復縁マニュアル

シルビア

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2人の世界

やきもち

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 「健大好き。」
 「結婚したい。」
 「健カッコいいよ。」
 希は、事あるごとに健にそう言って、幸せそうに微笑んでいた。

 テーマパークに行った時。アトラクションの順番待ちで、希が健の耳元でこそっと囁いた。
 「好きだよ…」
 「俺も好きだよ」
 健は、希の耳元でこそっと囁き返した。

 バイト中も、他の人にいつバレるかな。なんて思ってワクワクした。
 希の熱い視線を感じながら、仕事に集中しているふりをして、気付かない程を装った。照れ臭かったから。でも、たまに視線を返しながら…。

 公園で希とキスをした。目を潤ませた希が愛しかった。
 「健大好き…」

 クリスマスは、港町でデートして、お洒落なイタリアンレストランに行った。お洒落な名前のパスタに、お洒落な名前のメインディッシュ。
 パスタには、カットされたミニトマトが乗っていて、意外にも美味しかったっけ。
 その後は、お洒落なホテルで一泊した。
 「健愛してる…」
 また希は目を潤ませている。
 愛おしくて愛おしくて。俺のものだ。夢中で希と一夜を過ごした。

 ある日、車でドライブに行った。
 帰りに家の近くまで希を送った時。
 「昨日の夜、男友達とご飯に行ったんだ。」
 希が突然そう言った。
 「へえ、どうやったん?」
 珍しいなと思いながら、深く考えずに健は淡々と言った。
 「怒らへんの?」
 希は少し驚いていた。
 「だって、希の生活を縛りたくないし、楽しそうと思ったから行ったんやろ?俺が怒る理由なんてないやろ」
 希は俺に惚れていて、俺のことが大好きだという自信があった。だから特に嫉妬心とかも湧かなかった。
 「そう…実はご飯じゃなくてドライブやってん…突然胸触られて…でも嫌って言って…それで…」
 健は、希が何を言い始めたのか、一瞬理解が追いつかなかった。
 「ちょっと待って…何がどうなってんの…?」
 「それで帰ろうってなってん…相手も彼女いる人やし…軽く遊びに行こうってだけやって…お互いに罪悪感で反省して…もうしないから、ごめん…」 
 希は不安そうだった。
 健は、嘘をつかれたことが許せなかった。いや、そこまで許せなかった訳でもない。希は俺のことが好きなんだ。絶対的な自信があった。だから冷静だった。
 「嘘つくなんて、ちょっとこの先考えへんとあかんな…しかも胸触られたんやろ…ありえへんやろ夜にそんなん出掛けるなんて。」
 「待って、違うねん…これは…」
 希は、顔を歪ませ、泣きそうになっていた。
 「何が違うん?てかなんでこんなこと言うねん。おれの気持ちは?」
 「や…ち…、やきもち妬かせたかってん…健は、やきもちとか妬いてくれへんやろ…不安になって…それで…」
 健は驚いたが、すぐ冷静になった。ほらやっぱりこいつは俺のことが凄い好きやねんと思って、内心嬉しかった。
 「人を試すのはどうかと思うわ。俺はやきもちがよく分からへんし、ちゃんと信じられてるからやと思う。俺のこと信じられてへんのちゃうん?ちょっと考えさせて。今日は帰るわ。」
 「待って!健!待って!説明させて!ごめん!ほんまにごめん!」
 俺は、泣いている希を置いて、車を走らせた。

 翌日起きると、希からメールが1通入っていた。
 (もう一度ちゃんと会って話したい。私が全部悪いのもわかってる。健と別れたら、もう生きていけない。ごめんなさい。もう一度チャンスをください。)
 受信は、明け方の5時。
 思い悩んだんだろうなと思ったが、返信する気になれなかった。
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