4 / 4
4
しおりを挟むユウキが村に来て一週間。
ゼインは息を切らせて、ユウキの前に立った。村は、以前とは比べ物にならないほど活気に満ちている。
「ユウキ! よくやったぞ! お前の技術はやはり王都にこそ必要だ!すぐさま私の下に帰還し、この功績は私がまとめて王に報告する!」
傲慢な物言いは変わっていなかった。
ユウキは、静かに笑う。
「ゼイン様。残念ながら、私はもう王都には戻りません」
「な、なぜだ!お前のような無能に、拒否する権利などな……」
「無能?」
ユウキは首を傾げた。
「私は貴方の下で、自分のこの知識が活かせないとわかったのです」
彼は、新しい貯蔵庫の鍵を隣にいたリナに渡した。
「この村は私の知識と、村の皆さんの実直さがあってこそ繁栄できる。貴方の下に戻れば、私はまた『地味で効率の悪い薬草茶』を作らされるでしょう」
そう言って、一歩前に出る。ゼインはたじろぐように下がった。
「ぐっ……」
「私が欲しいのは、穏やかでゆっくりとした生活です。そして、この村は、私の求める条件をすべて満たしました」
ユウキは騎士たちに向かって、高らかに宣言する。
「私を追放した判断こそ、ヴェルナー家にとって最も『非合理的』で『愚かな判断』だったと、主様にお伝えください」
ゼインは、目の前で自分の失策と愚かさを突きつけられ、顔を赤くし、何も言い返せずに立ち尽くすことしかできなかった。
これこそが、ユウキが求めた結果だった。武力ではなく、経済力と合理性による、完璧な知的の完勝だった。
ユウキは振り返り、リナと共に、彼らを待っている村の仕事小屋へ向かって歩き出した。
彼の顔には、王都にいたときにはなかった、穏やかで充実した笑みが浮かんでいた。
────完
63
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
転生したら最強賢者だけど、村人と思われたので好きに生きます ~気づけば聖女も勇者も跪いていた~
eringi
ファンタジー
戦場で散った青年リオは、異世界の辺境で「ただの村人」として転生した。だが、彼のスキル「思考加速」は世界最上位のチート。薬草を摘むだけで奇跡を生み、魔物を追い払えば伝説級。世界の英雄たちが“隠者の賢者”を追い求める中、本人は今日も平和な日常を満喫する――。
無自覚最強×ハーレム×ざまぁ要素満載の、痛快異世界スローライフ開幕!
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~
とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。
先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。
龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。
魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。
バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……
追放された万能聖魔導師、辺境で無自覚に神を超える ~俺を無能と言った奴ら、まだ息してる?~
たまごころ
ファンタジー
王国一の聖魔導師アレンは、嫉妬した王子の策略で「無能」と断じられ、国を追放された。
辿り着いた辺境の村で、アレンは「ただの治癒師」として静かに暮らそうとするが――。
壊れた街を再生し、疫病を一晩で根絶し、魔王の眷属まで癒しながら、本人はただの村医者のつもり。
その結果、「あの無能が神を超えた」と噂が広がり、王と勇者は頭を抱えることに。
ざまぁとスカッとが止まらない、無自覚最強転生ファンタジー開幕!
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
神様の失敗作ガチャを引かされた俺(元SE)、ハズレ女神たちと寂れた異世界を「再創生(リ・ジェネシス)」する
月下花音
ファンタジー
過労死した社畜SE・天野創が転生したのは、創造神に見捨てられた「廃棄世界」。
そこで待っていたのは、ポンコツすぎて「失敗作」の烙印を押された三人の女神たちだった。
「麦が生えない? ……ああ、これ土壌パラメータの設定ミスですね」
「家が建たない? ……設計図(仕様書)がないからですよ」
創は持ち前の論理的思考と管理者権限を駆使し、彼女たちの「バグ(欠点)」を「仕様(個性)」へと書き換えていく。
これは、捨てられた世界と女神たちを、最強の楽園へと「再創生」する物語。
追放されたけど実は世界最強でした ~元下僕の俺、気ままに旅していたら神々に愛されてた件~
fuwamofu
ファンタジー
「お前なんか要らない」と勇者パーティから追放された青年リオ。
しかし彼は知らなかった。自分が古代最強の血筋であり、封印級スキル「創世の権能」を無意識に使いこなしていたことを。
気ままな旅の途中で救ったのは、王女、竜族、聖女、そして神。彼女たちは次々とリオに惹かれていく。
裏切った勇者たちは没落し、リオの存在はやがて全大陸を巻き込む伝説となる――。
無自覚にチートでハーレムな最強冒険譚、ここに開幕!
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる