夜だけの異世界英雄伝説

3999

文字の大きさ
7 / 12

第3話(下)作戦会議

しおりを挟む
「すごかったな、カイゼル大佐……」
「ええ、そうね……」
 作戦会議が終わり、俺とレンカは移動していた。
「カナデは自分が何すればいいか解った?」
「あぁ!バッチリだ。英雄らしくガッツリ活躍してやるよ!」
 カイゼル大佐の演説の後、作戦会議は滞りなく進んだ。
 カイゼル大佐が提案したのは裏からの奇襲と、正面からの突撃だった。


「まず、我々を正面部隊と奇襲部隊に分ける。正面部隊は敵の本隊と睨み合いをし、その間に奇襲部隊は敵を裏から叩く」
 カイゼル大佐は地図上の敵の砦の後ろ側を指差す。
「この辺りに潜伏し、出来る限り大規模な攻撃を放つ。それが奇襲部隊の仕事だ」
 次にカイゼル大佐は砦の正面の青い凸印を指差す。
「ここに私たちの陣を敷く。ここはなだらかな丘になっているから砦内の動向が監視しやすいのだ。奇襲で敵が慌てふためくタイミングで一気に攻める。それが正面部隊の仕事だ」
 さらに……とカイゼル大佐は続ける。
「敵は我々の中のある人物をかなり警戒している。その人物は敵将をたった1人で追いつめ、討ち取ったのだからな」
 カイゼル大佐は俺を指差して続ける。
「カナデ君、君がこの作戦のカギなのだ」


「とにかく、俺はいつも通り突っ込んで皆んなの道を作ればいいんだろ?」
「まぁ、間違ってはないけど……あんまり調子乗って単騎で進みすぎないようにね?」
「わかってる。同じヘマはしねぇよ」
「コーデリアは第二園の先行部隊の為に温存しておきたいしね……」
「コーデリアって、俺を治療してくれた人だよな?お礼言っとかなくていいのか?」
「アイツ、そういうのすごく嫌うから言わなくてもいいわよ。それよりアンタを担いで来た弟君にでも言ってやったほうがいいんじゃないの?」
「あぁ、コーデリア姉弟には世話になったな……」
 弟の方も見かけたらお礼を言っておこう。


 歩いているうちに何やら活気溢れる空間に出た。
 たくさんの人々が慌ただしく動いては武器のような物や車両を弄っている。
「ここは?」
「総合ドッグよ。ここで装備を点検したり戦闘用車両を整備したりしてるの。私たちも早く自分の装備を換装しましょ」
「お、おう……」
 俺の中で異世界というと、魔法はあっても現実世界に比べて科学技術面では劣っているイメージがあったが、どつやらそれは間違いらしい。
 ここにある機械やら兵器やらはおそらく魔術技術も利用されているのだろうがそれ以上に高度な科学技術のそれによって成り立っているように感じた。


「ここが、更衣室。私は隣で着替えてるから、何か問題があったら呼んで。声は通すから」
「あぁ、わかった」
 更衣室の中は現実のものと特に変わりはなかった。
 ロッカーがたくさん並んでいるところからもこの部屋は1人用ではないことがわかるが中には誰もいなかった。
 女子更衣室とは巨大な一枚の衝立で仕切られておりたしかに声は通しそうだ。
「ハァ……」
 中央に置いてあるベンチに深く腰掛けて深くため息をつく。
 いろんなことがあった。ここに来てどれくらい経っただろうか?2時間か、3時間か。
 結局俺は現実では死んでしまったのだろうか?
 だとすると俺はこれからこの世界で英雄として生きていかないといけないのだろうか?
 もし本当に死んだのだとしたら母さんや父さんは大丈夫だろうか……?それに、
「蓮香、淳也、輝沙羅……」
 不安だ。俺には無理だ。英雄なんて。いくら力があっても……あんな、血にまみれた戦いなんて……
『カナデー?なんか言ったー?』
「ッ……!?」
 衝立の向こうからレンカの声が聞こえる。
 ……そうだよな、いくら違う世界の人間だとしても彼女はレンカだ。
 そしてカイゼル大佐も皆んな、俺に期待してくれてるんだ。この作戦は俺にかかってる……
 俺がしっかりしないと!
「いや!なんでもないんだ!あぁ、そうだ」
 そういえばレンカに聞きたいことがあったんだ。
「なぁ、レンカ。咎人とか第二園ってさっき言ってたけどさ、それって結局のところなんのことなんだ?」
 さっきの会議からずっと気になっていたことだ。
 なんとか知っているふりをして誤魔化していたがこのあたりでレンカに教えてもらった方がいいだろう。
『あぁ、そういえばそれも忘れてるって言ってたわね』
 衝立の向こうからレンカが呻く音が聞こえる。
『結構長くなるけどいい?』
「あぁ、着替えながら思い出す」
『わかったわ……けっこう昔の話なんだけどね、世界は元々、5つに分かれていたの』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

R・P・G ~女神に不死の身体にされたけど、使命が最低最悪なので全力で拒否して俺が天下統一します~

イット
ファンタジー
オカルト雑誌の編集者として働いていた瀬川凛人(40)は、怪現象の現地調査のために訪れた山の中で異世界の大地の女神と接触する。 半ば強制的に異世界へと転生させられた凛人。しかしその世界は、欲と争いにまみれた戦乱の世だった。 凛人はその惑星の化身となり、星の防人として、人間から不死の絶対的な存在へとクラスチェンジを果たす。 だが、不死となった代償として女神から与えられた使命はとんでもないものであった…… 同じく地球から勇者として転生した異国の者たちも巻き込み、女神の使命を「絶対拒否」し続ける凛人の人生は、果たして!? 一見頼りない、ただのおっさんだった男が織りなす最強一味の異世界治世ドラマ、ここに開幕!

処理中です...