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第一章 フィルム屋敷の夜
いきなりの採用
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目を覚ますと、天井が知らない色をしていた。
白くもなく、木目でもなく、少し黄ばんだクリーム色。古い漆喰の天井だ。端のほうに、ひび割れた線が一本走っている。そのひび割れを目で追っていると、まるで川の流れのように見えてきた。
しばらくそれだけを眺めていて、ようやく「見知らぬ部屋にいる」という事実が、頭に入ってきた。
「……え?」
上半身を起こすと、布団がきしりと音を立てた。古い布団特有の、綿の詰まった重みのある音だ。
畳の匂い。木枠の窓。レースのカーテン。
窓の外には、まだ灰色の空。雨は上がったのか、それとも一時的に止んでいるだけなのか。
どう見ても、自分のワンルームではない。
「夢……ではない、よね」
頬をつねろうかと思ったが、やめた。痛みを味わう元気は、まだなかった。それに、夢だったらもっと都合のいい展開になっているはずだ。炎上前の日常に戻っているとか、全部なかったことになっているとか。
かわりに、部屋の中を見回す。
古い箪笥。木の机。レトロなスタンドライト。机の上には、水の入ったコップと、小さく畳んだタオル。誰かが用意してくれたものだ。
部屋の隅には、見覚えのある自分のリュックが置かれている。中身が荒らされた様子はない。
そして、そのすぐ横。
丁寧にハンガーにかけて干してある、見慣れたパーカーとジーンズ。
「……あ」
昨日、雨に濡れた服だ。
誰かが脱がして洗ってくれたのだと気づいた瞬間、頬が一気に熱くなった。心臓がドクンと大きく跳ねる。
「え、ちょっと待って。ってことは、これ、今の服って――」
あわてて自分の服装を確認する。
身体に触れるのは、薄いパジャマの生地。ゆるくて少し袖が長い。見覚えのない柄だ。花柄。明らかに、自分のものではない。女性用ではあるけれど、どう見ても他人の服だ。
つまり、誰かがこれを着せた。
誰かというのは、たぶん――
「……最悪だ」
顔を覆ってうめいていると、襖の向こうから、控えめなノックの音がした。コンコン、という軽い音。
「起きたかい?」
聞き覚えのある声。
静かで低くて、どこか芝居がかった男の声。そうだ、写真館の。
「ちょっと、入るよ」
襖がすうっと開いて、昨日のイケメンが顔を出した。白いシャツにベスト、という見覚えのある姿。今日はネクタイをしていない。朝だからだろうか、少しだけくだけた雰囲気だった。
「ああ、よかった。ちゃんと目が合う」
「……?」
「昨夜は、本当に全部ピントが合ってなかったからね。今なら、ちゃんと君の目を見て話せそうだ」
そもそも「ピントが合う/合ってない」を、人間の顔に対して使う人を、彩乃は初めて見た。写真用語を日常会話に持ち込むのは、業界人の悪い癖だ。自分もやっていたから、よくわかる。
「……あの、聞きたいことは山ほどあるんですけど」
彩乃がそう切り出すと、男は小さく笑った。
「質問は後にして、まずこれを」
そう言って差し出されたのは、湯気の立つマグカップだった。ハーブティーのような、少し甘い匂いがする。カモミールだろうか。安眠効果があるとか、どこかで聞いた気がする。
「倒れたのは低血圧と低血糖のミックスだろうからね。水分と糖分は大事だ」
「……ありがとうございます」
喉はからからで、遠慮する余地もない。彩乃は礼を言って、ゆっくりと一口飲んだ。温かい液体が喉を通り、体の中に、静かに温度が広がっていく。生き返る、というのはこういうことかもしれない。
少し落ち着いてから、改めて男を見上げる。
「ここ、は……」
「うちの二階。写真館の住居部分だよ」
男は、あっさりと答えた。
