婚約破棄のその先は

フジ

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これからのわたしは

初めて見た時から

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知人に会いに学び舎を訪れた際に、すれ違ったのがアンジェだった。

あいつを初めて見た時は、かなり顔色ヤバイな、って笑ったっけか。


あまりにも生気がなく目の下に隈を大きく作って、医学書を読みながら歩いているやつなんてここ最近はあまり見かけないから、珍しいな、と微笑ましく思った。
俺らの時代はこんなやつは溢れていたが戦争が終わり、世の中が平和になってからは、医学を血眼で覚えるやつは少なくなった。医療を覚えても、市政で使うだけなので、ありきたりな感染や毒などを中心に覚える。

廊下の向こうから、ナイフや剣での裂傷時の手当てをぶつぶつ呟きながら歩いてくるやつなんか、面白いにきまってる

ましては女だ。

医学を学ぶやつは男が多い。
医療は基本1人、多くても2人で動くことが多く、その際には医療道具を持ち運ばないといけないので、必然的に力や体力のある男に絞られる。さらに月の物や妊娠出産で収入が不安定になったり、救えなかった時の逆恨みから襲われることもあり、やはり女が医師になるのは敬遠される。

その面白い女は目の前くると、俺の存在には気付いて廊下の端に移動して頭を下げたが、ー気付いていた、が正解か?、下げ続けながら通り過ぎるのを待っていた。



自慢じゃないが、俺は結構有名だと知っている。

だから、その女も俺に気付いたら、何かしら反応があると思っていた。実際ここまで歩いてくるのにも、人に捕まり大変だった。




とにかく、その態度も気に入ってしまった。



珍しい銀髪の髪がボサボサで、また笑ってしまう。
支給される白衣が大きく、医学書も端が擦り切れてボロボロだった。


ーこいつは、きっとな。おもしれぇ



その頭に思わず、手をポンポン、と置いてそいつの前を通りすぎた。







こいつと再会したのはその1年後だった。

いつものように、学び舎を卒業するやつの中で特に優秀なやつを3人紹介するから学ばせてやってくれと言われて入った部屋にいた。


俺が入った瞬間、男2人は顔を合わせて、フィン先生だぞ、すげえ本物だ、と囁いているのが聞こえた。


女は顔色も変えず頭を下げた。

顔色はまた悪く、目の下の隈も相変わらず。髪の毛を後ろに色気もなくくくり、あれからさらにボロボロになっている医学書を持っていた。

そして、白衣が1番薄汚れていた。
ここでは、勉学をするだけで実際に医療行為を行うことはない。これから各地の医師の下につき、学んで行くのだー。


を自分で行ったのか、洗っても洗っても落ちなかったのだろう。


後の2人は、血の跡もほつれた跡もなかった。



その違いについ笑ってしまい、心が決まった。


ここ数年は、助手は面倒くせえからいらないと、1人で動いていた。
最初の2、3年は友人が勧めるがままに適当に助手を雇っていたが、ピーチクパーチク喋るばっかりで、縫合の1つもできない、血を見たら倒れる、そんなやつばっかりで、ウンザリしていた。




ーこいつならいい。




思わずニヤリとすると隣の友人に、どうしたんだ、顔が凶悪だぞ、と失礼なことを言われた。

はっ、勝手に言ってくれ。


おい女、持ち物はそれだけか、と尋ねると他の2人の方が反応した。

なぜソイツを選ばれるのです!女だからですか!と叫んでいたやつに向かって、少し乱暴だが、持っていたメスで手を切ってやった。

血がダラダラと出て床に落ちた。
おいおい、床を汚すなよ…と友人が言うが気にしねえ。さっきのとチャラだチャラ。つか痛え。深く切りすぎた。

そいつらは、ひぃ、と息を飲んで微動だにしない。
その横で素早く小さな影が動き、消毒液をかけられ、その場で縫合された。
その素早い判断とその技術に、俺の目は間違いなかったとまた笑ってしまう。

友人も、おお、早くて正確だな~と感心している。

あの2人は何もできず、ただ顔を青ざめていただけだった。まぁ実地研修してないなら、血もあまり見たことないのだろう。仕方ないとはいえ、この差は明らかだった。

女は保護テープと包帯を巻いて、終わりました。と顔を上げた。
初めて見るそいつの顔は、綺麗だがそれだけだ。他にも顔が綺麗なやつなんかいくらでもいる。
それより俺の血が顔と白衣について汚れていたのも気にせず、鋭い痛みはありませんか、と尋ねるその心が気に入った。媚を売るような真似はしない、俺から見ると逆にそれの方がしっくりきた。

経験は浅いが知識も技術もあり、度胸がある。
これからこいつに教えるのは楽しい日々になるだろう。
これが他のやつが言ってた年配者の楽しみ方かー。

ー悪くねえな。



前にお会いしましたね、あの時はありがとうございます。これからよろしくお願い致します、とそいつはまた頭下げた。


そしてその頭に手をポンポンと置いて、よろしくな、と声を掛けた。









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