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スウィートソウル
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目を覚まし、スマートフォンの画面を点ける。時間は24時を少し回ったところだった。僕たちはいつの間にか眠ってしまっていたようだ。染みついた癖のように、スマートフォンを弄ってSNSやニュースを見る。帰り際に降っていた雨は止んだようだ。そうこうしていたら、彼女も目を覚ました。
「何してんの?」
「いや、目が覚めちゃってさ。で、ニュースとか天気予報とか見てた。」
「嘘つき。私の寝顔撮ってたんでしょ。」
「違うから。」
「あ。そういえば、私の服がはだけて、、」
「違うから!!」
笑った。二人して。起き抜けの部屋に灯りを灯すように。
「スマホ弄ってたら、目が覚めてきちった。」
「知らないの? 寝る前のブルーライトは良くないんだよ。」
「知ってるけどさ、なんか癖でさ。」
「癖でアダルトサイトを?」
「違うから!!」
「それよりさ、お腹空かない?」
「空いたかも。」
「コンビニ行かない?」
「うん。いいよ。てか、千夏夕飯食べたの?」
「あー。食べてない。帰りに徹と会ってそのまま帰ってきたから、お酒とおつまみしか摂取してないや。」
「摂取て。」
「通りでお腹空くわけだ!」
夏の夜の熱気と、雨上がりの湿気でじめっとした道を僕らは歩いた。どちらからともなく手を繋いで。
「今度はハイボールにするんだぁ。」
「ご飯買うんじゃないの?」
「ご飯も買うけど、お酒も買うの!」
「まだ飲むのな。記憶飛ばしたいの?」
「へへへ。どうでしょう? でも、記憶飛ばしたらまた徹に襲われちゃうからなぁ~。」
「またって。襲ってないから。夢でも見てたんじゃないの?」
「いんや。夢はアイスをいっぱい食べる夢だったよ? あ。アイスも欲しいなぁ。」
「アイスは右に同じ。」
彼女の家からコンビニまでは徒歩5分と掛からないのに、もう少しこのまま歩いていたくて、僕たちは少し遠回りをした。話しながら。そして、会話の切れ目で気になっていたことを聞いてみた。
「なぁ。俺たちキスしたよな?」
「うん。したよ。」
「夢じゃないよな?」
「うん。夢じゃないよ。」
「なぁ、あのキスにはどんな意、、、」
言いかけたところで、彼女は僕の口を人差し指で塞いだ。
「それを言ったら台無しだよ。」
「え。何が台無しなの?」
「ムードとかその他諸々。」
彼女が隣でケラケラと笑う。
「その他諸々って何よ。」
僕も釣られるように笑った。
コンビニに着くと、彼女は真っ先に飲料のコーナーへ向かった。そして、ハイボールを2つ持ち得意げに。
「ハイボーール!」
直ぐ側に居たカップルが、冷たい視線を送っている。
「はいはい。分かったって。で、食べ物は?」
「あ。そうだった。そうだった。」
「そっちが本命やろ。」
時間が時間だったので、お惣菜コーナーの品数は数えるほどしかなかった。その中から、僕たちは焼きそばとお好み焼きを買った。
コンビニを出た僕たちは、また話しながら歩き出した。
「徹はさ、今付き合ってる人とか居ないの?」
「今というより、ずっと居ないよ。」
「なんで? 作らないの?」
「作らないんじゃなくて、作れないんだよ。いや、出来ないと言うべきか。」
「そっか。」
「そうだよ。」
深夜の風が流れていく。口から溢れそうになったくだらない話題は、夜風によって押し戻された。彼女の言っていたムードというのはこういうことなのかもしれない。お互い無言のまま、足音だけが夜に響く。
じんわりと訪れた沈黙を破ったのは彼女だった。
「ねぇ。徹。なんであの時助けてくれたの?」
視線を足下に落として彼女が言った。
「助けたって?」
「初めて会った時。見過ごすことだって出来たでしょ。」