「昨日、君はうちの店先で華麗に倒れてくれたからね。このまま放っておくわけにもいかないだろう?」
「華麗ではなかったと思います」
即座にツッコミを入れる自分に、少しだけ安心する。いつもの調子が、少し戻ってきた。ツッコミができるということは、まだ余裕があるということだ。
「服も……」
視線を落として言うと、男は「ああ」とうなずいた。
「さすがに濡れっぱなしでは風邪をひくからね。勝手に着替えさせてもらった。ああ、心配しないで。着替えさせたのは、うちの女子スタッフだから」
彩乃はほっとした。安堵のあまり、体から力が抜けた。
男は芝居がかった動作で肩をすくめてみせた。
「とりあえず、身体に異常はなさそうだね。痛いところは?」
「……ない、と思います」
スマホとカメラの位置を頭の中で確認する。リュックはそこにある。スマホも枕元の小さな棚に置かれていた。どちらも無事で、ほっとする。勝手に中を見られた形跡もない。
「助けていただいて、ありがとうございます。あの、私、すぐ出ていきますので――」
そう言いかけたところで、男は片手を上げて制した。
「急いで追い出すつもりはないよ」
その言い方があまりに落ち着いていて、彩乃は口をつぐんだ。
「まず自己紹介をしようか。ここは〈フィルム屋敷〉、まあ、正式には透鏡写真館の二階。私はこの店の主で――」
男は少しだけ芝居っぽく、胸に手をあてる。
「穂高。名字は、いまさら名乗っても誰も覚えていないから、省略でいい」
「穂高、さん」
口に出してみると、音の座りが良かった。「ほだか」という響きは、古風だけれど耳にやさしい。山の名前みたいで、どこか凛とした印象がある。
「君の名前は?」
「進藤……進藤彩乃です」
「進藤彩乃さん、ね。いい名前だ」
穂高は、名前をゆっくり繰り返してから、ふっと目を細めた。褒められているのかどうかわからない笑みだった。
「さて、進藤さん。君はここに倒れ込んできた。行き場はあまりなさそうだ。違うかい?」
図星を突かれて、反射的に視線をそらしてしまう。それだけで、答えになってしまうから、困る。この人は、見ているだけで人のことを見抜くタイプなのだろう。
「……まあ、その、ちょっと事情があって」
「事情がある人しか、真夜中に写真館には入ってこないよ」
穂高は淡々と言った。その口ぶりは、責めるのでも、哀れむのでもない。ただ事実を述べているだけだった。
「だから、しばらくここにいればいい。住み込みで働いてくれるなら、部屋と食事は用意する」
「へ?」
あまりにもさらりと提案されて、脳が理解を拒んだ。
「す、住み込み?」
「そう。うちは元々、家族経営だったからね。部屋はいくつも余っている。人手は……正直、かなり足りていない」
「いや、でも、私、そんな、急に」
「他に行くところがあるなら、それもいいけど」
静かな一言が、胸の奥にずしんと落ちた。
(……ない)
実家は県外。帰れば心配をかける。大学の友人たちとは、炎上をきっかけに気まずくなってしまった。サークルのグループラインは、今もまだ未読のまま。タイムラインは、見る勇気すらない。
あの日以来、誰とも会っていない。アパートの部屋に引きこもって、カーテンを閉めて、ただ時間が過ぎるのを待っていた。それがどれだけ不健康で、どれだけ馬鹿げているかわかっていても、外に出る勇気が持てなかった。
「ここで働くって、何をすればいいんですか」
ようやく絞り出した問いに、穂高は少しだけ嬉しそうに笑った。口元だけでなく、目も笑っている。本当に人手が欲しかったのかもしれない。
「受付。掃除。簡単な現像の手伝い。お客さんの話し相手。それから――」
そこで言葉を切り、じっと彩乃の目を見た。その視線は、さっきまでの軽い調子とは違う、真面目なものだった。
「ここに集まってくる『迷子の写真』たちの、話を聞いてやること」
