昔からだろ?今更怒る必要もないさ」
「淳也……でも!」
「でも、じゃない。それに、ここだと周りの人に迷惑がかかる」
(ナイス淳也!流石は俺の親友……!)
淳也に密かにアイコンタクトを送る。淳也も俺のアイコンタクトに気づいてウィンクを返してきた。そしてニヤッの笑みを浮かべ、
「そのかわり、今日のカラオケ代は奏が奢るってさ」
ふざけんな
「わかったわ……じゃあ今日のカラオケ代と明日のお昼にジュースで許してあげる」
「ちょぉぉい!カラオケ代3人分って結構バカにならないだろ!それになんでジュースまで増えるんだよ!」
「違うわよ?ジュースは輝沙羅も入れて4人分よ」
「くっそ、今月ピンチなのに……」
「バイトしてない奏がわるいだろ」
えっと……カラオケ代が3人で2100円でポテトとかも頼むだろうし、それに昼のジュース代が……
「ま、カラオケ代は普通に割り勘でいいだろ。だから奏、その世界が終わったみたいな顔やめろ」
「うう、ありがとう淳也」
「もう……!これに懲りたら今度は遅刻しないでよね?」
「うん、ゴメン蓮香」
心優しい友達に恵まれて俺は幸せだ。
『おい蓮香、素直にならないと奏はお前に振り向かないぞ?』
「ん?なんか言ったか淳也?」
「なんでもないわ!それより早くいこ!私今日はたくさん歌うから!」
そう言って蓮香は淳也を引っ張って行ってしまった。
「お、おう……」
なんで蓮香が答えたんだ……?
『ちょっと……!奏に聞こえたらどうしてくれるのよ!』
『ハハッ、悪い悪い。でもな、俺が思うに蓮香はもうちょい素直になった方がいいと思うぞ?』
『た、タイミングってのがあるのよ!』
「いやー歌った歌った……!」
カラオケでは3時間も歌いまくり家に帰り着いた俺はすっかりヘトヘトになっていた。
「輝沙羅も来れば良かったのに……」
制服も脱がずにベットに寝転がりSNSアプリを起動させる。
俺と淳也と蓮香と輝沙羅で作ったグループを開く。
『撮った写真送っといたよー』
『サンキュー』
蓮香と淳也のメッセージが送られていた。さっきカラオケで撮影した写真も貼られている。
「あざーす……っと」
俺もメッセージを送る。すぐに既読がついた。
『輝沙羅も次は来なさいよねー!』
蓮香からメッセージが送られてきた。俺のメッセージに既読をつけたのは蓮香だろう。
俺は何となくグループアイコンの写真を見た。中学生の頃、4人でキャンプに行った時に撮影したものだ。この時はいつも4人で遊んでいた。
「このキャンプ……輝沙羅の親父さんに連れて行ってもらったんだっけ……ん」
妙に頭がクラクラする。なんだかすごく、眠い……
たくさん歌ったせいで疲れたか?それとも授業中に必死に眠気を我慢したツケが来たか……
徐々に意識が薄れていく。ダメだ、とりあえず風呂に入らないと……
だが、俺の意識とは関係なしに体からは力が抜けていく。
「輝沙羅も来なさいよね……か」
蓮香のメッセージが思い浮かぶ。
あの頃は楽しかった。いつまでも4人で……4人で……
「また、4人で遊びたいな……」
『……カナデ……カナデ……!』
誰だ……?ん、ていうか俺、やっぱ寝たのか?母さんが風呂の催促でもしに来たかな……
「わり……母さん、すぐ入るよ」
眠気を払いながら体を起こした俺の目に飛び込んできたのはさっきまで一緒に歌ってた幼馴染だった。
……は?
