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第一話「記憶のない怪獣」
第二章「ジャガーノート」・④
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※ ※ ※
「ごめんごめん! 待たせちゃったね!」
家に帰ってすぐに倉庫へと向かう。仕事場と家が直結してるとこういう時に楽だ。
<ッ! ・・・!>
一瞬様子を伺った後、僕の姿を見て棚の後ろから丸めた体を伸ばして出てくる。
最初に目を覚ました時は今にも飛びかかってきそうだった気迫はどこへやら。
ここ3日以上一緒にいてわかったけど、この子はとても臆病な子らしい。
拾ってきた日に仕事を終えて帰ってきたら、大きな体を精一杯倉庫の隅に押し込めて震えていたのだ。
呼びかけて、僕だとわかってくれたら出てきてくれたものの・・・。
「ほら、お食べ」
それ以来寝ても覚めても心配で、昼休みも抜け出してできる限りこうして付きっきりにするようにしていた。
おかげで、少しずつ心を開いてきてくれている気がする。
<アォン!>
鎧に包まれた姿を見つめる。
最初はお皿ごと食べてしまうんじゃないかと思うくらいのがっつき様だったけど、今はとても上品な食べ方をしている。
ドッグフードがお皿の外に溢れていないし、静かに味わうように食べているのだ。どこか品のある感じがする。
「仕事も手が抜けないから大忙しだけど、いまのところ迷惑はかけてない・・・はず! 元気になったら、皆にも紹介しないとね!」
話しかけるように言うと、首を傾げながら「なぁに?」という顔で返してくる。
一緒にいて思った事だが、この子はとても頭がいい。こちらの呼びかけをわかっているのだ。
まるで僕の言っている事をきちんと理解しているような・・・いやさすがに日本語は通じてないと思うけど。
「あっ・・・そういえば・・・」
ここ数日仕事の方もGWで忙しくて、この子の名前を決めていなかった。
さすがにいつまでも「君」や「この子」っていうのも少し味気ないし。
「どうしようかなぁ・・・」
・・・普段は、拾ってきた子に名前をつけないようにしている。
情けない話だけど、名前をつけたら別れが辛くなってしまうのだ。
拾ってきた動物たち全員を飼う事ができればいいけど、拾ってくるペースを考えるとさすがに無理があるし・・・
でも、目の前のこの子に関しては、自分でも驚くくらいに肩入れしてしまっている気がする。
靭やかな暗いネイビーの体からは、気品も強さも感じさせるのに、吹けば飛んでしまうような儚さのようなものも持っていて、どうしても放っておく事が出来ないのだ。
「うーん・・・そうだなぁ。じゃあ、クロにしよう!」
体は真っ黒ではないが、初めて出会った時は真っ黒に見えたし・・・
まぁ、実際の所はなんとなくというやつだ。
「いい? ぼくは、ハヤト!」
<?>
食事を終えたタイミングで、話しかける。指で自分を差し、名前を言う。
「君は、今日から、クロ!」
次いで、クロを指差して名前を言う。ピクリと眉が動き、こちらをまっすぐ見つめてくる。
「ハ・ヤ・ト、ク・ロ・・・わかる?」
指を交互に差し、音を教え込むように呟く。2度も繰り返すと、コクコク、と頷いた。
「もうわかったんだ! えらいなぁ~!」
そう言って、頭を撫でるため手を伸ばそうとすると──
<ッ──‼>
ビクリと全身を硬直させたかと思うと、前脚で地面を蹴り、後ずさってしまう。
急いで手を引っ込める。やってしまった───!