「……迷子の、写真?」
聞き返した声は、自分でも驚くほどか細かった。迷子の写真。言葉の意味は分かるけれど、具体的に何を指しているのかがわからない。
「そう。世の中には、行き場をなくした写真がたくさんある。持ち主を忘れられた写真。送り先を失った写真。撮られた理由さえ曖昧な写真。そういうものが、なぜかうちに流れ着く」
穂高は、それを「当たり前だろ」とでも言いたげな顔で語る。まるで、川の流れが最後に海に着くのと同じように、写真がここに集まってくるのだと言わんばかりだ。
「君は、聞き上手そうだからね。彼らの話を、聞いて整理してやるだけでも、十分な仕事になる」
「写真が、話を……?」
ややこしさに頭がついていかない彩乃の前で、穂高はさらりと続ける。
「もちろん、無理にとは言わない。だが、しばらく行く当てがないなら、そのほうが合理的だと思うよ」
合理的、という言葉に弱い自分を自覚している。何かを決めるとき、いつも理屈で納得しようとしてしまう。感情だけで動けないのは、自分の悪い癖だ。
けれど、それでも決めるには、もう一つだけ条件を出さずにはいられなかった。
「……カメラには、触りません」
彩乃は、布団の端を握りしめたまま、はっきりと言った。声が震えないように、意識して言葉を選ぶ。
「撮るのも、現像するのも……今は無理です。それでもいいなら」
少しの沈黙。
その間に、心臓の音がやけに大きく聞こえる。ドクン、ドクン、という音が、部屋中に響いているような気がした。
穂高は、ほんの少しだけ眉を上げた。
「ああ、その程度なら問題ない」
「あ、あっさり……」
拍子抜けするほど、簡単に受け入れられた。もっと説得されるか、理由を聞かれるかと思っていたのに。
「弟子にもいろいろな形がある。暗室には入れない弟子というのも、それはそれで面白い」
冗談とも本気ともつかない口調で言いながら、穂高は立ち上がった。すらりとした長身が、和室の天井近くまで伸びる。
「決まりだね。歓迎するよ、進藤彩乃さん。今日はまず、うちを案内しよう」
白くもなく、木目でもなく、少し黄ばんだクリーム色。古い漆喰の天井だ。端のほうに、ひび割れた線が一本走っている。そのひび割れを目で追っていると、まるで川の流れのように見えてきた。
しばらくそれだけを眺めていて、ようやく「見知らぬ部屋にいる」という事実が、頭に入ってきた。
「……え?」
上半身を起こすと、布団がきしりと音を立てた。古い布団特有の、綿の詰まった重みのある音だ。
畳の匂い。木枠の窓。レースのカーテン。
窓の外には、まだ灰色の空。雨は上がったのか、それとも一時的に止んでいるだけなのか。
どう見ても、自分のワンルームではない。
「夢……ではない、よね」
頬をつねろうかと思ったが、やめた。痛みを味わう元気は、まだなかった。それに、夢だったらもっと都合のいい展開になっているはずだ。炎上前の日常に戻っているとか、全部なかったことになっているとか。
かわりに、部屋の中を見回す。
古い箪笥。木の机。レトロなスタンドライト。机の上には、水の入ったコップと、小さく畳んだタオル。誰かが用意してくれたものだ。
部屋の隅には、見覚えのある自分のリュックが置かれている。中身が荒らされた様子はない。
そして、そのすぐ横。
丁寧にハンガーにかけて干してある、見慣れたパーカーとジーンズ。
「……あ」
昨日、雨に濡れた服だ。
誰かが脱がして洗ってくれたのだと気づいた瞬間、頬が一気に熱くなった。心臓がドクンと大きく跳ねる。
「え、ちょっと待って。ってことは、これ、今の服って――」
あわてて自分の服装を確認する。
身体に触れるのは、薄いパジャマの生地。ゆるくて少し袖が長い。見覚えのない柄だ。花柄。明らかに、自分のものではない。女性用ではあるけれど、どう見ても他人の服だ。
つまり、誰かがこれを着せた。
誰かというのは、たぶん――
