夜だけの異世界英雄伝説

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第2話(上)無量無辺・インクリッター

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「もう!いきなり倒れるから……ホントにびっくりしたんだからね……」
「あぁ……悪い」
 夢から覚めることに努めた結果、俺は悪夢のような心臓マッサージを受ける結果となった。まだ、殴られた胸筋が痛む。
(しっかし……どうしたもんかなコレ)
 最近はこの手の小説が流行っていると聞いてはいたが、まさか自分が同じ目にあうとは……
 しかも、異世界にまさか自分の幼馴染がいるなんて……
 つか俺、異世界にいるってことは死んだのか?昨日の夜帰って寝て……死んじまったのかよ……!?
「……?どうしたのよ?なんか顔青くない?」
「あぁ、ちょっと、いやかなりヤなことがあってな……」
 ヤベェよ……マジヤベェよ……なんとかして帰る方法を探さねぇと……
「……復活して早々疫病に掛かったとかやめてよね?」
「あぁ……それは大丈夫だ。元気元気」
 蓮香の心配を解くために腕を振り回して健康なことをアピールする。それにしても
「……何よ?」
「い、いや……なんでもない」
 やはり今目の前にいる蓮香は俺の知っている蓮香とは格好がまるで違う。
 所々が擦り切れた軍服に身を包み、色褪せたマントを纏う姿は歴戦の強者の威圧を感じさせる。
 そして、軍服は蓮香の綺麗な体のラインを強調していて、蓮香には似合わない……なんというか色気が……
「どうしたの!?顔真っ赤よ!?」
「いや、ホントに大丈夫だ」
 しかし、俺がまさか異世界で英雄だとはな……
 とりあえず帰る方法が見つかるまではこの状況に甘えさせてもらおう。
「なんなら回復魔術でも使ってあげましょうか?」
 魔術……って魔法か!?へぇ、そんなものもあるのか……
「あぁ、そうだな……頼むよ」
 想像しうる限り、歴戦の英雄っぽい口調で頼む。英雄に見えるだろうか?
「おっけ、ええと……たしか……」
 どうやら問題なかったようだ。
 それにしても魔法か……やっぱり呪文とか唱えるのだろうか。定番だと「ヒール」とかだがもしかすると某大作ゲームみたいに「ホ○ミ」とか「ベ○イミ」の可能性もある。
「はい、これ回復魔術」
「おう、ありがとな」
 蓮香から赤いの液体が入った小瓶を受け取る。……ん?これが回復魔法?
「あの、蓮香さん……これ魔法?」
「は?私が回復魔法なんて使えるわけないでしょ。ほら、早く飲んで」
「あ、あぁ」
 どうやらこの世界の回復魔法は液体らしい。
 とりあえず飲んでみるか。どれどれ匂いは……爽やかな香りだ。嗅いでいるだけで疲労感が和らいでいくような気がする。
「はぁ……それにしてもカナデ、ホントにどうしちゃったのよ……」
 蓮香が何か言ってるが聞き流すことにしよう。どれ、まずは一口……お、結構美味い。現実で味わった物で例えるならエナジードリンクが近いだろうか?若干鼻に残る柑橘系の香りが絶妙なアクセントになってる。
「さっきからどう考えても行動がおかしいし……もしかして」
 それに液体が喉を通るたびに全身の疲労感が消えていくのを今度は肉体的に感じる。俺は瓶の中に残っている液体を全て口に含んだ。
「あなた……カナデじゃない?」
 口の中の液体を吹き出してしまった。


「記憶を失ってる……?」
「そ、そうなんだよ!実はな……」
 記憶を失ってるということでこの場は誤魔化そうとする。大丈夫か……?
「……まぁ、カナデが私にそう言うのなら信じるけど」
 やけに素直に信じるな……ありがたい限りだ。
「とりあえず、どのくらい覚えてるか聞くわね。まず、私の名前は……さっきから呼んでるし大丈夫かな?」
「あぁ、でも苗字がわからん」
 そう言ってから思ったがこの世界では苗字の概念はあるのだろうか?
「レンカ=パールヴァティよ」
 どうやら大丈夫だったようだ。
「今の状況は分かる?」
「さっぱりわからん」
「魔法と魔術の違いは?」
「同じじゃないのか?」
「重症ね……」
 どうやら俺の知識状況はかなりヤバイらしい。
「そうね……じゃあこれ見て」
 そう言ってレンカが懐から取り出したのは拳銃だった。だが拳銃にしては大きい。40センチくらいだろうか?
 「これは魔法と魔術、どっちだとおもう?」
 たしかレンカは魔法が使えないんだったよな……?ってことはつまり、
「魔術だな」
「魔法よ」
 ウソつかれた。
「……別に、ウソなんかついてないわよ……私が使えないのはあくまで回復魔法なんだから」
「あぁ、そういうことか……っていうかなんで今俺の考えてることがわかったんだ……?」
「……女の勘ってヤツ。ともかくコレが私の魔法」
 そういうとレンカは俺に銃口を向けた。
「絶対命中・ミストルティン。その効果は、所有者がヒットさせたいと思った対象に絶対に弾を当てる能力」
「絶対命中……ミストルティン……?」
 俺は向けられてる銃口に手を伸ばしながら呟いた。
「そ、例えどんな距離でも標的の正確な場所と姿さえ感知出来れば例えどんなに逃げ回っても避けることは出来ないわ」
 レンカは拳銃を俺の手から逃すようにクルッと回し、懐にしまった。
「厳密に言えばコレは魔法具っていう道具で、コレによって起こる現象を総称して魔法っていうの」
「なるほど……」
「で、次は魔術の説明だけど……さっき飲んだ液体あるでしょ?アレは魔術具っていうの」
「魔術具……?」
「そう、その魔術具によって回復魔術が起動してアンタの疲労を取るのよ」
 なるほど……どちらもRPGで言う魔法の類と同じみたいだ。ん?でも、違いはあるって言ってたよな?結局魔法と魔術ってどう違うんだ?
「……じゃあ、次は魔法と魔術の違いについて説明するわ」
 お、ナイスタイミング。丁度聞こうと思っていたところだ。コレも女の勘ってヤツだろうか?
「一言で違いを言うなら奇跡と代用……かな?」
「どういうことだ?」
「人体が持つエネルギーである魔力。それを使って時間や仕事を代用するのが魔術。起こり得ない奇跡で現実を書き換えるのが魔法」
 たとえばね……と言いながら指をクルクル回すレンカ。少し可愛い。
「さっきカナデは回復の魔術具を飲んだことによって、カナデは自分の魔力を使って数時間、ベッドなんかで安静にしたっていう時間経過を代用したの」
 すごい便利だな……
「で、私のミストルティンの場合は弾を放った時に私の魔力を使って、外れるって結果を全て改変して強制的に当たるって結果にしてるの。すごいでしょ?」
「たしかに凄いな……そんな武器を作れるなんて……」
 俺が驚きを隠せないでいると、レンカは頭を抑えて溜息をついていた。
「な、なんだよ……?」
「カナデ……アンタホントにヤバいわね……魔法具は作るものじゃなくてするものでしょ?」
「そ、そうなのか!?」
「そう、そして魔法具を使える人間はその魔法具に認められたものだけ……誰でも使えるわけないでしょ」
「じ、じゃあ俺はレンカのミストルティンは使えない……ってことなのか!?」
「そうよ……ていうかアンタは私のミストルティンより遥かに攻撃的なヤツ持ってるでしょ?」
「え、マジで?」
「今それを取りに行ってるんでしょうが……」
 ま、まぁ、そうだろう。流石に英雄だから自分の魔法具くらい持ってるよな……
「カナデ、自分の魔法具の使い方……覚えてる?アンタの結構難しかったはずだけど」
「スマン……それもわからないんだ」
「ん……まぁ、出来ること自体は単純だったしカナデならすぐ思い出せるわ」
「あぁ、だといいんだけどな」
 どんな魔法具なのだろうか……
 やはり英雄というからには剣とか……そこら辺だろうか?いや、もしかしたら魔法具というのはどれも近代的な武器の形をしてるのだろうか?
 自分の魔法具への考察を重ねる俺の前に巨大な鉄の扉が見えてきた。
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