復縁マニュアル

シルビア

文字の大きさ
2 / 9
2人の世界

出会い

しおりを挟む
 翌日、健はビールを呑みながら、2人が出会った頃を思い出していた。

 当時健は19歳、希は20歳だった。2人は、関西の大学生で、大学は違うものの、同じレストランでアルバイトをしていた。

 健は厨房で働いていて、希はフロアで働いていた。
 出会った時は、特別な感情を抱いていなかった。
 働いているうちに、そこそこ話すようになって、バイトの飲み会でそこそこ仲良くなって、なんとなく連絡先を交換してみて。
 でも、それだけ。好みじゃなかったし興味も無かった。

 ある日、バイト先の控え室に入ると、希が落ち込んだ表情で座っていた。少し目が赤かった。

 「ど、どうかしたんですか?」

 思わず、健は尋ねた。

 「いや、彼氏が束縛激しくて疲れちゃって…別れててん。でもやっぱり好きで…戻りたいって言ったら、考えさせてって…。それで待ってたんやけど、見ちゃってんなー、この前ショッピングモールで女の子と手を繋いで歩いていた所…はあ…別れるなんて言わへんかったらよかった…」

 希はため息をつきながら、そう話した。

 「それは、辛いっすね…無理しないでくださいね」

 健は、まあ別れるって言った方なんやしと思いながらも、あまりにも希が落ち込んでいたので、少し心配になった。

 その晩、なんとなく希のことが気にかかり、メールを送ってみた。

 (お疲れ様です。大丈夫ですか?心配してる仲間もいるって忘れないでくださいね。たかがバイト仲間がすいません。)

 翌日希からメールが届いていた。

 (心配してくれてありがとう。前に進まなきゃね。たかがバイト仲間がなんてそんなことないよ。嬉しかった。ホンマにありがとうね。)

 元気になるといいな、健はそう思った。

 日は流れ、バイト先では希とシフトが一緒のことが多くて、よく話すようになった。ファッションのこと、テレビのこと、最近はまっていること。

 「最近海外ドラマにはまってるんですよね。」

 「へえーなんてやつ?」

 「エージェントってやつで、アメリカの諜報機関の話でテロリストと戦うやつなんですよ。知ってます?」

 「あー聞いたことある!人気だよね。見たことないやあー」

 なんて話をした晩、希からメールが届いた。

 (お疲れ!バイト中話してくれたエージェント借りてみた!いまからみる!)

 へえ興味持ったんだ。健はそう思い返信した。

 (気に入ってもらえると嬉しいです!また感想聞かせてくださいよ!)

 その日から、なんとなくメールが続いて毎日メールをするようになった。

 それから1ヶ月後のある日のこと、健は、ふと希の失恋の話を思い出して、メールで聞いてみた。

 (あれから元彼さんとどうなりました?純粋に心配してるだけなんで、あれだったら…スルーしてもらって大丈夫です)

 希からすぐ返信が来た。

 (まだ思い出して辛くなるよ…でも健君とメールさせてもらったり、バイト中も話しかけてくれるよね。いつも笑わせてくれて元気もらってる。ありがとう。でも、やっぱり落ち込んじゃって辛いわ…)

 その返信を見て、なんだか希を守ってあげたくなった。俺が助けてあげたい。愛しいと思う気持ちが、急に湧いてきて、それを勢いにして返信した。

 (俺も逆に癒されてますよ。実は俺も結構前に彼女と別れてて、ちょっと傷付いていたんですよ。だから少しは気持ちわかるし、少しでも力になれるんなら守ってあげたいと思ってますよ。)

 (ホンマにぃ?そんなこと言われたら好きになっちゃうかもよー笑)

 その返信を見てドキドキした。健は、すぐに返信した。

 (もし、そうなってくれたら嬉しいっすね。俺もう好きになりかかってるかも笑)

 希から着信があった。

 「ホ…ホンマなん…?」

 「はい。希さんの事俺が守ってあげたいです。」

 希が恐る恐る尋ねた。

 「付き合うってこと…?」

 健はハッキリと答えた。

 「付き合ってください。2人で希さんの辛いことを乗り越えていきたいです。俺全力で大事にするんで。」

 希は、電話口で泣いていた。

 「ありがとう…嬉しい。」

 こうして俺たちは、付き合うことになった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

うわさの行方

下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。 すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。 戦場から帰るまでは。 三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。 ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。

別れ話

はるきりょう
恋愛
別れ話をする男女の話

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

恋愛の醍醐味

凛子
恋愛
最近の恋人の言動に嫌気がさしていた萌々香は、誕生日を忘れられたことで、ついに別れを決断。 あることがきっかけで、完璧な理想の恋人に出会うことが出来た萌々香は、幸せな日々が永遠に続くと思っていたのだが……

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

処理中です...