夜だけの異世界英雄伝説

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第3話(中)作戦会議

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「さて、皆の衆。まずは現状の整理からだ。少佐、報告を」
 カイゼル大佐がそう言うと、瘦せぎすの男がタブレットのようなものを持って前に出てきた。
 アレは何だろう?レンカに小声で聞いてみるか。
『レンカ、あの人が持ってる物って……』
『アレ?アレは魔法具エクス・マキナの端末よ』
『魔法具!?スゴイな……あの人も魔法具に選ばれた人なのか』
『アレ自体はただの端末。魔法具じゃないわ。エクス・マキナの所有者は確かウェストランデの王城にいるはずよ』
 ウェストランデ……?何だろうそれは?
『ウェストランデは西の大国よ。機械技術とかにおいては最も発展していると言われているわ。……まぁ、魔術なら私たちの極東皇国は負けてないけどね!』
 極東皇国?うーん、地理についても後で調べておいた方がいいのかもしれない。
 それに、ウェストランデが技術的に凄く発展した国ならもしかすると現実世界に帰る手段があるかもしれない。
 何とかして行く機会がないだろうか?
「……以上です」
 あ、どうやら報告が終わったみたいだ。
 完全に聞いてなかった。
「ふむ、カナデ君の活躍によりアガレス将軍を討ち取り辺獄奪還まであと少しというところか」
 辺獄奪還、か。そういえば今この世界の状況ってどんな感じなんだろうか。
 どこかしらと戦争しているのは間違いないようだが……
「既に、第二園にまで進軍している部隊もあります。早急にこの第一園を統治し、その部隊と合流するべきです」
「しかし、第二園に通じる砦には多くの咎人がひしめいています。やはり援軍を待つべきでは?」
 咎人?第二園?何のことだろう?
 新しい単語の連続に戸惑っている俺をよそにカイゼル大佐は意見をまとめていく。
「ふむ、皆の衆の意見はわかった。確かに最終砦には多くの咎人がいるだろう。確実に勝つのであれば援軍を待つのが定石だろう」
 しかしな……と、カイゼル大佐は続ける。
「しかし、それをするのはこの戦だけを見た場合だ。大局を見るのであればこれ以上第二園に進軍した部隊を孤立させるのはマズイ。私は早急にこの第一園を統治し、第二園へと安定して進める路を開くべきだと考えるが……」
「しかし大佐!咎人どもの力は本物です。最終砦ともあればどんな化け物が潜んでいるか……やはり援軍を待つべきです!」
『そうです!戦に勝つにはやはり数です!』
『大佐、第二園に進軍したのは人類が誇る精鋭達と聞いています!ならば、少しくらい進軍が遅くなってもいいのでは?』
『12英雄の1人、錬鉄の英雄様もそこにいると聞いています!我々は砦を安全に攻略することを第一とするべきです!』
 口々に意見が挙がる。
 なんだか収集つかなくなってきたな。
 あ、そうだ……
『なぁ……レンカ、12英雄って何のことだ?もしかして俺もその中の1人だったりするのか……?』
『そうよ。ちなみに私もその中の1人よ』
 おぉ……12英雄かぁ。なんかカッコいいなぁ。
 俺が12英雄という言葉の響きに感動してる間に本部内は混乱を極めていた。
 しょうがないな……ここは12英雄の1人であるこの俺が、カッコよく演説して場を収めるとするか。
 英雄らしい声を出すために咳払いをして声の調子を整えていると、
「静まれっ!!」
『……!?』
 威厳の効いた声が本部内に響いた。
 カイゼル大佐だ。あの人、優しそうな顔をしているのにあんな大声が出せるのか。正直、怖かった。
「皆の衆、これは戦意を削がないために秘密にしておけと言われていたのだが……」
 そういうとカイゼル大佐は目を閉じて言った。
「第二園に進軍した錬鉄部隊はそこで捕虜になっていた者達と集落を作り陣を整えていたらしいのだが……」
 カイゼル大佐は咳払いをする。
「大佐、錬鉄部隊は……クリームヒルト大尉はどうしたのですか?」
 レンカが急に声をあげる。
 クリームヒルト大尉?レンカの知人だろうか?
カイゼル大佐は呻くような声を出して口を開く。
「彼らは現在、第二園の咎人どもの軍隊に集落を攻められて、大変危険な状況にあるらしいのだ……」
 そんなカイゼル大佐の言葉に本部内は戸惑いの色を見せる。
『馬鹿な!?クリームヒルト大尉が、錬鉄の英雄である彼がいるのに!』
『そんな……彼らのような精鋭部隊でも第二園は過酷なところなのか?』
「静まれっ!!」
カイゼル大佐の二度目の喝に本部内は再び静まり返る。
「彼らは、凶暴な冥獣達を倒し、第二園に降り立った後、捕虜達を解放し、補給無しで陣を建てる任務を遂行していたのだ。危険な状況であるのも承知の上だろう」
 カイゼル大佐は地図の本部と記された印を囲むように円を描きながら続ける。
「既に、本部周辺の駐屯部隊には援軍の要請を出しておいた……第二園に陣を敷くクリームヒルト大尉達が討たれた時、人類の勝利への道は大幅に後退するだろう」
 カイゼル大佐は隊員達の方を向き、続ける。
「理不尽なことを言ってることは理解の上だ。だが敢えて言おう。人類勝利の片翼は我々が背負っているのだ。我々は、たとえ命を賭してでもこの第二園の先行部隊を守らなければならない」
 すごいプレッシャーを感じる。だがどうしてだろうか。この人の言葉を聞いているとフツフツと勇気が湧いてくる気がする。隣を見るとレンカと目が合った。レンカも何かを覚悟したように頷く。
「我々人間は力が弱い。我々人間は魔力も……もしかすると知力も咎人どもからすれば低いのかもしれない」
 俺達人間は弱いでも……でも!
「だからこそ!我々は群れる!群がる!スズメバチを倒すミツバチのように!そうなればいくら強大な咎人とて……」
 カイゼル大佐はニヤリと笑う。
「倒せぬ道理はないのではないか?」
 隊員たちはそれぞれ顔を見合わせ、何かを決心する。
「戦士達よ!皆の衆がこの老骨に命を預けてくれた暁には絶対の勝利を約束しよう!勝利は我ら、人類にある!」
 カイゼル大佐のときの声に歓声が挙がった。もはや臆病風を吹かせるものは誰一人いなかった。
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