復縁マニュアル

シルビア

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2人の世界

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 健は、絶望した。
 しかし、救急隊員は、続けて言った。

「一般的に、市販の睡眠薬を一箱飲むくらいでは、死に至る可能性は低いと思います。なので、どうか落ち着いてください。我々も動きようがありません。山下希さんのお母様がいらっしゃる様ですので、連絡を取ってみてはいかがでしょうか?」

「わかりました。ありがとうございました」

 健は、電話を切る。
 ドッと疲れが出た。死に至る可能性は低いと言っていたな。とりあえず希の家に行かなければ。

 電車は、希の家の最寄りであるY駅に着いた。
 その時、再び健の携帯が鳴った。

「何度もすみません。先程のY消防署の者ですが……山下希さんのお母様から改めて当署に救急通報がありまして、希さんのご自宅へ向かいます」

 とりあえず良かった……
 健は、安堵した。

 かおりさんが、駅前まで車で迎えに来てくれていた。

「健くん、大丈夫?」

 かおりさんに、これまでの救急隊員とのやり取りを説明し、とりあえず希の家に行ってもらうことにした。

 希の家に着くと、丁度救急車が止まっており、希が担架に乗せられ、搬送されるところだった。
 健は、かおりさんの車を飛び出し、救急隊員のところへ搬送先を聞きに行った。
 Y市民病院に行くとのことで、健たちも向かうことにした。
 救急隊員の人からは、危ないので救急車の後をつけない様に、安全運転で来てください。と念押しされた。

 結果的に、希は無事だった。
 健は、希のお母さんからお礼を言われ、かおりさんにお礼を言って、意識の戻った希の所に行った。

 希は、健を見て少し微笑んだが、真顔になって言った。

「ごめん」

「こっちこそごめん」

「健は、命の恩人だね」

「もうしないでね」

 2人は笑った。希は、普段の10パーセントくらいの力無い笑顔だったが、笑っていた。

 命の恩人と言われたことには……都合がいいからそういうことにしておこう。

 希は、数日で退院した。大学の先輩には、別れた方が良いんじゃないかと言われた。しかし、自分も不安にさせてしまったし、きっと過去の失恋の恐怖を思い出したんじゃないか。そう思って別れる気にはなれなかった。

 その後は、喧嘩もしたけど、主立った事件もなく、順調だったと思う。
 2人で沢山の大きな、2人だけの世界を作り上げていった。

 そして、希は大学を卒業した後、地元企業に就職した。
 健は、1つ歳下なので、1年遅れて大学を卒業した。

 そして、東京の企業に就職した。

 2人は、遠距離恋愛になった。

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