「・・・ごめんよクロ・・・君の事も考えずに・・・」
そうだった──クロは、傷付いていたのだ。
初めて出会った時のあの姿・・・痛々しくて、今にも死んでしまいそうで・・・少なくとも、自然とああはならないだろう。
冗談交じりで考えていたけど、もしかしたら本当にどこかの施設の実験動物で、ひどい事をたくさんされてきたとか・・・
理由はわからないけど、クロが人間との接触を怖がっているのは普段の様子を見ても間違いない。
自分の浅はかさに耐えかねて、下唇を噛み締める。
撫でようと伸ばした右手には、クロを助けた時の火傷の跡が残っていたが、今は別の意味で痛くてたまらない。
左手で、包帯の上からぐっと右手を戒める。
<・・・クゥン>
か細い声が聞こえて顔を上げると、クロが眼尻を下げ、こちらを見つめていた。
今にも泣き出しそうな瞳で、でも脚が震えていて、一歩も前に進めなくて──。
「クロ・・・」
言葉は通じないけど、「ごめんなさい」と言われている気がした。
そんなのあくまで僕の自分勝手な妄想だと言われれば、否定する事は出来ない。
でも、じっとこちらを見つめてくる姿を見ていると、そう伝えようとしてくれてるんだって思ってしまいたくなる。
「・・・よし!」
振り返って、棚からキャンプ用の寝袋を降ろし、倉庫の床に広げた。
物置より少し大きいくらいの倉庫だから、ギリギリ足を伸ばして寝られるくらいの広さはある。
「今日は、一緒に寝よう。僕から触ったりしないから」
ここで寝るのは、母さんと大げんかして、でも家出する勇気もなかった小学校二年生の時以来だろうか。
寝転がり、胸から下だけ寝袋に入る。床から立ち込めるホコリの匂いが鼻に届くが、構いはしない。
<・・・・・・>
クロは、僕が寝転がったのを見て察したみたいだ。こちらを向いたまま、その場に伏せる。
「・・・僕にもあったよ・・・手を伸ばしたいのに、怖くてどうしようもなくて・・・動けなくなっちゃった事・・・」
こちらを見つめてくる瞳に向かって、呟く。
「君の全部を理解できるだなんて思わないけど、嫌じゃなければ・・・ここにいさせてよ」
<・・・・・・>
「・・・いつか、君と手をつなげたらいいなって、そう思う」
安心させようと、微笑んでみる。
暗い天井に、ランタンに照らされたホコリが星のように舞っていた。
「・・・っとごめんごめん。もう眠くなる時間だよね」
枕元に置いたスマートフォンで目覚まし用のタイマーをセットしつつ、父さんにはハルの家に泊まるとメールする。
ごめんねハル。でも僕もよく言い訳に使われてるからお相子だ。
「それじゃあおやすみ、クロ」
もう一度微笑みかけてから、目を閉じる。
外から聴こえる静かな夜の波音が、鼓膜を優しく揺らした。
眠りに落ちる前、一度だけ右手の甲に何かあたたかなものが触れかけて──離れた。
※ ※ ※
ギィ・・・と鉄の擦れる音がして重苦しいハッチが開く。
タラップを上がり船外へ出ると、入渠した艦体には既に橋が架かっていた。
その先では、チェスの駒のように規則正しく並んだ制服たちが、敬礼を携えて出迎えてくれる。
ここは、横須賀海軍施設の地下30mに極秘裏に建設された、JAGD極東支局──その潜水艦用ドックだ。
JAGD極東支局では、二百人以上の局員が、人類の存亡を脅かすジャガーノートに対抗すべく、日夜研究や調査に励んでいる。
そして私は、その全ての先頭に立つ機動部隊の隊長という栄えある任を受け、今、ここに立っている。
甲板から橋の中腹へと移り、声なき歓迎に応えるべく踵を揃え、答礼する。
見渡せば、ポツリポツリと怪訝な顔が見つかる。
当然の反応だ。
話に聞いてはいただろうが、目の前の二十歳そこそこの小娘が、自分たちの隊長になるというのだ。
戸惑わない方がおかしいし、任を受けて十日以上が経った今でも、私自身、実感は全くと言っていいほど湧いてこない。
