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しおりを挟む その技術の噂は、すぐに辺境の村から王都の商人の耳に入った。
「一週間どころか、数ヶ月持つ保存食! しかも格安の材料で作れる!」
これは、遠征や兵糧、そして長距離輸送が必要な行商にとって、まさに革命的な技術だった。
ユウキが村に来てから五日目。
村の広場には、王都から急いで駆けつけた数十人の行商人が集まり始める。
彼らは皆、ユウキの作った保存食の技術を「秘伝の技術」とみなし、高額な金貨を積んで交渉を求めてきた。
「錬金術師殿! わが商会に秘術を売ってくだされば、金貨百枚を即座に! 王都への帰還も手配しましょう!」
「いや、二百枚だ! 領主様への口利きもする!」
村は一瞬にして、金貨の匂いと商人の熱気に包まれた。
ユウキは静かに、集まった商人の前で宣言した。
「私はこの技術を王都の領主には売りません。そして、金銭も望んでいません」
「な、なんだと!?」
「その代わり、あなた方には、この村の『食糧供給ルートの独占権』を提供します」
ユウキの出した条件は、技術提供の代わりに、王都の商会にこのエルナ村を食糧の「集積地」とし、食糧や資源の安定供給を保証させることだった。
この契約により、エルナ村は辺境の貧しい村から、王都への重要な補給拠点へと生まれ変わった。
そして、その成功の噂は、王都のヴェルナー家にも届いた。
「バカな! あのユウキが、あの無能が、たった数日で村を……!」
追放した張本人である領主の息子、ゼインは顔面蒼白になった。
自分が「無能」と見下し、粗末に扱った知識こそが、王都の経済すら動かし始めたのだ。
「もし、あの技術が王都にあれば……私の功績になったのに!」
ゼインは即座に、二人の騎士を連れてエルナ村へ向かった。
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