「カナデ!カナデなのよね!?あぁ、夢じゃない……?ホントに、ホントによかった……!」
「あ、うん……奏だけど……蓮香?」
見た目は蓮香だがなんだか雰囲気が違う。
というかここ何処だ?どこかのテントの中っぽいが……
『おい!英雄様が起きたってよ!』
『ホントか!?流石人類の希望、ノートリアス様だ!』
テントの外から何やら騒がしい声が聞こえる。
「えっと、蓮香……さん?」
「グスッ……何?カナデ?」
ふむ、やっぱりこの娘は蓮香なのか……
「えっと、ノートリアス様って……誰?」
「何言ってんのよ……カナデ=ノートリアス。貴方の事よ?暁の英雄さん」
……なるほど、俺が英雄か……となると俺が取るべき行動は……
……バタッ
さっさと眠って目を覚ます事だ。
第九園 氷獄宮
燃え盛る炎の中にある氷の宮殿。その会議室では蠢く影達が円卓を囲み軍議をしていた。それは奈落の底に相応しく、不気味な光景だった。
「それで……次は辺獄の兵どもを動員して西の大国を落とすという話だが……」
「私は反対です!まだ兵の訓練も万全ではありません!それに西の大国には神造兵が鹵獲されていると聞きます!ここはもっと慎重に……」
「馬鹿が……もし我々がまごついている間に神造兵を完全に制御されたらそれこそ危険だ。暁の英雄を討った今こそ好機!我が君!今こそ西の大国を攻め落とすべきです!」
「我が君、御思案くだされ!辺獄の兵十万を犬死させるわけにはいきませぬ!」
そんな影達を少し離れた座から眺める者がいた。
影になっており表情こそ読めないが、その瞳には全てに退屈している……その気になれば世界の一つなど、いとも簡単に凍りつかせてしまえるというような冷ややかな意思を感じ取ることができた。
その者はひどく面倒くさそうに、だが威厳を持って部下達の討論に結論を出すために口を開こうとした。その時だった。
「閣下!閣下!報告!報告!」
その者の足元で干からびた果実をかじっていた蛇が急に蛇に似つかわしくない声で叫んだ。
影達が会議をやめて一斉に閣下と呼ばれていたその者の方を向いた。
その者は足元の蛇に向かって手をかざす。
「あぁ、僕が出ますよ、閣下」
そんなその者を制するかのように同じく円卓から外れていた影が蛇を掴み上げる。
「私だ。報告を……あぁ……何?カナデ=ノートリアスが復活だと……!?」
……ビクゥッ!?
カナデ=ノートリアスの名前が出た途端に場の空気がより一層張り詰めたものになった。それほどまでに暁の英雄の力は凄まじいものなのだ。
だがそのような中、その者は獰猛に……いや、心の底から嬉しそうに笑っていたのだ。
(流石だ……流石は私が認めたこの世で唯一の存在だ……)
『ノートリアスだと……!?ありえない、奴は完全に死んだはずでは……?』
『いや、そもそもあの男が魔術具の砲撃に被弾した程度で死ぬなどありえないのだ……』
『マズイぞ……ノートリアスは閣下にとっては不倶戴天の敵。奴が生きていたと知った以上、この中の誰かは首が飛ぶぞ……!』
慌てふためく部下達を見ながらその者は深くため息をつく。
(好敵手の復活を祝うものが誰一人としていないではないか、情けない……いや?)
そもそもそのような狂戦士はこのようなだらしのない会議には参加しないか。
興奮の傍でそんな思考を巡らせていたが、流石にこれ以上部下を混乱させていても仕方ない。
「情けない……」
まるで奈落の底から全てを塗りつぶすような声が響く。その声を聞いて影達は一斉にその者の方を見る。
「英雄ごとき……人間ごとき……なんだと言うのだ。所詮は弱小種族。英雄といっても魔法具に頼らなければただのサル同然……」
その者の気迫に気圧されて影達は何も言えなくなっていた。
否、言えないのではない。言わないという方が正しい。
その通りなのだ。所詮、奴は人間。圧倒的な上位種である自分達が負ける道理はないのだ。
奴は、一兵卒程度の魔術具で、一度は死んだのだ。ならば我々が倒せない筈がない。
『そうだ、これは英雄の復活ではないのだ……』
『むしろ……手柄が増えたと考えれば……』
影達が色めき立つ光景を見てその者は満足そうに笑みを浮かべる。
「さぁ……血に濡れよ。血に踊れ。血に歌え……!」
その者は手を振り上げ叫んだ。
「今こそ……世界を絶望に閉ざすのだ!」
「見事な演説でしたよ。閣下」
軍議が終わり、会議室の中には二つの影が残っていた。どちらも円卓から外れていた影だ。
「世辞はいい。それより、以前に回収した神造兵の解析は進んでいるのか?」
「滞りなく。同じく先日回収した魔法具の実戦配備、それを基にした魔術具の開発も順調です。10日後には形になるかと……」
「遅い、魔法具は3日で形にしろ」
「……かしこまりました。あぁ……そういえば、閣下」
部屋から出て行こうとする影に向かってその影はニヤリと笑い呟く。
「英雄が蘇ったと聞いて、やけに嬉しそうにしていましたね」
「・・・」
「手柄など気にする必要のない閣下が、なぜあのように喜ぶので……」
「黙れ……!」
そう叫ぶと影は扉の奥に消えた。
「……ククク」
部屋に1人取り残された影はニヤニヤとおぞましい笑みを浮かべる。
「あぁ……いい。やはりキミは最高だ……僕の……」
手を広げ、身体を反らせて影は笑いながらはっきりと告げた。
「僕のキサラァッ!」
社会科教師の声が教室に響く。
しかし、時間は午後。梅雨時の湿った空気も相まって生徒の大半が眠気と戦っていた。中には既に睡魔に呑まれてしまった奴もいる。
ジメジメとした空気はやる気を奪う。もちろん俺も例外ではなく睡魔に首を噛まれているような状態だった。
あと……もうちょっとか……
授業時間は残り5分。なんとか睡魔を振り払おうと、俺は歴史の教科書に目を落とした。
そこにはどこか抜けた、しかし同時に威厳に溢れる信長の肖像画があった。
「魔王……か」
魔王と呼ばれる人間がどんな気分なのかはよくわからないが、少なくとも俺だったらいい気はしないな。
イヤ、待て待て……そもそも冴えない庶民の俺が考える事じゃないよな……
馬鹿みたいな思考を眠気とともに追い払っていると授業終了を告げるチャイムが鳴った。
「奏君。一緒に帰りませんか?」
帰りの荷物をまとめていると幼馴染の輝沙羅が話しかけて来た。
黒城輝沙羅は俺の幼馴染だ。真面目で美人。学業優秀な非の付けどころのない(強いて言えば運動が若干苦手な事だろうか)自慢の幼馴染だ。
そんな彼女に話しかけられてる俺は、クラスの男子から嫉妬の念が篭った眼を向けられている。
向けられてる視線に僅かに顔をしかめながら俺は輝沙羅の方を向いた。
「ゴメン、今日は蓮香と淳也と約束があるんだ……」
「そうなんですか……わかりました。こちらこそすみません」
シュン……とした顔をして俯く輝沙羅。そんな顔されると罪悪感が湧いてくる。
「あぁ……輝沙羅、それならお前も一緒に来ないか……カラオケ、アイツらも輝沙羅がいた方がきっと喜ぶぞ?」
「・・・」
輝沙羅は眼を伏せて迷っている様子だった。
「お誘いありがとうございます。でも私、急に割り込むみたいになってるし、それに今日はお財布を忘れちゃって……」
「大丈夫だよ、これくらい。それにカラオケ代くらいなら俺が立て替えておくぞ?いや、何なら奢ってやっても……」
「ごめんなさい、やっぱり今日は1人で帰ります」
ペコリ、と頭を下げて輝沙羅は教室から出て行った。
「ったく、輝沙羅のやつ……あんなによそよそしくしなくても良いじゃないか」
蓮香と淳也の所へ向かう道中、ブツブツと呟きながら歩いていた。
俺と淳也と蓮香。そして輝沙羅は幼稚園からの付き合い、いわゆる腐れ縁というヤツだ。
小さい頃はよく一緒に遊んだものだった。
いつからだろうか……輝沙羅がみんなといるのを拒むようになったのは。
気がつくと淳也と蓮香と待ち合わせした場所についていた。
「おーい!奏!」
蓮香が俺に気づいたらしく大声をだしながら手を振っている。すぐ隣では淳也がスマホを扱いながら立っていた。
「もう、奏遅すぎ!学校終わってから何分経ったと思ってるの!?」
「悪い悪い、ちょっと考え事しててな……」
蓮香が頬を膨らませて怒鳴ってくる。
う、うるせぇ……もちろん悪いのは遅れた俺だがこんな人通りの多い所で怒鳴らなくてもいいじゃないか。
『・・・』
通行人がこちらにチラチラと視線を向けてくる。
流石にこれは恥ずかしい。
(淳也、助けてくれ……!)
俺の視線に気づいたのか淳也はスマホをポケットにしまい爽やかな笑みを浮かべて蓮香の肩に手を置いた。
「おいおい、蓮香。奏が時間にルーズなのは昔からだろ?今更怒る必要もないさ」
「淳也……でも!」
「でも、じゃない。それに、ここだと周りの人に迷惑がかかる」
(ナイス淳也!流石は俺の親友……!)