「お待ちしておりました。キリュウ少佐殿」
一歩進み出たのは、身長2m程のがっしりとした体型の黒人男性。
目の前に並んだ局員たちの中で唯一、私と同じ制服を着ている。
ダークグレイにオレンジのラインが入った、機動部隊員の証だ。肩章を見れば中尉だと判る。
隊員達のプロフィールは先んじて目を通していたから、彼が私の直属の部下となるアルバート・マクスウェル中尉だという事にはすぐに気がついた。
が、それよりもその外見から発せられた流暢な日本語に思わず驚いてしまう。
とはいえ、世間話の前にまずは謝罪だ。
「ごめんごめん! 待たせちゃったね!」
家に帰ってすぐに倉庫へと向かう。仕事場と家が直結してるとこういう時に楽だ。
<ッ! ・・・!>
一瞬様子を伺った後、僕の姿を見て棚の後ろから丸めた体を伸ばして出てくる。
最初に目を覚ました時は今にも飛びかかってきそうだった気迫はどこへやら。
ここ3日以上一緒にいてわかったけど、この子はとても臆病な子らしい。
拾ってきた日に仕事を終えて帰ってきたら、大きな体を精一杯倉庫の隅に押し込めて震えていたのだ。
呼びかけて、僕だとわかってくれたら出てきてくれたものの・・・。
「ほら、お食べ」
それ以来寝ても覚めても心配で、昼休みも抜け出してできる限りこうして付きっきりにするようにしていた。
おかげで、少しずつ心を開いてきてくれている気がする。
<アォン!>
鎧に包まれた姿を見つめる。
最初はお皿ごと食べてしまうんじゃないかと思うくらいのがっつき様だったけど、今はとても上品な食べ方をしている。
ドッグフードがお皿の外に溢れていないし、静かに味わうように食べているのだ。どこか品のある感じがする。
「仕事も手が抜けないから大忙しだけど、いまのところ迷惑はかけてない・・・はず! 元気になったら、皆にも紹介しないとね!」
話しかけるように言うと、首を傾げながら「なぁに?」という顔で返してくる。
一緒にいて思った事だが、この子はとても頭がいい。こちらの呼びかけをわかっているのだ。
まるで僕の言っている事をきちんと理解しているような・・・いやさすがに日本語は通じてないと思うけど。
「あっ・・・そういえば・・・」
ここ数日仕事の方もGWで忙しくて、この子の名前を決めていなかった。
さすがにいつまでも「君」や「この子」っていうのも少し味気ないし。
「どうしようかなぁ・・・」
・・・普段は、拾ってきた子に名前をつけないようにしている。
情けない話だけど、名前をつけたら別れが辛くなってしまうのだ。
拾ってきた動物たち全員を飼う事ができればいいけど、拾ってくるペースを考えるとさすがに無理があるし・・・
でも、目の前のこの子に関しては、自分でも驚くくらいに肩入れしてしまっている気がする。
靭やかな暗いネイビーの体からは、気品も強さも感じさせるのに、吹けば飛んでしまうような儚さのようなものも持っていて、どうしても放っておく事が出来ないのだ。
「うーん・・・そうだなぁ。じゃあ、クロにしよう!」
体は真っ黒ではないが、初めて出会った時は真っ黒に見えたし・・・
まぁ、実際の所はなんとなくというやつだ。
「いい? ぼくは、ハヤト!」
<?>
食事を終えたタイミングで、話しかける。指で自分を差し、名前を言う。
「君は、今日から、クロ!」
次いで、クロを指差して名前を言う。ピクリと眉が動き、こちらをまっすぐ見つめてくる。
「ハ・ヤ・ト、ク・ロ・・・わかる?」
指を交互に差し、音を教え込むように呟く。2度も繰り返すと、コクコク、と頷いた。
「もうわかったんだ! えらいなぁ~!」
そう言って、頭を撫でるため手を伸ばそうとすると──
<ッ──‼>
ビクリと全身を硬直させたかと思うと、前脚で地面を蹴り、後ずさってしまう。
急いで手を引っ込める。やってしまった───!
「・・・ごめんよクロ・・・君の事も考えずに・・・」
そうだった──クロは、傷付いていたのだ。
初めて出会った時のあの姿・・・痛々しくて、今にも死んでしまいそうで・・・少なくとも、自然とああはならないだろう。
冗談交じりで考えていたけど、もしかしたら本当にどこかの施設の実験動物で、ひどい事をたくさんされてきたとか・・・
理由はわからないけど、クロが人間との接触を怖がっているのは普段の様子を見ても間違いない。
自分の浅はかさに耐えかねて、下唇を噛み締める。
撫でようと伸ばした右手には、クロを助けた時の火傷の跡が残っていたが、今は別の意味で痛くてたまらない。
左手で、包帯の上からぐっと右手を戒める。
<・・・クゥン>
か細い声が聞こえて顔を上げると、クロが眼尻を下げ、こちらを見つめていた。
今にも泣き出しそうな瞳で、でも脚が震えていて、一歩も前に進めなくて──。
「クロ・・・」
言葉は通じないけど、「ごめんなさい」と言われている気がした。
そんなのあくまで僕の自分勝手な妄想だと言われれば、否定する事は出来ない。
でも、じっとこちらを見つめてくる姿を見ていると、そう伝えようとしてくれてるんだって思ってしまいたくなる。
「・・・よし!」
振り返って、棚からキャンプ用の寝袋を降ろし、倉庫の床に広げた。
物置より少し大きいくらいの倉庫だから、ギリギリ足を伸ばして寝られるくらいの広さはある。
「今日は、一緒に寝よう。僕から触ったりしないから」
ここで寝るのは、母さんと大げんかして、でも家出する勇気もなかった小学校二年生の時以来だろうか。
寝転がり、胸から下だけ寝袋に入る。床から立ち込めるホコリの匂いが鼻に届くが、構いはしない。
<・・・・・・>
クロは、僕が寝転がったのを見て察したみたいだ。こちらを向いたまま、その場に伏せる。
「・・・僕にもあったよ・・・手を伸ばしたいのに、怖くてどうしようもなくて・・・動けなくなっちゃった事・・・」
こちらを見つめてくる瞳に向かって、呟く。
「君の全部を理解できるだなんて思わないけど、嫌じゃなければ・・・ここにいさせてよ」
<・・・・・・>
「・・・いつか、君と手をつなげたらいいなって、そう思う」
安心させようと、微笑んでみる。
暗い天井に、ランタンに照らされたホコリが星のように舞っていた。
「・・・っとごめんごめん。もう眠くなる時間だよね」
枕元に置いたスマートフォンで目覚まし用のタイマーをセットしつつ、父さんにはハルの家に泊まるとメールする。
ごめんねハル。でも僕もよく言い訳に使われてるからお相子だ。
「それじゃあおやすみ、クロ」
もう一度微笑みかけてから、目を閉じる。
外から聴こえる静かな夜の波音が、鼓膜を優しく揺らした。
眠りに落ちる前、一度だけ右手の甲に何かあたたかなものが触れかけて──離れた。
※ ※ ※
ギィ・・・と鉄の擦れる音がして重苦しいハッチが開く。
タラップを上がり船外へ出ると、入渠した艦体には既に橋が架かっていた。
その先では、チェスの駒のように規則正しく並んだ制服たちが、敬礼を携えて出迎えてくれる。
ここは、横須賀海軍施設の地下30mに極秘裏に建設された、JAGD極東支局──その潜水艦用ドックだ。
JAGD極東支局では、二百人以上の局員が、人類の存亡を脅かすジャガーノートに対抗すべく、日夜研究や調査に励んでいる。
そして私は、その全ての先頭に立つ機動部隊の隊長という栄えある任を受け、今、ここに立っている。
甲板から橋の中腹へと移り、声なき歓迎に応えるべく踵を揃え、答礼する。
見渡せば、ポツリポツリと怪訝な顔が見つかる。
当然の反応だ。
話に聞いてはいただろうが、目の前の二十歳そこそこの小娘が、自分たちの隊長になるというのだ。
戸惑わない方がおかしいし、任を受けて十日以上が経った今でも、私自身、実感は全くと言っていいほど湧いてこない。
「お待ちしておりました。キリュウ少佐殿」
一歩進み出たのは、身長2m程のがっしりとした体型の黒人男性。
目の前に並んだ局員たちの中で唯一、私と同じ制服を着ている。
ダークグレイにオレンジのラインが入った、機動部隊員の証だ。肩章を見れば中尉だと判る。
隊員達のプロフィールは先んじて目を通していたから、彼が私の直属の部下となるアルバート・マクスウェル中尉だという事にはすぐに気がついた。
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