夜だけの異世界英雄伝説

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第5話(下)砦攻略

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「報告します!人類軍は砦正面の小高い丘に陣を形成!開戦の機会を伺っているようです!」
「ほう……来たか」
 一方、咎人が守護する砦では人類軍の陣中と同じく兵達が慌ただしく動いていた。
 アガレス亡き後、この砦の司令室の主となったのはヴァッサゴだった。
 このヴァッサゴは地獄ではそこそこに名の知れた軍師で、未来を読むことができる、といわれていた。
 そんなヴァッサゴがこの砦の任に付いたのは他でもない、親しかったアガレスの仇討のためだった。
 本来、ヴァッサゴは第三園のいくつかの区域を任されていたが此度の戦いのみ魔王に願い、この砦を請け負ったのだ。
「報告します!人間たちが兵達を集め集会を始めた模様!おそらく開戦に踏み切るようです!」
「……巨大な鎧を着た人間の姿が前線に視える。おそらくこれがノートリアスか……」
「予知……でございますか?」
「はい。魔弓部隊を城門上に立たせてください。彼との白兵戦はできるだけ避けるように」
「承知しました!」
「あぁ、それと……裏の方に近接に長けた部隊を配置するように。山間部を移動している部隊が視えます」
「奇襲部隊でございますね。承知しました!」
「はい、ではお願いしますね」
 兵はキレのある敬礼をして、司令室から出て行った。
(状況と未来視から整理するに、人間の作戦はノートリアスを先頭にした正面の大軍で気を引いている間に裏に兵を回しての奇襲。未来視で視えた奇襲部隊は軽装だった。となると……あれは捨て駒のようなものだろう)
 先の戦いでノートリアスは深手を負った。
 その傷を治すために人類軍は例の魔法具を使っただろう。
(アレは何度も使えるものではない。つまり負傷は避けられない奇襲部隊には重要な将を配置するとは考えられない。とすると本命はやはり正面のノートリアス軍の突破力)
 おそらく、あの男は兵達をなぎ倒し私の元まで到達するだろう。
 だがそのころには魔力は底をつき、自慢の大型魔術外装も崩壊寸前。
 その時こそ……
「その時こそ、私の魔法で敵をとってやるぞ……アガレス」

「ふむ……敵は城壁上に兵を置いたか……」
「敵の武装は主に弓や銃などの遠距離武器ですね」
 カイゼルは人類軍の陣から敵軍の様子を観察していた。
「まだ、軍の編隊も終わってないのだが……まるで手を読まれているようだな」
「おそらくは、マキナと同じ類の魔法でしょうね。作戦の変更は?」
「必要ない。今から変更しても兵達を混乱させてしまう。だがそうだな……最前線を装甲車に変えるか……」
「装甲車を盾に?」
「砲弾もありったけだ。射程に入り次第壁上の敵を駆逐する」
「了解しました」
「頼んだよ」
 部下の男が走っていく姿を見届けたカイゼルは人類軍の前線付近に目を向けた。
 そこには巨大な鎧に身を包んだ男が大型二輪車両にまたがる姿があった。
「準備は済んだ。後は頼んだよ、カナデ君」

そして、太陽は完全に沈み辺りは暗闇に包まれた。
 時刻は午前1時。人類軍は進軍を開始した。
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