淳也に密かにアイコンタクトを送る。淳也も俺のアイコンタクトに気づいてウィンクを返してきた。そしてニヤッの笑みを浮かべ、
「そのかわり、今日のカラオケ代は奏が奢るってさ」
ふざけんな
「わかったわ……じゃあ今日のカラオケ代と明日のお昼にジュースで許してあげる」
「ちょぉぉい!カラオケ代3人分って結構バカにならないだろ!それになんでジュースまで増えるんだよ!」
「違うわよ?ジュースは輝沙羅も入れて4人分よ」
「くっそ、今月ピンチなのに……」
「バイトしてない奏がわるいだろ」
えっと……カラオケ代が3人で2100円でポテトとかも頼むだろうし、それに昼のジュース代が……
「ま、カラオケ代は普通に割り勘でいいだろ。だから奏、その世界が終わったみたいな顔やめろ」
「うう、ありがとう淳也」
「もう……!これに懲りたら今度は遅刻しないでよね?」
「うん、ゴメン蓮香」
心優しい友達に恵まれて俺は幸せだ。
『おい蓮香、素直にならないと奏はお前に振り向かないぞ?』
「ん?なんか言ったか淳也?」
「なんでもないわ!それより早くいこ!私今日はたくさん歌うから!」
そう言って蓮香は淳也を引っ張って行ってしまった。
「お、おう……」
なんで蓮香が答えたんだ……?
『ちょっと……!奏に聞こえたらどうしてくれるのよ!』
『ハハッ、悪い悪い。でもな、俺が思うに蓮香はもうちょい素直になった方がいいと思うぞ?』
『た、タイミングってのがあるのよ!』
「いやー歌った歌った……!」
カラオケでは3時間も歌いまくり家に帰り着いた俺はすっかりヘトヘトになっていた。
「輝沙羅も来れば良かったのに……」
制服も脱がずにベットに寝転がりSNSアプリを起動させる。
俺と淳也と蓮香と輝沙羅で作ったグループを開く。
『撮った写真送っといたよー』
『サンキュー』
蓮香と淳也のメッセージが送られていた。さっきカラオケで撮影した写真も貼られている。
「あざーす……っと」
俺もメッセージを送る。すぐに既読がついた。
『輝沙羅も次は来なさいよねー!』
蓮香からメッセージが送られてきた。俺のメッセージに既読をつけたのは蓮香だろう。
俺は何となくグループアイコンの写真を見た。中学生の頃、4人でキャンプに行った時に撮影したものだ。この時はいつも4人で遊んでいた。
「このキャンプ……輝沙羅の親父さんに連れて行ってもらったんだっけ……ん」
妙に頭がクラクラする。なんだかすごく、眠い……
たくさん歌ったせいで疲れたか?それとも授業中に必死に眠気を我慢したツケが来たか……
徐々に意識が薄れていく。ダメだ、とりあえず風呂に入らないと……
だが、俺の意識とは関係なしに体からは力が抜けていく。
「輝沙羅も来なさいよね……か」
蓮香のメッセージが思い浮かぶ。
あの頃は楽しかった。いつまでも4人で……4人で……
「また、4人で遊びたいな……」
『……カナデ……カナデ……!』
誰だ……?ん、ていうか俺、やっぱ寝たのか?母さんが風呂の催促でもしに来たかな……
「わり……母さん、すぐ入るよ」
眠気を払いながら体を起こした俺の目に飛び込んできたのはさっきまで一緒に歌ってた幼馴染だった。
……は?
「カナデ!カナデなのよね!?あぁ、夢じゃない……?ホントに、ホントによかった……!」
「あ、うん……奏だけど……蓮香?」
見た目は蓮香だがなんだか雰囲気が違う。
というかここ何処だ?どこかのテントの中っぽいが……
『おい!英雄様が起きたってよ!』
『ホントか!?流石人類の希望、ノートリアス様だ!』
テントの外から何やら騒がしい声が聞こえる。
「えっと、蓮香……さん?」
「グスッ……何?カナデ?」
ふむ、やっぱりこの娘は蓮香なのか……
「えっと、ノートリアス様って……誰?」
「何言ってんのよ……カナデ=ノートリアス。貴方の事よ?暁の英雄さん」
……なるほど、俺が英雄か……となると俺が取るべき行動は……
……バタッ
さっさと眠って目を覚ます事だ。
第九園 氷獄宮
燃え盛る炎の中にある氷の宮殿。その会議室では蠢く影達が円卓を囲み軍議をしていた。それは奈落の底に相応しく、不気味な光景だった。
「それで……次は辺獄の兵どもを動員して西の大国を落とすという話だが……」
「私は反対です!まだ兵の訓練も万全ではありません!それに西の大国には神造兵が鹵獲されていると聞きます!ここはもっと慎重に……」
「馬鹿が……もし我々がまごついている間に神造兵を完全に制御されたらそれこそ危険だ。暁の英雄を討った今こそ好機!我が君!今こそ西の大国を攻め落とすべきです!」
「我が君、御思案くだされ!辺獄の兵十万を犬死させるわけにはいきませぬ!」
そんな影達を少し離れた座から眺める者がいた。
影になっており表情こそ読めないが、その瞳には全てに退屈している……その気になれば世界の一つなど、いとも簡単に凍りつかせてしまえるというような冷ややかな意思を感じ取ることができた。
その者はひどく面倒くさそうに、だが威厳を持って部下達の討論に結論を出すために口を開こうとした。その時だった。
「閣下!閣下!報告!報告!」
その者の足元で干からびた果実をかじっていた蛇が急に蛇に似つかわしくない声で叫んだ。
影達が会議をやめて一斉に閣下と呼ばれていたその者の方を向いた。
その者は足元の蛇に向かって手をかざす。
「あぁ、僕が出ますよ、閣下」
そんなその者を制するかのように同じく円卓から外れていた影が蛇を掴み上げる。
「私だ。報告を……あぁ……何?カナデ=ノートリアスが復活だと……!?」
……ビクゥッ!?