「……最悪だ」
顔を覆ってうめいていると、襖の向こうから、控えめなノックの音がした。コンコン、という軽い音。
「起きたかい?」
聞き覚えのある声。
静かで低くて、どこか芝居がかった男の声。そうだ、写真館の。
「ちょっと、入るよ」
襖がすうっと開いて、昨日のイケメンが顔を出した。白いシャツにベスト、という見覚えのある姿。今日はネクタイをしていない。朝だからだろうか、少しだけくだけた雰囲気だった。
「ああ、よかった。ちゃんと目が合う」
「……?」
「昨夜は、本当に全部ピントが合ってなかったからね。今なら、ちゃんと君の目を見て話せそうだ」
そもそも「ピントが合う/合ってない」を、人間の顔に対して使う人を、彩乃は初めて見た。写真用語を日常会話に持ち込むのは、業界人の悪い癖だ。自分もやっていたから、よくわかる。
「……あの、聞きたいことは山ほどあるんですけど」
彩乃がそう切り出すと、男は小さく笑った。
「質問は後にして、まずこれを」
そう言って差し出されたのは、湯気の立つマグカップだった。ハーブティーのような、少し甘い匂いがする。カモミールだろうか。安眠効果があるとか、どこかで聞いた気がする。
「倒れたのは低血圧と低血糖のミックスだろうからね。水分と糖分は大事だ」
「……ありがとうございます」
喉はからからで、遠慮する余地もない。彩乃は礼を言って、ゆっくりと一口飲んだ。温かい液体が喉を通り、体の中に、静かに温度が広がっていく。生き返る、というのはこういうことかもしれない。
少し落ち着いてから、改めて男を見上げる。
「ここ、は……」
「うちの二階。写真館の住居部分だよ」
男は、あっさりと答えた。
「昨日、君はうちの店先で華麗に倒れてくれたからね。このまま放っておくわけにもいかないだろう?」
「華麗ではなかったと思います」
即座にツッコミを入れる自分に、少しだけ安心する。いつもの調子が、少し戻ってきた。ツッコミができるということは、まだ余裕があるということだ。
「服も……」
視線を落として言うと、男は「ああ」とうなずいた。
「さすがに濡れっぱなしでは風邪をひくからね。勝手に着替えさせてもらった。ああ、心配しないで。着替えさせたのは、うちの女子スタッフだから」
彩乃はほっとした。安堵のあまり、体から力が抜けた。
男は芝居がかった動作で肩をすくめてみせた。
「とりあえず、身体に異常はなさそうだね。痛いところは?」
「……ない、と思います」
スマホとカメラの位置を頭の中で確認する。リュックはそこにある。スマホも枕元の小さな棚に置かれていた。どちらも無事で、ほっとする。勝手に中を見られた形跡もない。
「助けていただいて、ありがとうございます。あの、私、すぐ出ていきますので――」
そう言いかけたところで、男は片手を上げて制した。
「急いで追い出すつもりはないよ」
その言い方があまりに落ち着いていて、彩乃は口をつぐんだ。
「まず自己紹介をしようか。ここは〈フィルム屋敷〉、まあ、正式には透鏡写真館の二階。私はこの店の主で――」
男は少しだけ芝居っぽく、胸に手をあてる。
「穂高。名字は、いまさら名乗っても誰も覚えていないから、省略でいい」
「穂高、さん」
口に出してみると、音の座りが良かった。「ほだか」という響きは、古風だけれど耳にやさしい。山の名前みたいで、どこか凛とした印象がある。
「君の名前は?」
「進藤……進藤彩乃です」
「進藤彩乃さん、ね。いい名前だ」
穂高は、名前をゆっくり繰り返してから、ふっと目を細めた。褒められているのかどうかわからない笑みだった。
「さて、進藤さん。君はここに倒れ込んできた。行き場はあまりなさそうだ。違うかい?」
図星を突かれて、反射的に視線をそらしてしまう。それだけで、答えになってしまうから、困る。この人は、見ているだけで人のことを見抜くタイプなのだろう。
「……まあ、その、ちょっと事情があって」
「事情がある人しか、真夜中に写真館には入ってこないよ」
穂高は淡々と言った。その口ぶりは、責めるのでも、哀れむのでもない。ただ事実を述べているだけだった。
「だから、しばらくここにいればいい。住み込みで働いてくれるなら、部屋と食事は用意する」
「へ?」
あまりにもさらりと提案されて、脳が理解を拒んだ。
「す、住み込み?」
「そう。うちは元々、家族経営だったからね。部屋はいくつも余っている。人手は……正直、かなり足りていない」
「いや、でも、私、そんな、急に」
「他に行くところがあるなら、それもいいけど」
静かな一言が、胸の奥にずしんと落ちた。
(……ない)
実家は県外。帰れば心配をかける。大学の友人たちとは、炎上をきっかけに気まずくなってしまった。サークルのグループラインは、今もまだ未読のまま。タイムラインは、見る勇気すらない。
あの日以来、誰とも会っていない。アパートの部屋に引きこもって、カーテンを閉めて、ただ時間が過ぎるのを待っていた。それがどれだけ不健康で、どれだけ馬鹿げているかわかっていても、外に出る勇気が持てなかった。
「ここで働くって、何をすればいいんですか」
ようやく絞り出した問いに、穂高は少しだけ嬉しそうに笑った。口元だけでなく、目も笑っている。本当に人手が欲しかったのかもしれない。
「受付。掃除。簡単な現像の手伝い。お客さんの話し相手。それから――」
そこで言葉を切り、じっと彩乃の目を見た。その視線は、さっきまでの軽い調子とは違う、真面目なものだった。
「ここに集まってくる『迷子の写真』たちの、話を聞いてやること」
「……迷子の、写真?」
聞き返した声は、自分でも驚くほどか細かった。迷子の写真。言葉の意味は分かるけれど、具体的に何を指しているのかがわからない。
「そう。世の中には、行き場をなくした写真がたくさんある。持ち主を忘れられた写真。送り先を失った写真。撮られた理由さえ曖昧な写真。そういうものが、なぜかうちに流れ着く」
穂高は、それを「当たり前だろ」とでも言いたげな顔で語る。まるで、川の流れが最後に海に着くのと同じように、写真がここに集まってくるのだと言わんばかりだ。
「君は、聞き上手そうだからね。彼らの話を、聞いて整理してやるだけでも、十分な仕事になる」
「写真が、話を……?」
ややこしさに頭がついていかない彩乃の前で、穂高はさらりと続ける。
「もちろん、無理にとは言わない。だが、しばらく行く当てがないなら、そのほうが合理的だと思うよ」
合理的、という言葉に弱い自分を自覚している。何かを決めるとき、いつも理屈で納得しようとしてしまう。感情だけで動けないのは、自分の悪い癖だ。
けれど、それでも決めるには、もう一つだけ条件を出さずにはいられなかった。
「……カメラには、触りません」
彩乃は、布団の端を握りしめたまま、はっきりと言った。声が震えないように、意識して言葉を選ぶ。
「撮るのも、現像するのも……今は無理です。それでもいいなら」
少しの沈黙。
その間に、心臓の音がやけに大きく聞こえる。ドクン、ドクン、という音が、部屋中に響いているような気がした。
穂高は、ほんの少しだけ眉を上げた。
「ああ、その程度なら問題ない」
「あ、あっさり……」
拍子抜けするほど、簡単に受け入れられた。もっと説得されるか、理由を聞かれるかと思っていたのに。
「弟子にもいろいろな形がある。暗室には入れない弟子というのも、それはそれで面白い」
冗談とも本気ともつかない口調で言いながら、穂高は立ち上がった。すらりとした長身が、和室の天井近くまで伸びる。
「決まりだね。歓迎するよ、進藤彩乃さん。今日はまず、うちを案内しよう」
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