あやかし団地 管理人見習い日誌

双月ねむる

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第一章 団地に来ちゃった見習い管理人②

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 乗り換えを経て、終点近くの駅で降りる。改札を抜けると、すでに空気が変わっていた。少し古い商店街と、懐かしいタイプの看板。昭和の匂いがする電気屋、手書きの値札が並ぶ八百屋。駅前ロータリーの時計は、どう見ても昭和から動いていない。針は三時を指したまま、永遠に止まっているかのようだ。

「えーっと……裂苦楽ヶ丘第一団地……」

 おばさんが送ってきたメッセージの住所を確認しながら歩くと、視界の向こうに、それは現れた。

 異様に巨大な建物群。
 凛は思わず立ち止まった。息を呑む。

 同じような五階建ての棟が、ずらりと並んでいる。外壁はくすんだクリーム色で、ところどころにヒビが走っていた。時間の経過が、そのまま建物の表情になっている。中庭には鉄棒と、塗装のはげた動物型遊具。かつて誰かが喜んで乗っていたであろう遊具は、今では色あせて、寂しげにたたずんでいる。ベランダには、色とりどりの洗濯物が風にはためいていた。

 その光景は、凛の記憶にある「あの団地」と、びっくりするほどよく似ていた。

 胸の奥が、きゅうっと締め付けられる。記憶の蓋が、少しだけ開きかける。

(……いやいや、世の中の団地ってだいたいこんな感じでしょ。そうに決まってる)

 強引に自分を説得しつつ、キャリーケースを引いて敷地内に入る。車輪がガタガタと音を立てる。アスファルトの小道には、子どもの落書きの跡が残っている。自転車がずらっと並ぶ駐輪場。錆びた自転車と、ピカピカの新しい自転車が入り混じっている。どこからか聞こえる子どもの笑い声。ボールを追いかける足音。

 足元から、じわじわと懐かしさと恐怖が同時にせり上がってくるのを、凛は全力でスルーした。無視する。考えない。思い出さない。

「管理人棟……管理人棟……」

 おばさんからのメッセージには、「団地の端っこの平屋よ。和洋折衷って感じの」とだけ書いてある。和洋折衷とは何だ。畳にソファでも置いてあるのだろうか。それとも、障子の向こうにシャンデリアでもあるのか。

 案内板を見つけて確認し、A棟とB棟の間の小道を抜ける。薄暗い通路。壁には「ゴミ出しは朝八時まで」と書かれた色あせた貼り紙。
 通路を抜けると中庭だった。ちょっとした公園がある。公園の横の道路を進むと、鉄棒で遊んでいる小学生たちが、一斉にこちらを見た。

 凛は、反射的に視線をそらす。心臓がドクンと跳ねる。

(見ない見ない見ない……)

 そうしないと、「団地の子どもたち」と目が合ってしまう気がして。あの頃の冷たい視線を思い出してしまう気がして。
 そのときだった。
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