カナデ=ノートリアスの名前が出た途端に場の空気がより一層張り詰めたものになった。それほどまでに暁の英雄の力は凄まじいものなのだ。
だがそのような中、その者は獰猛に……いや、心の底から嬉しそうに笑っていたのだ。
(流石だ……流石は私が認めたこの世で唯一の存在だ……)
『ノートリアスだと……!?ありえない、奴は完全に死んだはずでは……?』
『いや、そもそもあの男が魔術具の砲撃に被弾した程度で死ぬなどありえないのだ……』
『マズイぞ……ノートリアスは閣下にとっては不倶戴天の敵。奴が生きていたと知った以上、この中の誰かは首が飛ぶぞ……!』
慌てふためく部下達を見ながらその者は深くため息をつく。
(好敵手の復活を祝うものが誰一人としていないではないか、情けない……いや?)
そもそもそのような狂戦士はこのようなだらしのない会議には参加しないか。
興奮の傍でそんな思考を巡らせていたが、流石にこれ以上部下を混乱させていても仕方ない。
「情けない……」
まるで奈落の底から全てを塗りつぶすような声が響く。その声を聞いて影達は一斉にその者の方を見る。
「英雄ごとき……人間ごとき……なんだと言うのだ。所詮は弱小種族。英雄といっても魔法具に頼らなければただのサル同然……」
その者の気迫に気圧されて影達は何も言えなくなっていた。
否、言えないのではない。言わないという方が正しい。
その通りなのだ。所詮、奴は人間。圧倒的な上位種である自分達が負ける道理はないのだ。
奴は、一兵卒程度の魔術具で、一度は死んだのだ。ならば我々が倒せない筈がない。
『そうだ、これは英雄の復活ではないのだ……』
『むしろ……手柄が増えたと考えれば……』
影達が色めき立つ光景を見てその者は満足そうに笑みを浮かべる。
「さぁ……血に濡れよ。血に踊れ。血に歌え……!」
その者は手を振り上げ叫んだ。
「今こそ……世界を絶望に閉ざすのだ!」
「見事な演説でしたよ。閣下」
軍議が終わり、会議室の中には二つの影が残っていた。どちらも円卓から外れていた影だ。
「世辞はいい。それより、以前に回収した神造兵の解析は進んでいるのか?」
「滞りなく。同じく先日回収した魔法具の実戦配備、それを基にした魔術具の開発も順調です。10日後には形になるかと……」
「遅い、魔法具は3日で形にしろ」
「……かしこまりました。あぁ……そういえば、閣下」
部屋から出て行こうとする影に向かってその影はニヤリと笑い呟く。
「英雄が蘇ったと聞いて、やけに嬉しそうにしていましたね」
「・・・」
「手柄など気にする必要のない閣下が、なぜあのように喜ぶので……」
「黙れ……!」
そう叫ぶと影は扉の奥に消えた。
「……ククク」
部屋に1人取り残された影はニヤニヤとおぞましい笑みを浮かべる。
「あぁ……いい。やはりキミは最高だ……僕の……」
手を広げ、身体を反らせて影は笑いながらはっきりと告げた。
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一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
最弱弓術士、全距離支配で最強へ
Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」
剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。
若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。
リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。
風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。
弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。
そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。
「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」
孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。
しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。
最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
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