「あぁ。あの時か。俺さ、困ってる人を放って置けないタイプの人間なんだよ。だから、あの時も苦しんでる千夏を放って置けなかった。」
「徹はホントいい人なんだね。」
「友達や同僚からは、”お前はいいヤツなんだ。だからモテないんだ”って言われるけどね。”優男はモテない。”って。」
「私、徹のそういうところ良いと思うよ。」
落としていた視線をこちらに向け、じっと僕の目を見て言った。
「徹のその優しいところ、凄く良いと思う。」
素直に嬉しかった。そして、初めて見た真剣な眼差しの彼女がとても新鮮だった。心が騒つく。
一瞬の沈黙を挟み、彼女の顔は元の笑顔に戻っていった。
「徹のその優しいところ、凄く良いと思うよ~」
今度は歌うように、茶化すように。
「そういうところって、俺たちまだ出逢って2日目だけどな。」
「24時過ぎたから、もう3日目だもん。」
そう言うと彼女は、子犬のように僕の胸に飛びついてきた。倒れてしまわぬよう、彼女をしっかりと支えようとした瞬間、彼女の唇が僕の頬に触れた。不意打ちだった。
「へへん。」
また悪戯に笑う。
部屋に戻った僕たちは、買ってきたやきそばとお好み焼きをそれぞれ食べた。
「一口ちょうだい!」
「いいよ。なら、そっちも一口ちょうだい。」
「えー。どうしよっかなぁ~。」
なんて言いながら。食後のデザートは、買ってきたアイスクリームを食べた。バニラ味のスーパーカップ。
「これね。ハイボールに合うんだよ!」
なんて彼女が言うもんだから、二人して同じのを買った。テレビも点けず、横並びでアイスを食べ、ハイボールを飲む。
暫くすると再び酔いが回ってきて、今度はお互いに引き寄せられるようにキスをした。3日目の口付けは、ハイボールとアイスクリームの混ざった不思議な味がした。そのことを互いに笑い合ったりして。このまま一緒にいたら、この悪戯な笑顔をいつまでも見れるんだろうか。そんなことを考え、それと同時にそんなことを思っている自分に驚きを隠しきれなかった。スウィートなソウルが二つ。確かにそこで揺れていた。
To be continued.
Next story→『高気圧ガール』
「何してんの?」
「いや、目が覚めちゃってさ。で、ニュースとか天気予報とか見てた。」
「嘘つき。私の寝顔撮ってたんでしょ。」
「違うから。」
「あ。そういえば、私の服がはだけて、、」
「違うから!!」
笑った。二人して。起き抜けの部屋に灯りを灯すように。
「スマホ弄ってたら、目が覚めてきちった。」
「知らないの? 寝る前のブルーライトは良くないんだよ。」
「知ってるけどさ、なんか癖でさ。」
「癖でアダルトサイトを?」
「違うから!!」
「それよりさ、お腹空かない?」
「空いたかも。」
「コンビニ行かない?」
「うん。いいよ。てか、千夏夕飯食べたの?」
「あー。食べてない。帰りに徹と会ってそのまま帰ってきたから、お酒とおつまみしか摂取してないや。」
「摂取て。」
「通りでお腹空くわけだ!」
夏の夜の熱気と、雨上がりの湿気でじめっとした道を僕らは歩いた。どちらからともなく手を繋いで。
「今度はハイボールにするんだぁ。」
「ご飯買うんじゃないの?」
「ご飯も買うけど、お酒も買うの!」
「まだ飲むのな。記憶飛ばしたいの?」
「へへへ。どうでしょう? でも、記憶飛ばしたらまた徹に襲われちゃうからなぁ~。」
「またって。襲ってないから。夢でも見てたんじゃないの?」
「いんや。夢はアイスをいっぱい食べる夢だったよ? あ。アイスも欲しいなぁ。」
「アイスは右に同じ。」
彼女の家からコンビニまでは徒歩5分と掛からないのに、もう少しこのまま歩いていたくて、僕たちは少し遠回りをした。話しながら。そして、会話の切れ目で気になっていたことを聞いてみた。
「なぁ。俺たちキスしたよな?」
「うん。したよ。」
