34 / 49
これからのわたしは
初めて見た時から
しおりを挟む
知人に会いに学び舎を訪れた際に、すれ違ったのがアンジェだった。
あいつを初めて見た時は、かなり顔色ヤバイな、って笑ったっけか。
あまりにも生気がなく目の下に隈を大きく作って、医学書を読みながら歩いているやつなんてここ最近はあまり見かけないから、珍しいな、と微笑ましく思った。
俺らの時代はこんなやつは溢れていたが戦争が終わり、世の中が平和になってからは、医学を血眼で覚えるやつは少なくなった。医療を覚えても、市政で使うだけなので、ありきたりな感染や毒などを中心に覚える。
廊下の向こうから、ナイフや剣での裂傷時の手当てをぶつぶつ呟きながら歩いてくるやつなんか、面白いにきまってる
ましては女だ。
医学を学ぶやつは男が多い。
医療は基本1人、多くても2人で動くことが多く、その際には医療道具を持ち運ばないといけないので、必然的に力や体力のある男に絞られる。さらに月の物や妊娠出産で収入が不安定になったり、救えなかった時の逆恨みから襲われることもあり、やはり女が医師になるのは敬遠される。
その面白い女は目の前くると、俺の存在には気付いて廊下の端に移動して頭を下げたが、俺が誰だか気付かずー気付いていた、が正解か?、下げ続けながら通り過ぎるのを待っていた。
自慢じゃないが、俺は結構有名だと知っている。
だから、その女も俺に気付いたら、何かしら反応があると思っていた。実際ここまで歩いてくるのにも、人に捕まり大変だった。
とにかく、その態度も気に入ってしまった。
珍しい銀髪の髪がボサボサで、また笑ってしまう。
支給される白衣が大きく、医学書も端が擦り切れてボロボロだった。
ーこいつは、きっとくるな。おもしれぇ
その頭に思わず、手をポンポン、と置いてそいつの前を通りすぎた。
※
こいつと再会したのはその1年後だった。
いつものように、学び舎を卒業するやつの中で特に優秀なやつを3人紹介するから学ばせてやってくれと言われて入った部屋にいた。
俺が入った瞬間、男2人は顔を合わせて、フィン先生だぞ、すげえ本物だ、と囁いているのが聞こえた。
女は顔色も変えず頭を下げた。
顔色はまた悪く、目の下の隈も相変わらず。髪の毛を後ろに色気もなくくくり、あれからさらにボロボロになっている医学書を持っていた。
そして、白衣が1番薄汚れていた。
ここでは、勉学をするだけで実際に医療行為を行うことはない。これから各地の医師の下につき、学んで行くのだー。
実地研修を自分で行ったのか、洗っても洗っても落ちなかったのだろう。
後の2人は、血の跡もほつれた跡もなかった。
その違いについ笑ってしまい、心が決まった。
ここ数年は、助手は面倒くせえからいらないと、1人で動いていた。
最初の2、3年は友人が勧めるがままに適当に助手を雇っていたが、ピーチクパーチク喋るばっかりで、縫合の1つもできない、血を見たら倒れる、そんなやつばっかりで、ウンザリしていた。
ーこいつならいい。
思わずニヤリとすると隣の友人に、どうしたんだ、顔が凶悪だぞ、と失礼なことを言われた。
はっ、勝手に言ってくれ。
おい女、持ち物はそれだけか、と尋ねると他の2人の方が反応した。
なぜソイツを選ばれるのです!女だからですか!と叫んでいたやつに向かって、少し乱暴だが、持っていたメスで手を切ってやった。
血がダラダラと出て床に落ちた。
おいおい、床を汚すなよ…と友人が言うが気にしねえ。さっきのとチャラだチャラ。つか痛え。深く切りすぎた。
そいつらは、ひぃ、と息を飲んで微動だにしない。
その横で素早く小さな影が動き、消毒液をかけられ、その場で縫合された。
その素早い判断とその技術に、俺の目は間違いなかったとまた笑ってしまう。
友人も、おお、早くて正確だな~と感心している。
あの2人は何もできず、ただ顔を青ざめていただけだった。まぁ実地研修してないなら、血もあまり見たことないのだろう。仕方ないとはいえ、この差は明らかだった。
女は保護テープと包帯を巻いて、終わりました。と顔を上げた。
初めて見るそいつの顔は、綺麗だがそれだけだ。他にも顔が綺麗なやつなんかいくらでもいる。
それより俺の血が顔と白衣について汚れていたのも気にせず、鋭い痛みはありませんか、と尋ねるその心が気に入った。媚を売るような真似はしない、俺から見ると逆にそれの方がしっくりきた。
経験は浅いが知識も技術もあり、度胸がある。
これからこいつに教えるのは楽しい日々になるだろう。
これが他のやつが言ってた年配者の楽しみ方かー。
ー悪くねえな。
前にお会いしましたね、あの時はありがとうございます。これからよろしくお願い致します、とそいつはまた頭下げた。
そしてその頭に手をポンポンと置いて、よろしくな、と声を掛けた。
あいつを初めて見た時は、かなり顔色ヤバイな、って笑ったっけか。
あまりにも生気がなく目の下に隈を大きく作って、医学書を読みながら歩いているやつなんてここ最近はあまり見かけないから、珍しいな、と微笑ましく思った。
俺らの時代はこんなやつは溢れていたが戦争が終わり、世の中が平和になってからは、医学を血眼で覚えるやつは少なくなった。医療を覚えても、市政で使うだけなので、ありきたりな感染や毒などを中心に覚える。
廊下の向こうから、ナイフや剣での裂傷時の手当てをぶつぶつ呟きながら歩いてくるやつなんか、面白いにきまってる
ましては女だ。
医学を学ぶやつは男が多い。