「夢じゃないよな?」
「うん。夢じゃないよ。」
「なぁ、あのキスにはどんな意、、、」
言いかけたところで、彼女は僕の口を人差し指で塞いだ。
「それを言ったら台無しだよ。」
「え。何が台無しなの?」
「ムードとかその他諸々。」
彼女が隣でケラケラと笑う。
「その他諸々って何よ。」
僕も釣られるように笑った。
コンビニに着くと、彼女は真っ先に飲料のコーナーへ向かった。そして、ハイボールを2つ持ち得意げに。
「ハイボーール!」
直ぐ側に居たカップルが、冷たい視線を送っている。
「はいはい。分かったって。で、食べ物は?」
「あ。そうだった。そうだった。」
「そっちが本命やろ。」
時間が時間だったので、お惣菜コーナーの品数は数えるほどしかなかった。その中から、僕たちは焼きそばとお好み焼きを買った。
コンビニを出た僕たちは、また話しながら歩き出した。
「徹はさ、今付き合ってる人とか居ないの?」
「今というより、ずっと居ないよ。」
「なんで? 作らないの?」
「作らないんじゃなくて、作れないんだよ。いや、出来ないと言うべきか。」
「そっか。」
「そうだよ。」
深夜の風が流れていく。口から溢れそうになったくだらない話題は、夜風によって押し戻された。彼女の言っていたムードというのはこういうことなのかもしれない。お互い無言のまま、足音だけが夜に響く。
じんわりと訪れた沈黙を破ったのは彼女だった。
「ねぇ。徹。なんであの時助けてくれたの?」
視線を足下に落として彼女が言った。
「助けたって?」
「初めて会った時。見過ごすことだって出来たでしょ。」
「あぁ。あの時か。俺さ、困ってる人を放って置けないタイプの人間なんだよ。だから、あの時も苦しんでる千夏を放って置けなかった。」
「徹はホントいい人なんだね。」
「友達や同僚からは、”お前はいいヤツなんだ。だからモテないんだ”って言われるけどね。”優男はモテない。”って。」
「私、徹のそういうところ良いと思うよ。」
落としていた視線をこちらに向け、じっと僕の目を見て言った。
「徹のその優しいところ、凄く良いと思う。」
素直に嬉しかった。そして、初めて見た真剣な眼差しの彼女がとても新鮮だった。心が騒つく。
一瞬の沈黙を挟み、彼女の顔は元の笑顔に戻っていった。
「徹のその優しいところ、凄く良いと思うよ~」
今度は歌うように、茶化すように。
「そういうところって、俺たちまだ出逢って2日目だけどな。」
「24時過ぎたから、もう3日目だもん。」
そう言うと彼女は、子犬のように僕の胸に飛びついてきた。倒れてしまわぬよう、彼女をしっかりと支えようとした瞬間、彼女の唇が僕の頬に触れた。不意打ちだった。
「へへん。」
また悪戯に笑う。
部屋に戻った僕たちは、買ってきたやきそばとお好み焼きをそれぞれ食べた。
「一口ちょうだい!」
「いいよ。なら、そっちも一口ちょうだい。」
「えー。どうしよっかなぁ~。」
なんて言いながら。食後のデザートは、買ってきたアイスクリームを食べた。バニラ味のスーパーカップ。
「これね。ハイボールに合うんだよ!」
なんて彼女が言うもんだから、二人して同じのを買った。テレビも点けず、横並びでアイスを食べ、ハイボールを飲む。
暫くすると再び酔いが回ってきて、今度はお互いに引き寄せられるようにキスをした。3日目の口付けは、ハイボールとアイスクリームの混ざった不思議な味がした。そのことを互いに笑い合ったりして。このまま一緒にいたら、この悪戯な笑顔をいつまでも見れるんだろうか。そんなことを考え、それと同時にそんなことを思っている自分に驚きを隠しきれなかった。スウィートなソウルが二つ。確かにそこで揺れていた。
To be continued.
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