医療は基本1人、多くても2人で動くことが多く、その際には医療道具を持ち運ばないといけないので、必然的に力や体力のある男に絞られる。さらに月の物や妊娠出産で収入が不安定になったり、救えなかった時の逆恨みから襲われることもあり、やはり女が医師になるのは敬遠される。
その面白い女は目の前くると、俺の存在には気付いて廊下の端に移動して頭を下げたが、俺が誰だか気付かずー気付いていた、が正解か?、下げ続けながら通り過ぎるのを待っていた。
自慢じゃないが、俺は結構有名だと知っている。
だから、その女も俺に気付いたら、何かしら反応があると思っていた。実際ここまで歩いてくるのにも、人に捕まり大変だった。
とにかく、その態度も気に入ってしまった。
珍しい銀髪の髪がボサボサで、また笑ってしまう。
支給される白衣が大きく、医学書も端が擦り切れてボロボロだった。
ーこいつは、きっとくるな。おもしれぇ
その頭に思わず、手をポンポン、と置いてそいつの前を通りすぎた。
※
こいつと再会したのはその1年後だった。
いつものように、学び舎を卒業するやつの中で特に優秀なやつを3人紹介するから学ばせてやってくれと言われて入った部屋にいた。
俺が入った瞬間、男2人は顔を合わせて、フィン先生だぞ、すげえ本物だ、と囁いているのが聞こえた。
女は顔色も変えず頭を下げた。
顔色はまた悪く、目の下の隈も相変わらず。髪の毛を後ろに色気もなくくくり、あれからさらにボロボロになっている医学書を持っていた。
そして、白衣が1番薄汚れていた。
ここでは、勉学をするだけで実際に医療行為を行うことはない。これから各地の医師の下につき、学んで行くのだー。
実地研修を自分で行ったのか、洗っても洗っても落ちなかったのだろう。
後の2人は、血の跡もほつれた跡もなかった。
その違いについ笑ってしまい、心が決まった。
ここ数年は、助手は面倒くせえからいらないと、1人で動いていた。
最初の2、3年は友人が勧めるがままに適当に助手を雇っていたが、ピーチクパーチク喋るばっかりで、縫合の1つもできない、血を見たら倒れる、そんなやつばっかりで、ウンザリしていた。
ーこいつならいい。
思わずニヤリとすると隣の友人に、どうしたんだ、顔が凶悪だぞ、と失礼なことを言われた。
はっ、勝手に言ってくれ。
おい女、持ち物はそれだけか、と尋ねると他の2人の方が反応した。
なぜソイツを選ばれるのです!女だからですか!と叫んでいたやつに向かって、少し乱暴だが、持っていたメスで手を切ってやった。
血がダラダラと出て床に落ちた。
おいおい、床を汚すなよ…と友人が言うが気にしねえ。さっきのとチャラだチャラ。つか痛え。深く切りすぎた。
そいつらは、ひぃ、と息を飲んで微動だにしない。
その横で素早く小さな影が動き、消毒液をかけられ、その場で縫合された。
その素早い判断とその技術に、俺の目は間違いなかったとまた笑ってしまう。
友人も、おお、早くて正確だな~と感心している。
あの2人は何もできず、ただ顔を青ざめていただけだった。まぁ実地研修してないなら、血もあまり見たことないのだろう。仕方ないとはいえ、この差は明らかだった。
女は保護テープと包帯を巻いて、終わりました。と顔を上げた。
初めて見るそいつの顔は、綺麗だがそれだけだ。他にも顔が綺麗なやつなんかいくらでもいる。
それより俺の血が顔と白衣について汚れていたのも気にせず、鋭い痛みはありませんか、と尋ねるその心が気に入った。媚を売るような真似はしない、俺から見ると逆にそれの方がしっくりきた。
経験は浅いが知識も技術もあり、度胸がある。
これからこいつに教えるのは楽しい日々になるだろう。
これが他のやつが言ってた年配者の楽しみ方かー。
ー悪くねえな。
前にお会いしましたね、あの時はありがとうございます。これからよろしくお願い致します、とそいつはまた頭下げた。
そしてその頭に手をポンポンと置いて、よろしくな、と声を掛けた。
96
あなたにおすすめの小説
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
幼馴染、幼馴染、そんなに彼女のことが大切ですか。――いいでしょう、ならば、婚約破棄をしましょう。~病弱な幼馴染の彼女は、実は……~
銀灰
恋愛
テリシアの婚約者セシルは、病弱だという幼馴染にばかりかまけていた。
自身で稼ぐこともせず、幼馴染を庇護するため、テシリアに金を無心する毎日を送るセシル。
そんな関係に限界を感じ、テリシアはセシルに婚約破棄を突き付けた。
テリシアに見捨てられたセシルは、てっきりその幼馴染と添い遂げると思われたが――。
その幼馴染は、道化のようなとんでもない秘密を抱えていた!?
はたして、物語の結末は――?
幼馴染の婚約者を馬鹿にした勘違い女の末路
今川幸乃
恋愛
ローラ・ケレットは幼馴染のクレアとパーティーに参加していた。
すると突然、厄介令嬢として名高いジュリーに絡まれ、ひたすら金持ち自慢をされる。
ローラは黙って堪えていたが、純粋なクレアはついぽろっとジュリーのドレスにケチをつけてしまう。
それを聞いたローラは顔を真っ赤にし、今度はクレアの婚約者を馬鹿にし始める。
そしてジュリー自身は貴公子と名高いアイザックという男と結ばれていると自慢を始めるが、騒ぎを聞きつけたアイザック本人が現れ……
※短い……はず
【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる